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【会議の円滑進行&アイデア最大化へ】
ファシリテーションを重視したアメリカ生まれの協働的リーダーシップ術

会議を円滑に進めるためのファシリテーションスキルがどのようにリーダーシップに活かされ、チームの創造性や協力を促進するのかを解説します。特に、多様性を活かしたリーダーシップスタイルが現代の職場に与える影響についても詳しく紹介します。
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1.ファシリテーションの歴史と目的
「ファシリテーション」と聞くと、会議を円滑に進める行為といったイメージを、読者も持たれるのではないでしょうか?
その名がカタカナであることから察せられる通り、ファシリテーションは米国で生まれた手法です。1960年代に、「学習ファシリテーター」の役割から発展したそうで、学習者の意識を高め、学習を促進することに焦点を当てていました。
その後、タスク志向のグループファシリテーションが登場し、品質管理サークルや、クロスファンクショナルなタスクフォース、市民グループなどが、専ら、この手法の初期の利用者でした。
その後、利害対立が生じる前にそれを解決する積極的なアプローチとしての、グループファシリテーションも生まれてきました。
さらに、学習グループの参加者が学習ファシリテーションを通じ自らの意識を高めた後、行動を起こし、問題を解決し、計画を立て、グループで意思決定を行う必要性を見出したことから、
タスク志向のファシリテーターの役割が、会社などの組織の変革と共に進化し、そこから、今日の、いわゆる会議のファシリテーションのスキルが一般化されて世界に広まっているようです。
2.会議のファシリテーションと「協働的リーダーシップ」
ー「社員の多様な能力、潜在力を引き出し、組織の成長に繋げるマネジメント」―
これこそが正に、ダイバーシティマネジメントですね。
筆者が今回のコラムで主張したいのは、
このダイバーシティマネジメントにおいて、冒頭の①会議のファシリテーションのスキルがとても大切であり、②会議の参加者が、夫々の地位や背景に拠らず安心安全に意見を述べ
、アイデアを出せる会議の環境づくりのノウハウが、多様なメンバーを有する組織では特に求められるという2点です。
ファシリテーションやコーチングの本場アメリカでは今、こうした会議の環境づくりのノウハウと、会議のファシリテーションのスキルを持つリーダーを「協働的リーダー」として育成する研修が見られています。その背景には、後述する「職場と働き方の多様性の増大」があります。
筆者も、昨年、オンラインで昨年この研修を受けるとともに、アメリカでのファシリテーションの実地演習にも参加してきました。受講生の中に、多くの女性の管理職やリーダーが含まれていたのが印象的でした。
創造的なアイデアを出し合う会議では、ブレインストーミング(略称:ブレスト)が有名ですが、筆者が参加した演習ではブレーンライティングと称し、参加者一人ひとりの課題を紙に書いて幾つかのテーブルに散在させ、他の参加者がポストイットをいっぱい持って、
それらのテーブルを回遊しながら、それぞれの課題に自分の思いついた解決策を最低1枚以上書いて貼り付けて回るというアクティビティを行っていました。
全員匿名ですので、課題を書く方も解決策を書く方も気兼ねなく、また、好きに回遊できるので、楽しさも感じながらのアクティビティでした。
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3.アメリカの職場の変化と経済成長の背景
私は、1988年から1993年までと、2008年から2012年までの2回、米国駐在経験があります。
1回目のときは日本の経済成長がピークを極め、ニューヨークのロックフェラーセンターやサンフランシスコのペブルビーチゴルフ場を買収し、そのまま行けばアメリカのGDPを上回るのではと言われる勢いの頃でした。これに対し、米国経済は不況で、アメリカの政治家によるジャパンバッシングが激しかったです。
一方、2回目の駐在時は、アメリカの経済やビジネスの話題で日本が注目を浴びることはなく、アメリカの関心は日本を飛び越えて、経済成長が著しい中国に向けられていました。
世界経済のネタ帳(IMFのデータ)によれば、1988年の一人当たりGDPは米国が21,376ドルに対し、日本は25,506ドルと日本が上回っていたものが、昨年2024年のデータでは米国が86,601.28ドルに対し日本は32,359.11ドルでした。
世界の企業価値トップ10で見ても1989年にはトップ5全てと7位、9位が日本企業で、米企業は6位(IBM)と8位(エクソン)のみであったものが、2024年では3位のサウジアラムコ以外は全て米企業で※ 、日本は、トヨタの39位が最上位という状況です。
