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【外国人雇用管理②】こんなときどうする?
外国人の在留資格申請と労務管理
外国人雇用の現状として、労働者数は2023年10月末の段階で204万8000人を超え、過去最高になっています。この数は、2040年には、1000万人を超えると予想され、外国人雇用が身近なものになってきます。
1.外国人雇用の現状
外国人を雇用する事業所は、2024年現在31万8775か所で、この数は過去最高になっています。今後も人手不足が深刻化する中、外国人を雇用する事業者は増えていくのは確実です。 現在、外国人の国籍別では、ベトナムが一番多くなっており、51万8364人で、全体の25.3%になっています。次いで中国(19.4%)、フィリピン(11.1%)が多く、日本で就労しています。現状、技術・人文知識・国際業務等の「専門的・技術的分野の在留資格」が24.2%と多く、次いで「技能実習」が20.2%となっています。 今後、「技能実習制度」は、「育成就労」と制度名を変え、「特定技能」の前段階の就労資格という側面が強くなります。人手不足が深刻化している特定産業への雇用が促進される事は確実で、今後最も大きい伸び率になると予想されます。
2.在留資格の申請手続き
外国人の採用をする場合、基本的には在留資格の確認作業が必要です。現状で、外国人がどのような在留資格を持っているか確認します。 海外に在住している場合は、日本の在留資格を持っていないということになりますので、在留資格認定証明書交付申請という手続きを行います。一方、すでに在留資格を持ち、日本で働いている場合は、その外国人がどの在留資格を持っているかで対応が変わります。 採用予定の外国人が「日本人の配偶者等」や「定住者」のように身分系の在留資格を持っている場合、在留カードの有効期限内であれば、在留資格の手続きなしに働くことができます。学生を卒業時に採用するときなどは、在留資格変更申請を行う必要があります。また、高度専門職の場合、企業を転職する際は「在留資格変更申請」をすることになります。 指定書がパスポートにホチキス止めされており、その指定書に記載されている内容の企業でしか働けないためです。
2-1.企業として準備する書類
外国人を雇用するときに必要となるのは、契約書です。例えば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で外国人に働いてもらう場合、雇用契約の他に、請負契約であったり、業務委託契約のケースもあります。これらの契約内容がわかるような契約書の写しを出入国在留管理局に提出する必要があります。 申請人となる外国人の学歴と職歴を証明できる書類も必要です。会社の登記事項証明書と、事業内容を明らかにする書類、直近年度の決算文書の写しに加えて、前年度の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表の写しを提出します。なお、新規の会社については、決算書類に代えて事業計画書を提出します。また、新規の会社の場合は、給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表に代えて、給与支払い事務所等の開設届書の写しを提出します。
2-2.申請手続きに関して知っておくべき入管法の知識
就労に係る申請手続きで知っておくべき点は、企業としてなぜ外国人を採用することが必要で、どのような仕事を担当させるかということです。日本国が認めている在留資格の範囲に入る仕事内容でなければ、許可はおりません。また、採用に際して、その外国人が学歴や職歴の面で、担当業務を円滑に行うことのできる能力を有しているか確認することも重要です。 それらが、入管法上の審査の対象になるからです。企業側として労働契約書を結ぶ場合においても、日本人と同等かそれ以上の待遇で契約することが明記されていなければなりません。
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3.技術・人文知識・国際業務の在留資格について
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で外国人を働かせる場合、業務内容が在留資格の範囲に入っているかの確認が重要です。例えば、宝石の貿易業務は、「技術・人文知気・国際業務」の範囲ですが、単なる接客であれば範囲外となります。 「技術・人文知識・国際業務」の在留資格であれば、範囲内の仕事であれば複数の仕事を行うことが可能です。多くの事例があるのは、英会話スクールの講師です。複数のスクールと業務委託契約を結び、英会話を教えます。 この場合は、違法ではなく、正当な「技術・人文知識・国際業務」の活動内容となります。
