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日本企業が直面する外国人採用の壁
採用選考プロセスの変革が未来を拓く

日本企業が直面する外国人採用の壁 採用選考プロセスの変革が未来を拓く

少子高齢化の加速に伴い、日本国内の人材不足は年々深刻さを増しています。特に地方や中小企業においては、必要な人材の確保が企業存続のボトルネックとなるケースも少なくありません。こうした状況を受け、外国人採用に目を向ける企業も増しています。 しかし、その動きは、製造業や外食・宿泊業、小売業といった、いわゆる「人手不足型」の産業に偏っており、専門職やホワイトカラー業種では、依然として外国人採用が限定的です。その背景には、制度面の課題だけでなく、採用現場に根付く“見えない壁”の存在があると考えられます。
本コラムでは、外国人採用を進めたいと考えている企業に向けて、特に採用・選考プロセスに潜む阻害要因に焦点を当てながら、日本企業が乗り越えるべき課題と、その具体的なアクションについて考察します。

外国人材の採用や選考において、このような不安や課題を抱えていませんか?

  • 脱・日本人前提の採用基準
  • ホワイトカラー採用推進
  • 日本語力以外の評価軸
  • 選考評価基準の可視化
  • ミスマッチ・離職の防止

本コラムで解説する選考プロセスの改善点や評価可視化のポイントを踏まえ、多様な外国人材を早期戦力化するための実務研修ソリューションをご提案します。

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1.外国人採用が特定業種に偏る現状

厚生労働省の発表によると、2024年度の外国人労働者数は230万人を超え、過去最高を更新しました。特にこの2年間は、毎年10%以上の増加を記録しています。 しかし、その多くは、製造業、サービス業、小売・飲食業といった上位3業種に集中しており、これらで外国人雇用全体の9割を占めています。

厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ2024年10月

職種別でみると、ITなどの技術職や研究開発といった専門職における外国人労働者の割合は全体の1割程度にとどまり、採用はあまり進んでいません。 営業や事務職に至っては、全体の約3%と、非常に狭き門になっています。
一方で、日本での就職を希望する外国人留学生や、高度な専門技術を持つ人材は年々増加しており、こうした人材が日本企業に就職するのが難しい現状が指摘されています。では、なぜこのような状況が生じているのでしょうか。
その理由は、大きく以下の3つにあると推測されます。

  1. 制度的制約(在留資格の要件)
  2. 言語(コミュニケーション)や文化的なアンマッチ
  3. 企業内の受け入れ体制の未整備

この中でも、特に見過ごされがちなのが、「採用・選考の段階」に潜むハードルです。 多くの外国人が日本での就職を希望しているものの、応募しづらく、選考で不利になる構造が、多様な分野での外国人採用の拡大を妨げている場合があります。

採用側が企業の求める人材要件に基づいて、選考方法を計画的に組み立てているのであれば問題はありません。 しかし、採用側が日本式の採用選考スタイルを、そのまま外国人採用にも当てはめてしまい、同じスタイルで選考を進めているケースが多く見受けられます。 その結果、より良い人材を見極めることが難しくなってしまうのが現状です。では、外国人の採用・選考における特に重視すべきポイントとは何でしょうか?本コラムでは、この点に焦点を当てて見ていきたいと思います。

2.採用・選考における阻害要因

「日本人前提」の採用フロー

日本国内の多くの企業では、未だに「新卒一括採用」や「年功序列」を前提とした採用プロセスが根強く残っています。 そのため、語学力・学歴・職務経歴・志望動機などにおいても、「日本的」な形式や価値観が重視される傾向があります。例えば、以下のような例があります。

(例1)年齢や卒業時期で一律に区切る

外国人留学生の中には、複数の大学を卒業していたり、30歳前後で就職活動を行っていたりする優秀な人材が多くいます。 しかし、日本企業では、留学生を「新卒」として扱うことが一般的であるため、「年をとり過ぎている」「他の新卒者と釣り合わない」といった理由で選考が見送られるケースがあります。

(例2)中途採用では未経験者を一律に避ける

「中途採用=経験者採用」という認識が根強い業界では、実務経験を重視する傾向があります。そのため、同様の業務経験が一定期間ないと、応募すらできないという状況も見られます。

(例3)「志望動機」に日本語の美文を期待する

日本語能力の確認は重要ですが、軽微な間違いまで全て不合格の理由とし、完璧な日本語表現を求めることは、外国人材にとっては極めて高いハードルとなります。
こうした傾向は、専門的スキルや実務能力よりも、「言語の完成度」を重視する日本独自の文化が影響していると考えられます。

面接における文化的ギャップ

面接の場でも、日本的な価値観が無意識のうちに優先されやすい場面があります。 例えば、服装一つをとっても、外国人候補者(応募者)がスーツを着ていなかったり、スニーカーで来訪したりすることがあり、日本人の面接官が抱く「理想的な印象」とギャップが生じることがあります。 また、面接の内容においても、以下のような日本的な価値観に偏り過ぎていないか、面接者が意識的にバランスを取る必要があるでしょう。

  • 求職者に「空気を読む」「控えめな態度」を無意識に期待している
  • 積極的に自己主張する求職者を「協調性がない」と誤解してしまう
  • 質問の意図が不明瞭なまま、「察して答える」ことが求められる
  • お辞儀の深さなど、日本式の「行儀の良さ」を重視してしまう

こうした評価基準は、日本人同士では暗黙の了解として共有されていても、異なる文化的背景を持つ候補者には伝わりにくく、実力を十分に発揮できない原因となってしまいます。