この日本の相対的凋落の理由として、我々は、90年代のバブル崩壊に伴う失われた〇〇年を語る場合が多々あるかと思います。
一方、米国に駐在していた立場で気付いたのは、アメリカが、1991年のソ連崩壊に伴う冷戦構造終結後の世界を見据えていたことです。
冷戦時の東西の壁がなくなって加速する、いわゆるオープン化において、ヒト・モノ・カネ情報技術のクロスボーダーの流れを如何にアメリカに取り込み、アメリカンスタンダードをグローバルに広めるか、というアメリカによるグローバリゼーションの意図でした。
同時にアメリカで起こったのが軍事技術の民生転換で、インターネットやGPSの民生利用が始まったのも90年代初めで、これらがアメリカの“オープン化”の対応と、“グローバリゼーション”を技術的に下支えしていったのでしょう。
この“オープン化”の動きは、私が2回目の駐在でたびたび体験した「アメリカ人の会議、特に司会、ファシリテーションのうまさ」でも感じました。セミナー形式の会議であれば、壇上のパネリストだけでなく、会場の一般聴衆の多くの意見を聴き出し、
そのポイントを幾つかの分類に集約してパネリストの主張点に“挑戦”してみせ、更に深い議論に導いたり、単なる情報共有の会議でも、別の視点を提供して思考の視野を広げさせたり、ときに挑発的な質問で参加者の通常の考えを揺さぶり、気付きをもたらしたりというファシリテーションの
“技(スキル)”を目の当たりにしました。
2回目の米国駐在を終えて、アメリカのこの会議や人の扱い(マネジメント)のうまさが、もしかすると、日米の差の要因の一つにあるのではと感じた次第です。
4.多様性の価値を活かすリーダーシップ
これまで、リーダーシップといえば、組織目標に向けて部下を率いていく強いリーダーのイメージが典型であり、アメリカでも、男性中心のトップダウンの権威主義的リーダーが求められていたと思います。今でも、危機や緊急時におけるそうした強いリーダーシップは、当然に必要となっています。
これに対し、平時の今のアメリカの職場で浸透しつつあるリーダーシップスタイルとして前述の「ファシリテーション重視の協働的リーダーシップ」というものがあります。このリーダーシップスタイルの特徴は、会議のデザインとファシリテーションのスキルを重視し、
それにより部下一人ひとりの能力・潜在力を引き出し、統合し、組織力に生かすことにあります。そしてその結果、部下の帰属意識を高めるスタイルで、民主的ボトムアップスタイルともいえますね。
このリーダーシップスタイルの変化の背景には、アメリカの職場の多様性の増大と多様な働き方の登場があります。特にコロナ禍を通じて登場してきたテレワークやリモートワーク、時差出勤、副業・兼業といった働き方の多様性の増大です。
日本でもファブリーズやアリエール、パンパース等でおなじみのアメリカの生活用品メーカーP&G社の元CEOのA.G.ラフリー氏が、多様性の価値について、以下のメッセージを内外に出していたのが、2回目の米国駐在時の筆者の注意を惹きました。
「あらゆるデータや個人的体験に鑑みても、多様性を重んじる組織の思考、イノベーション、パフォーマンスは、均質化した組織のそれを上回る。多様性を最大限に活用するからこそ、勝利をおさめることができるのだ」
日本の均質性は、高度成長期には強みでしたが、今やアメリカでは、弱みとして位置付けられているのかもしれません。いずれにせよ、上述の「ファシリテーション重視の協働的リーダーシップ」は、 この多様性を活かし、メンバーの帰属意識・定着率を高めることに役立つものと感じています。特に、今のアメリカの労働市場は売り手市場となっており、離職率が非常に高くなっているためです。
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5.ファシリテーション重視の協働的リーダーシップ研修について
筆者は、アメリカで会議運営のうまさがどのように教育されているのか興味を持って調べたところ、『Magical Meetings』というアメリカの本に出会いました。 「組織にスーパースターが一人いても、その一人を含んだチームの集団知のほうが個人の知恵を必ず上回る」 という信念で、集団知実現のための会議の設計とファシリテーションの重要性を説く本でした。
その著者で、テキサス州オースティンにあるVoltage Control社の社長のダグラス・ファーガソン氏と知己を得、彼らが定期的に行う「ファシリテーション・サーティフィケーションコース」という研修を受講することになりました。
このコースのポイントの一つは、集団知を発揮する会議の目的に応じて最適な結果を出すためのハードウェア(場所、会議室のレイアウト、参加者、人口密度、BGM、イーゼルパッドなどの見える化の備品など)と、ソフトウェア
(議題、アクティビティ、意思決定方法、参加者の納得度、オーナーシップの確認など)の知識とスキルがあります。そして、自ら設計した会議を最も効果的に運用するためのファシリテーションのスキル習得が、ゴール
