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【外国人雇用管理①】ゼロから始める外国人雇用実務ガイド

【外国人雇用管理①】ゼロから始める外国人雇用実務ガイド

日本では、経済活動を進める中で、多くの企業が人手不足の問題に直面しています。少子高齢化が進む日本社会では、労働力として外国人社員を採用することが当たり前の時代となりました。しかし、外国人の採用に関しては、一定のルールがあり、とくに入管法の規定を遵守することが重要です。

1.外国人雇用の基本理解

外国人の雇用を行うにあたって、通常7つのルートがあります。1番目は、日本で留学生として大学等に在校する外国人をその卒業時に採用するケースです。2番目は、海外にいる人材と人事部がWEB等で面接し、採用するケースです。3番目は、日本の他の企業で在留資格を持ち働く外国人を採用するケースです。4番目は、すでに「日本人の配偶者等」や「定住者」など身分系の在留資格で在留する外国人を採用するケースです。5番目は、短期滞在等で日本に来ている外国人と面接し、採用を決めるケースです。6番目は、海外の資本関係のある関連会社から日本の企業に人事異動という形で受け入れるケースです。7番目は、家族滞在で日本に在留する外国人を在留資格変更申請の形で受け入れるケースです。企業の人事担当者は、それぞれのケースでどのような手続きが必要になるのか実務上の流れと手続きを理解する必要があります。

1-1.日本の置かれている状況と外国人雇用の背景

日本は、1989年以降、急激な少子高齢化が進み、2016年には、出生数が100万人を切り、2023年には、80万人を切るまで減り続けています。そのため、今後2040年台に向けて、ほとんどの産業で深刻な人手不足が発生する事態が予測されています。日本国政府は、2019年に特定技能の制度をスタートさせ、人手不足に悩む産業を特定産業として指定し、単純労働系の業務を含め外国人材の労働力の開国を行いました。2024年には、入管法改正で育成就労制度が技能実習制度の代わりとして法整備され、特定技能制度につながる労働力の供給制度として位置づけられることになりました。今後は、人手不足に悩む特定産業の指定も増え、益々外国人労働者が多く日本で働くことになると予想されます。

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2.人事担当者がミスしてはいけない10のポイント

外国人の雇用を行う企業の担当者がミスをしてはいけない10のポイントがあります。とくに、入管法関連の知識は、学校で学んできた知識とは違い、正しく理解をしていないと大変なことになります。入管法は、特別刑法の一つであり、罰金刑や懲役まで規定されており、実際毎年のように入管法違反で人事担当者や経営者が逮捕されるという事件も起こっています。

①外国人社員の住所の届出

外国人社員を採用する企業の担当者が知っておくべき知識の一つが、外国人の住所の登録です。とくに、海外から初めて日本に来た外国人については、人事が主導で、外国人の居住地を把握し、転入届を出して住民登録します。在留カードを与えられた外国人は、住民登録をすることで、住民票も発行可能になりますし、マイナンバーも与えらます。

②外国人社員の家族の就労

外国人が家族を帯同して日本に来るケースあります。例えば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で来日した夫が妻と子供を連れて来た場合、「家族滞在」の在留資格が与えられます。この「家族滞在」の在留資格で、資格外活動の許可を得た場合、週28時間のアルバイトができます。中には、こっそりとフルタイムで働いてしまうケースもあります。これは入管法違反になりますし、連帯責任で夫の在留資格更新が難しくなることもあります。

③犯罪歴のある外国人の雇用

いい人材だと思い、採用を決めても、その外国人が禁止薬物の所持で逮捕された履歴があった場合、在留資格の申請をしても不許可になることがあります。日本は、世界でも薬物犯罪に厳しい国なので、この点注意が必要です。在留許可を得ていても、暴力事件を起こしたりして前科が付くと、入管サイドは在留資格の更新を認めないことがあります。

④外国人社員のアルバイト

外国人社員のアルバイトは、制約があります。「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の外国人は、会社の就業規則にアルバイトができる旨記載があれば、在留資格の該当性に反しない内容であれば可能です。例えば、ITエンジニアが、英会話スクールでアルバイトする場合は、「技術・人文知識・国際業務」の範囲内なので問題ありません。しかし、バーテンダーやデリバリーサービスのバイトは禁止です。出入国在留管理局に申請しても、大学の非常勤講師など知的な業務であれば許可が出ることがありますが、単純労働系は認められません。なお、特定技能の在留資格の場合、出入国在留管理局では、アルバイトを認めていません。そのことを踏まえて、就業規則を作成する必要があります。

