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【外国人雇用管理③】日本生活の手引き
日本では記録的な少子高齢化が進み、労働力不足が深刻化する時代になりました。日本の経済力を今後も維持していくために、多くの企業が外国人を労働力として使い始めています。それに伴い、外国人が家族を帯同して日本で生活するケースも増えてきています。今後、企業は家族の生活を含めて支援していく必要が出てきます。 外国人とその家族が日本に定着し、多文化共生を進めていく時代になりました。日本では、現在外国人の在留支援を行うための体制づくりを進めています。
1.外国人の雇用管理
外国人労働者を受け入れる企業は、そのための準備が必要です。 何も準備しなければ、①社員とのコミュニケーションの問題に起因するトラブルが起きる、②日本の文化と外国の文化の違いによるトラブルが発生する、③外国人を受け入れるための入管手続きに時間がかかるという問題に直面します。 これらの問題を解決するための社内体制と行政書士や社会保険労務士を使うなど、外国人の労務管理に精通した人材の確保が重要になります。日本では、人手不足に悩む業界の一部を特定産業と名づけ、「育成就労」および「特定技能1号」として受け入れることを決めています。特定産業は、随時見直しが進められ、従来受け入れて来なかった「自動車運送業」なども新たな分野になる予定です。今後、日本の人手不足は深刻化し、2040年ごろには、1100万人前後の外国人労働者の受け入れが必要になるという予測もあります。 2040年代には、就労人口の6分の1が外国人となる可能性があり、外国人雇用の問題は、各企業が直面する身近な問題として位置づけられます。
2.外国人の日本生活
外国人の日本生活は、在留資格を得て、空港にて上陸審査手続きを受けてからがスタートになります。上陸審査で問題なければ、日本における活動内容に適合した在留カードが渡されます。 企業において働くためには、就労に必要な在留資格か身分系の在留資格が必要になります。 就労系で、家族滞在が認められている在留資格の場合、外国人労働者の配偶者と子(18歳未満が原則)には、「家族滞在」の在留資格が与えられ、日本での生活が始ます。外国人労働者の配偶者が日本で「家族滞在」の在留資格を求められている場合、資格外活動許可を取ることで、週28時間以内のアルバイトが認められます。 子供は、状況に応じて日本の義務教育を受けることもできますし、インターナショナルスクールに通わせることも可能です。
3.外国人と日本人の結婚・離婚・子育て
外国人と日本人との国際結婚は増え続けています。今後も同じ職場で働く外国人と日本人の結婚など様々なケースで、いろいろな国から来た外国人と日本人のカップルが結ばれることがあるでしょう。就労系の外国人が、日本人と結婚した場合、「日本人の配偶者等」へと在留資格変更申請ができます。 ただし、日本において入籍しただけでは、「日本人の配偶者等」の在留資格は取得できません。かなり詳しく書いた結婚までの経緯を説明した文章を署名入りで、出入国在留管理局に提出することが求められます。 日本人と外国人カップルの間に子供が生まれた場合、成人年齢の2年後までは、国籍の留保が可能で、2重国籍のまま生活できます。問題は、子供の教育問題などでトラブルに発展し、離婚という不幸な結果になった場合です。子供の親権をめぐって争いになって、泥沼化するケースも少なくありません。日本人と外国人の離婚率は、約50%にも達しており、文化の違う国で育ったカップルが、末永く幸せな結婚生活を送ることは容易ではありません。 外国人と結婚する場合には、離婚するリスクを想定して、契約書を交わすケースもあります。日本のように協議離婚ではなく、裁判所における決定をもとに離婚後の権利関係が確定されることもあるからです。
4.外国人の永住と定住