3-1.在留資格該当性
外国人が日本で就労する場合、在留資格の該当性が問題になります。どのような仕事にでも就けるわけではわけではありません。外国人が日本で活動しようとするにあたって、入管法上該当する資格が定められているかどうかを確認し、合致しなければならないとするのが、在留資格該当性という概念です。該当性がないと判断されれば、その仕事を日本で行うことはできません。
3-2.上陸許可基準適合性
在留資格ごとに設定されている日本に上陸するための条件を満たしていることを、上陸許可基準適合性といいます。実際、在留資格該当性がある外国人が、日本の在留資格を得たいと思えば、申請する際に満たしていなければならない基準になります。 就労系の在留資格の場合、学歴、実務経験年数、従事する業務内容、報酬額、受け入れ企業に関する条件などが、基準として設定されています。
4.高度専門職のポイントシステム
高度専門職は、高度外国人材の活動を1.高度学術研究活動、2.高度専門・技術活動、3.高度経営・管理活動の3つに分類し、それぞれの活動の特性に応じて、「学歴」、「年収」、「研究実績」、「職歴」などの項目ごとにポイントを設定し、 合計点が70点以上になった場合、「高度専門職」の在留資格が与えられる制度です。高度人材として認められれば、70点以上が3年続くと3年で、80点以上が1年継続すれば、日本における永久許可申請も可能になります。
5.特定技能の要件
特定技能は、2019年に生まれた新しい制度です。日本人が採用できずに人手不足に悩む業界を特定産業と位置づけ、それぞれの業界ごとに設定した技能試験とJLPTのN4レベルの日本語試験に合格することを要件に、外国人労働者が日本で働くことができます。 特定産業は、時代の流れで増やしていく方針となっており、最近では、「トラックやバスなどの運送業」も特定産業に組み入れられました。
6.身分系の在留資格−「日本人の配偶者等」ほか
身分系の在留資格は、日本人と結婚したり、もともと日本にルーツのある外国人に与えられる在留資格です。「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」があります。身分系の在留資格を持つ外国人の場合、日本人と同様に職業や業種に制限がありません。 注意が必要なのは、国際結婚している場合で、「日本人の配偶者等」の在留資格を持っていても、離婚により身分系の在留資格を失ってしまうことがあります。 婚姻生活が3年以上続き、夫婦の実態があった場合は、「定住者」への変更申請が認められることもあります。原則として、就労系の在留資格に変更申請をすることになりますが、在留資格の該当性がない場合は、日本での就労を続けることはできません。
6-1.永住権申請
日本で永住許可申請を行う外国人は増え続けており、すでに80万人以上が永住者として日本で生活しています。就労系の在留資格の場合、10年間日本で生活をしていて、納税や社会保険料についても納付をしていれば、許可される可能性は高いです。ただし、就労系の場合は、年収要件も平均して日本人と同程度の年収があることや、扶養家族が多くないことなどの要件もあります。年金や各種税金も支払期日前にちゃんと支払っていることがポイントです。 高度人材であれば、70点以上で3年、80点以上で1年の在留で永住許可申請ができますが、許可が出ることが保障されているわけではありません。高度専門職であっても、高速道路で赤切符をもらったり、何かしら警察の記録に残ったりすると、素行不良で永住権を取ることが難しくなります。
7.その他在留資格・帰化
帰化は、日本国籍を取得することです。引き続き5年以上日本に住み、18歳以上で、生計を維持でき、素行が良好で、重国籍防止要件、憲法遵守要件、日本語能力要件を満たしていれば許可されます。 最近は、日本語能力の試験が厳しくなり、JLPTのN3以上で、会話と日本語による作文に対応できる外国人でないと許可を取るのが難しくなりました。税金や社会保険料納付で未払いなどがあると、許可は出ません。
8.外国人の労務管理
外国人の労務管理における重要なポイントは、異文化理解とコミュニケーションです。外資系で英語等でコミュニケーションする企業は例外で、大半の企業が、外国人と日本語でコミュニケーションしています。日本語でもやさしい日本語を活用するなどして円滑なコミュニケーションを推進していくことが重要です。 外国人には、わかる言語で就業規則を渡して、会社のルールについてしつかりと理解してもらうことがポイントです。
8-1.採用について