となります。
受講して特に重要だと感じたのが、
若手や女性などの参加者が、安心安全に意見やアイデアを出し合える場づくりとしてのアクティビティでした。
スポーツと同様、ゲームのルールがはっきりしていれば、参加者は平等にプレイ、即ち意見を述べたり、アイデアを出したりできます。
日本の場合、そのルールがはっきりせず、参加者が自分の社内での立場を自己検閲し、上司や声の大きい方の発言に任せる傾向にないでしょうか。
また、アイデア出しの創発的会議の場合、ダイアモンドモデルという会議のダイナミクスモデルを学びました。これはブレストで自由なアイデアを出させる議論の「拡散フェーズ」から出されたアイデアを選択するのではなく、 分類したうえで統合を目指すかなり忍耐を要する力仕事の「もだえのフェーズ」、 そして、意思決定に向けて議論をまとめる「収束フェーズ」から構成されます。多様性があるほど、拡散フェーズで様々なアイデアが出て、ダイアモンドのひし形の広がりが増すわけです。
協働的リーダーの役割として重要なことは、アイデア出しから意思決定まで全員参加を促し、その意思決定の方法も選択と集中ではなく、異なるアイデアであっても統合し、モザイクを組み上げるべく粘り強く寄り添うことであり、集合知実現に向けた熱量だそうです。
それにより参加者は、参加のモチベーションと結果に対するオーナーシップ、そして、組織に対する帰属意識を強く持てるようになるのです。
協働的リーダーの重要な役割 | 参加者の反応 |
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読者の皆さまは、「言うは易く行うは難し」とお感じになるでしょうが、「協働的リーダーシップ研修」では、会議の目的や議論のフェーズに応じて、何十ものアクティビティのメニューや事例に触れることが可能です。そのいくつかを以下でご紹介します。
- 上位組織からの新方針等をメンバーに腹落ちさせ、オーナーシップを取らせるアクティビティ。
- プロジェクトの進捗確認会議で各プロジェクトの推進力・成功確率を高め、チーム内の協働文化を育むアクティビティ。
- チームへの新加入メンバーのファミリアライゼーションと2年目や3年目といった若手社員の振り返り、気付き、ノウハウの共有を同時に行うアクティビティ。
- チーム内の多様性の壁の撤廃、オープン、フラット化のため、悩みを共有するアクティビティ。表に出しづらい場合、まずは匿名でやってみる。
- 上下階層含め、大きなグループでの階層を超越したブレストのアクティビティ。
- 部下が持つ問題や課題を客観的に捉えさせ、チームで解決していくファシリテーションのアクティビティ。
- 定例進捗会議などで、問題や課題に対し、その分析ばかりで行動が一切取れていないメンバーに対し、まず行動できるところから行動させるきっかけに気付かせるアクティビティ。
- ブレストの一つのパターン。大人数のグループで比較的短時間でブレスト。スタンディングのまま匿名でカードに大胆なアイデアを書き、交換して1から5までの点数を付けて評価、最高得点のアイデアを選ぶアクティビティ。
- 真剣な議論や頭を結構使う会議のアイスブレイク。大人数可能。
- オンライン会議用のアクティビティ。
6.まとめ
日本人は、ルールや道がはっきりと見えていれば、どこまでも追求できる勤勉さやこだわりを持っています。
ルールのはっきりした安心安全なアクティビティを使ったファシリテーションを通じ、ダイバーシティマネジメントを、日本人も極めていけるのではないでしょうか?
組織の集団知を引き出し、アクティビティを通じて多様なメンバーが一丸となって協力し、オーナーシップと帰属意識を高め目標達成を実現していくリーダーシップが、「ファシリテーション重視の協働的リーダーシップ」なのです。
上述の協働的リーダーシップ研修に興味をお持ちいただいた方におすすめの研修はこちら
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監修者情報
米山 伸郎(よねやま のぶお)
プロフィール | 1981年三井物産入社、米国に約10年駐在、宇宙航空部次長、ワシントンDC事務所長を経て2013年に独立。 日本企業と海外企業の相互進出を人材面から支援する日賑グローバル株式会社を設立。代表取締役就任。 以来、自社で中国人、ロシア人、マレーシア人、インドネシア人、カナダ人等を正社員として採用、育成、活用すると共に、日本企業に優秀な外国人材を正社員で紹介し、定着支援や戦力化研修を提供している。 また、外国人材をメンバーに持つ職場の管理職向けの新たなリーダーシップスタイルに関する管理職像を提案中。外国人を対象に人財育成研修の登壇実績多数あり。著書に『外国人材が中小企業を救う』(晃洋書房)などあり。 |
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