⑤在留資格の理解不足

在留資格には該当性という概念があります。簡単に言えば、その在留資格で行うことのできる活動の範囲が決められているということです。例えば、「教育」の在留資格を持つ外国人が、町の英会話スクールで教えていたとしたら、それは違反になります。「教育」の在留資格は、学校教育法で定められている小学校、中学校、高等学校等で働くための在留資格であり、営利の目的で営業する英会話スクールで働くためには、資格外活動許可をとるか「技術・人文知識・国際業務」に変更する必要があります。これと同じく、知的な労働の提供を求められる「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の外国人が、ラーメン屋のホール係をすることはできません。

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⑥日本人と離婚した外国人社員の取り扱い

最近は、日本人と外国人の国際結婚も増えました。しかし、残念ながら、日本人と外国人の国際結婚の半数は離婚という結果になるのが現実です。日本人と結婚した外国人は、希望すれば「日本人の配偶者等」の在留資格が与えられます。それは、婚姻が継続していれば有効ですが、離婚した場合、在留資格を「日本人の配偶者等」から就労系の在留資格に変えるか、「定住者」の在留資格に変更申請することが求められます。「定住者」の在留資格への変更が認められるのは、婚姻生活が3年以上あり、日本で就労しているようなケースで、必ず認められるとは限りません。もし、「定住者」が不許可で、その外国人が勤務する職種に該当する就労系の在留資格がない場合、その外国人は、日本で働くことができなくなります。

⑦在留期限の管理

企業の人事担当者が必ず行わなくてはならないのが、就労する外国人の在留カードの期限管理とパスポートの期限管理です。家族を帯同する外国人の場合は、家族の在留カードとパスポート番号の管理も必要です。入管法上、有効なパスポートを持っていることと、在留カードが有効期限内のものであることが必要です。人事異動の理由で、人事担当者の引継ぎがうまく行われていないと、ミスが起きやすいポイントです。在留カードが切れれば、オーバーステイとなり、最悪日本で就労できなくなります。外国人も仕事に忙しく、有効期限を忘れているケースがあります。日本にいて、海外に出る機会がないときなどは、いつの間にかパスポートも期限切れになっているということがあります。この点注意が必要です。

⑧契約文書の説明

外国人を雇用するときに雇用契約を結び、その内容を出入国在留管理局に届けて申請する必要があります。その契約の中に何が給与から天引きされるかを最初の段階で明示しておかないとトラブルになります。また、しばらくしてから天引きの始まる住民税も説明が必要です。社会保険料や雇用保険料についても何を根拠にこの額が天引きの対象になるかを説明しておかないとトラブルの原因になります。日本のように公的医療保険制度が完備された国とは違うケースも多く、予想外の天引き額の多さに話が違うとクレームをつけられることがあります。職務内容についても、明確に説明しておかないと、契約内容にない業務はできないと拒絶されるケースがあります。

⑨外国人の能力の把握と担当業務のマッチング

外国人を採用する場合、日本語能力の確認は重要です。英語や中国語で対応可能な業務なら問題ありませんが、日本人と日本語で共には働く職場では、コミュニケーションを行うために必要な日本語力を有しているかを採用のポイントにする必要があります。日本語能力試験N2といっても、マークシートの試験なので、書いたり、話したりという職務遂行に必要な日本語力が備わっていなければミスマッチということになります。あと、外国人の場合、日本との文化の差も大きいので、適応力を選考の基準として入れておくといいでしょう。

⑩会社の概要の説明と外国人社員採用の必要性

日本の会社が外国人を採用する場合、その理由を出入国在留管理局に説明することが求められます。何を理由にその外国人を採用することにしたか、明確な説明をできるようにしておかなければなりません。外国人が学校や前職で学び経験したことが、自社でどのように活かせるのか、その理由を説明できるようにしておく必要があります。とくに、ベンチャー企業で、歴史が浅くまだ業績が乏しい場合など、外国人がなぜ必要かという明確な説明は、事業計画とリンクして行うことが求められます。

3.在留資格に関する基礎知識

在留資格は、外国人が日本において活動できる範囲を示したもので、就労の在留資格は、その種類によって範囲が限定されます。特定技能制度の開始により、2019年以降、外国人が就くことのでき職種が増えているのも事実ですが、すべてをカバーしているわけではありません。身分系の「日本人の配偶者等」や「定住者」であれば、どのような仕事に就くことも可能ですが、就労系は制限がかかるので、注意が必要です。特に、特定技能や高度専門職などでは、指定書という紙が、パスポートに貼り付けられ、活動できる企業まで指定されます。

4.在留カードとは何か?