求人情報が外国人を想定していない

応募者が最初に目にするのは求人情報ですが、ここでも、外国人向けに情報が正確に届いていないケースが多く見られます。 例えば、求人票や企業の採用サイトが全て日本語のみで構成されている場合、外国人求職者にとってアクセスのハードルが高くなってしまいます。 また、在留資格に関する情報や求められる日本語レベルが明記されていないことも多く、応募を断念するケースも少なくありません。

さらに最も重要なポイントとして、外国人求職者は、「わざわざ日本で働く」という大きな決断をしているため、基本給、賞与、手当など給与条件を重視する傾向があります。 ただし、それだけを基準に応募の可否を判断してしまうと、企業・求職者双方にとってミスマッチが生じる可能性があり、結果的にメリットが少なくなってしまいます。

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3.採用現場が今すぐできる工夫と改善ポイント

企業が、自社の人材要件に合った外国人を採用しやすくするためには、採用担当者が選考フローの中で見直せるポイントを意識的に整えていくことが大切です。以下に、すぐに取り組める工夫と改善のヒントを紹介します。

①評価基準の可視化・構造化

面接では、「何を、どの基準で評価するか」を明確にし、属人的な判断を避けることが重要です。そのためには、事前に、面接官同士で評価軸を共有しておくことが不可欠です。

例えば、募集職種に必要なスキルを定義し、それぞれのスキルにおいてどの程度できるのか確認する「スキルレベルチェックシート」を活用するのも有効です。

また、業務への適性を判断する際に注意したいのが、応募者の表現力に偏った評価です。表現が上手な人が必ずしも業務に適しているとは限らないため、多言語対応の適性検査を実施し、数値化された分析データと併せて総合的に判断することが良いでしょう。

日本語力についても注意が必要です。日本語が流暢だからといって、本人が必ずしも高い業務能力を持っているとは限りません。業務に必要な範囲で、日本語力の要件を柔軟に設定することが望ましいでしょう。

「当社の風土に合うかどうか」という観点も大切ですが、そればかりを重視すると、同質性が強まり、多様性への適応が遅れてしまいます。文化的背景の異なる人材を受け入れる柔軟性を持つことが、これからの組織には求められます。

②面接の進め方の見直しポイント

実際の面接の場では、外国人候補者(応募者)が本来の力を発揮できるよう、以下のような工夫が効果的です。

1.アイスブレイクを入れる

外国人候補者は、日本特有の「沈黙」や「曖昧な質問」に戸惑うため、面接の冒頭で緊張をほぐすために、「どんな経緯で日本に来ましたか?」など、軽い話題から始めると良いでしょう。

2.質問はシンプル・具体的に

比喩表現や間接的な聞き方を避け、明確で具体的な質問を心がけましょう。
例:「あなたの強みを発揮した具体的な仕事の場面を教えてください」。
また、「チームでの役割」や「成果の測定方法」など、実績を確認できる質問も有効です。

3.リアクションを明確に伝える

日本的な「うなずき」や「相づち」だけでは、相手に伝わりにくいことがあります。
「Good point」「That’s interesting」など、言葉でのフィードバックを加えることで、安心感を与えることができます。

4.面接時間を十分に確保する

通訳を介した場合や、質問の意図を確認しながら進める必要がある場合は、通常よりも多めに時間を確保しましょう。焦らず丁寧に進めることで、候補者の理解度や適性をより正確に把握できます。

③求人情報の見直し

求人票や会社案内の英語対応にすることはもちろん、以下のような情報も日本語・英語などの多言語で明記しておくと、外国人求職者にとって非常に分かりやすくなります。

  • 在留資格の要件
  • 求める日本語のレベル(例:JLPT N2相当)
  • サポート体制(例:住宅手配、語学研修など)
  • 休暇取得に関すること(外国人は帰国のため長期休暇を取得したいニーズが高い)

これらの情報を明確に記載することで、外国人材が安心して応募できる環境を整えることができ、企業とのミスマッチも防ぐことができます。

4.採用だけでなく「共に働く準備」を

日本企業が今後も競争力を維持し、持続的な成長を遂げていくためには、採用戦略の転換が必要になります。今後増えていくと見込まれる、高度な技術や専門性を持った外国人材は単なる「労働力の補完」ではなく、組織変革や新たなビジネスの創出をともに担う存在となり得ます。そのためには、採用・選考の段階から不要な障壁を取り除き、真の意味での「多様な人材活用」の実現を進めていくことが求められます。

また、外国人材が企業文化に溶け込み、長期的に活躍するためには、職場全体の「多文化共生力」も重要な要素となります。異なる価値観や背景を持つ人々が互いに理解し、尊重し合える環境づくりが、これからの企業の成長を支える鍵となるでしょう。

本コラムで紹介したような課題や改善のヒントをより深く理解し、実践に結びつけるためには、現場担当者の「学び」が重要になってきます。多様性への理解を深める社内研修の導入、管理職やOJT担当者への異文化マネジメント研修などの取り組みが、採用後の定着・活躍へとつながっていきます。
ぜひ貴社でも、この機会に、多文化共生への準備となる第一歩を踏み出してみませんか。

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志野 こと葉(しの ことは)

プロフィール コンサルティング企業や大手教育系企業にて25年にわたり商品開発・マーケティング・広報業務などに携わる。 特にWeb開発やデジタルマーケティング領域の業務を数多く経験。マネジメント職を経験後、産業カウンセラー、ハラスメント相談員等の資格を取得。 その後、公務員に転向し、企業の雇用問題や採用、人材育成、働き方等におけるさまざまな課題解決に携わる。 働く人に向けた幅広いテーマでビジネスコラムの執筆を行っている。

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