採用時に、外国人に説明しなけれなならないのは、会社のルールです。これを翻訳するなどして、外国人が理解できるようにして説明をすることが重要です。 後でトラブルになるケースは、採用時に十分な説明がされていないということに起因します。 日本とは違う文化とルールの中で育ってきた外国人にとって、日本企業で働くということは、未知の世界で、自国の常識との違いをよく理解しないままに就労を始めてしまうと、トラブルになります。 例えば、日本では公的な医療保険制度が完備されており、フリーアクセスで医者に診てもらうことができる一方で、社会保険料としてそれなりの額が給与から天引きされるという事実をわかりやすく伝えることが求められます。
8-2.処遇について
外国人を社員として雇用する場合、日本人と同等の処遇をすることが重要です。ただし、親の帯同などは、認められていないので、介護休業を取得するのであれば、母国まで帰ってそれを行うことになります。 社員の副業を認めている場合でも、外国人社員に関しては安易にアルバイトできません。 出入国在留管理局に資格活動の許可を得ないと、違う業種の違う仕事については、許可が出ません。例えば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で働く外国人が、バーテンダーとして夜働くようなことは許可がでません。
8-3.労働時間、時間外労働、休日・休暇等について
外国人の場合も、日本で働けば、日本人同様に労働基準法が適用されます。 就業規則に書いてある労働時間、時間外労働、休日休暇についても日本人と同様に扱うのが基本です。ただし、「育成就労」「特定技能1号」などは、家族の帯同が認められていないので、「子の看護休暇」や親の介護を目的として介護休業を取ることなどは難しいのが実情です。
8-4.社会保険の加入義務について
外国人も日本人と同じく社会保険に加入する義務はあります。本来なら将来日本にいるかどうかわからないのにもかかわらず、40歳を過ぎれば介護保険料まで支払う義務が生じます。 年金については、二重加入の防止と年金加入期間の通算などの観点から23の国と社会保障協定が結ばれています。それらは、ドイツ、英国、韓国、アメリカ、ベルギー、フランス、カナダ、オーストラリア、オランダ、チェコ、スペイン、アイルランド、ブラジル、スイス、ハンガリー、インド、ルクセンブルク、フィリピン、スロバキア、中国、フィンランド、スウェーデンとイタリアです。
8-5.その他の労務管理について
外国人雇用の中でもコミュニケーションを的確に図ることは重要です。日本語を中心に、日本人とともに働くのであれば、外国人に日本語教育を継続して行う必要があります。 「育成就労」と「特定技能1号」の外国人については、入管法改正により、日本語を継続して学習することが必須となり、基準を満たさないと次のステップに進めなくなります。 育成就労の外国人であれば、特定技能に変更するためにN4レベルの日本語力が必要になりますし、特定技能1号の外国人が2号に移行しようと思えば、N3レベルの日本語力が求められることになります。これからは、人事担当者が、外国人の日本語教育に係るマネジメントを行う時代です。
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9.外国人の生活関連手続き
外国人とその家族は、生活者として日本で暮らすことになります。 そのため、家族の在留資格の管理から、子供の学校の件まで、人事担当者がサポートする体制が必要です。 住む場所の手配に加え、ライフラインの契約を行うなど、外国人労働者がスムーズに就労に入れるためのバックアップを行います。ゴミ出しのルールを教えたり、携帯電話の契約に同行するなど、幅広く手伝うこともあります。
まとめ
これから2040年代にかけて、外国人労働者が数多く日本で働く事になります。その数が、1000万人を超えるということから、多くの企業で外国人が働くことを意味します。外国人の多くが、成人してから日本に来るということもあり、母国と日本の文化の差や手続きの違いに戸惑うこともあります。 今後は、働くために必要となる在留資格の申請から、入国後の会社のルール説明に加え、生活面での手続きのバックアップ体制を人事としてとるべき時代になります。
監修者情報
佐藤 正巳(さとう まさみ)
プロフィール | 成城大学経済学部経営学科卒業後、大手精密機械メーカーの販売会社に入社し、営業を経験。その後、2年3か月間アメリカに留学し、経営学と比較文化論等を学ぶ。帰国後、出版社の編集者として2年間勤務し、その後、健康用品販売会社を立ち上げる。経営者として、2006年まで会社のマネジメントを行う。2008年に行政書士としての活動を始め、入管業務を中心として数多くの案件を手がける。その後、2016年に社会保険労務士としても活動をはじめ、就業規則の作成や外国人の雇用管理に関する業務を行う。2019年には、東京都社会保険労務士会に自主研究グループとして外国人雇用管理研究会を立ち上げ、毎月セミナーを開催。 |
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