在留カードは、3か月を超えて日本に在留する外国人が原則として所持する在留資格の証明書です。在留カードは、右上に番号が記載され、更新のたびにあるいは在留資格を変更したときにもその番号は変更になります。在留カードは、有効期限があり、通常は1年、3年、5年というように在留期限がカード上に明記され、具体的な日付で、有効期限が示されています。更新する場合は、有効期限の3か月前から地方出入国在留管理局で手続きを行うことができます。在留カードは、氏名のほか、住所、国籍、性別、在留資格の種類と有効期限並びに有効な年数が記載されています。就労ができない在留カードには、就労不可と記載されています。ただし、資格外活動許可が認められ、カードの裏に資格外活動許可のスタンプが押されている場合は、アルバイトを週28時間まで行うことができます。

5.外国人を採用する際の具体的なチェックポイント

外国人を採用する場合、確認が必要なのは、担当することになる職種を行うことのできる在留資格を有しているか、あるいは在留資格を申請できる要件を満たしているかです。通訳など国際業務に該当する場合、3年の経験が必要です。技術であれば10年の経験が必要とされています。しかし、その期間には大学等で勉強した期間も含まれます。もし、特定技能の外国人を採用するということになれば、技能試験と日本語の試験の双方にが合格しているか確認する必要があります。高度人材を採用する場合、高度人材ポイントの換算表で計算をして、70点以上あれば、「高度専門職」として在留資格の申請ができます。いずれの場合も、同様の日本人が担当する職種の賃金と同等かそれ以上の水準でなければ、在留資格を認められるための要件を満たさないことになります。

6.企業が行う在留資格申請の手続き

外国人を採用する場合、確認が必要なのは、担当することになる職種を行うことのできる在留資格を有しているか、あるいは在留資格を申請できる要件を満たしているかです。通訳など国際業務に該当する場合、3年の経験が必要です。技術であれば10年の経験が必要とされています。しかし、その期間には大学等で勉強した期間も含まれます。もし、特定技能の外国人を採用するということになれば、技能試験と日本語の試験の双方にが合格しているか確認する必要があります。高度人材を採用する場合、高度人材ポイントの換算表で計算をして、70点以上あれば、「高度専門職」として在留資格の申請ができます。いずれの場合も、同様の日本人が担当する職種の賃金と同等かそれ以上の水準でなければ、在留資格を認められるための要件を満たさないことになります。

まとめ

これからの時代は、多くの外国人が日本で働くことになります。外国人を雇用する企業の担当者は、その実務に必要な知識を持つ必要があり、理解不十分により法令違反を犯してしまうような事態は避けなければなりません。特に入管法の知識は、外国人を採用する企業の人事担当者にとって必要不可欠です。

監修者情報

佐藤 正巳(さとう まさみ)

プロフィール 成城大学経済学部経営学科卒業後、大手精密機械メーカーの販売会社に入社し、営業を経験。その後、2年3か月間アメリカに留学し、経営学と比較文化論等を学ぶ。帰国後、出版社の編集者として2年間勤務し、その後、健康用品販売会社を立ち上げる。経営者として、2006年まで会社のマネジメントを行う。2008年に行政書士としての活動を始め、入管業務を中心として数多くの案件を手がける。その後、2016年に社会保険労務士としても活動をはじめ、就業規則の作成や外国人の雇用管理に関する業務を行う。2019年には、東京都社会保険労務士会に自主研究グループとして外国人雇用管理研究会を立ち上げ、毎月セミナーを開催。

佐藤 正巳 氏

著書
  • 著書1ゼロから始める外国人雇用実務ガイド
  • 著書2キーワードで理解する外国人の日本生活ハンドブック

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