日本での生活を気に入った外国人は、永住権を取りたがる傾向があります。これからも日本に継続的に住み続けたいということから、永住権を目指すのですが、決して簡単に許可が下りるものではありません。 年収要件、納税要件、社会保険料支払い要件、素行性の問題で、犯罪履歴がないかどうかまで見られます。 年収が良くても、故郷の親を含め扶養する家族が多いようなケースも不許可対象です。日本でのスピード違反の赤切符なども、犯罪履歴になります。外国人は、10年日本に在留し、そのうち働いていた期間が5年を超えるようケースでは永住許可申請の対象となります。日本人の配偶者等として、日本での生活を続けた外国人は、3年の在留で永住許可申請ができます。日本人の実子で、現在は外国籍になっているようなケースでも、3年の在留で永住許可申請ができます。定住者の場合は、5年で在留許可申請ができます。申請して審査期間中に3か月を超えて海外に出てしまうと、在留性がないということで不許可になるケースもあります。 また、せっかく永住権を許可されても、今後は、入管法改正により、外国人が故意に税金や社会保険料の支払いをしていないと、永住権を取り消されることもあります。
5.外国人の帰化と定住
外国人も一定の要件を満たせば、日本国籍を取得することができます。
①住所要件 | 引き続き日本に5年間住んでいることが必要です。期間が緩和されるのは、日本人にルーツのある方や日本人と結婚した方です。日本生まれの方は3年、日本人の配偶者で、婚姻から3年未満で3年、日本人の配偶者で婚姻から3年以上で1年、日本人の子(養子を除く)は期間の制限となっています。 |
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②能力要件 | 18歳以上で本国の法則でも成人に達していることが必要です。 |
③素行要件 | 外国人の日本における素行が要件となります。素行は、納税、社会保険料の納付状況、犯罪歴などから判断されます。 |
④生計要件 | 収入に困窮することなく、日本で生活していけることが求められます。生計を一つにする親族を単位に判断されますので、本人が無収入であっても、配偶者その他の親族の資産や収入があれば、帰化申請はできます。 |
⑤重国籍防止要件 | 無国籍であるか、帰化により本国の国籍を喪失させることが必要になります。 |
⑥憲法遵守要件 | 日本政府を暴力で破壊することを企てるものや主張する者、あるいはそうした団体の結成または加入している者は帰化が許可されません。 |
⑦日本語能力要件 | 日常生活において問題ない程度の日本語能力(会話・読み書き)を有していることが必要です。日本の小学3年の学力程度が求められます。現状、帰化申請を受理された外国人の8割程度は許可が出ていますが、日本語の試験で能力不足を指摘されたり、在留資格該当性のない仕事をしていたり、スピード違反等で赤切符をもらったりすると、不許可になります。 |
6.外国人の行政手続き
外国人が日本で就労する場合、在留資格の該当性が問題になります。どのような仕事にでも就けるわけではわけではありません。 日本で活動しようとするにあたって、入管法上該当する資格が定められているかどうかを確認し、合致しなければならないとするのが、在留資格該当性という概念です。 該当性がないと判断されれば、その仕事を日本で行うことはできません。
6-1.出入国在留管理局
出入国在留管理局においては、在留カードの更新手続きや在留資格の変更申請を行います。高度専門職や特定技能1号など、指定書がパスポートに貼り付けられている在留資格については、 職を変更する場合は、在留資格変更申請が必要になります。外国人の夫婦が日本で生活している場合で、子供が新しく誕生したケースでは、在留資格取得申請が必要です。外国人夫妻が共に永住権を有して いるときは、直接永住許可申請をすることもできます。
6-2.その他役所
外国人がまず日本に入国し、3か月を超える有効期限の在留カードを配布された場合は、住むことになる地域の市区町村に出向き、転入届をすることが規定されています。 外国人も地方自治体の住民となることで、その住所が在留カードに登録され、住民としてのサービスを受けることができます。 もちろん外国人の場合でも、住民税の支払い義務があります。会社勤務の外国人では、会社側が厚生年金の加入手続きを行ってくれますが、フリーランス等で個人事業主になる外国人の場合、自ら居住地の自治体で国民年金と国民変更保険に加入しなければなりません。 税金に関しては、自ら確定申告を行います。
7.外国人の在留サポート体制
外国人のサポート体制を整備する自治体も増えています。日本語教室を開設したり、外国人にもわかる言葉で、行政サービスの案内をしたりするケースも増えました。 今後、2026年からは、各地方自治体が、「やさしい日本語」の活用による行政サービスの広報も予定されています。 地方都市で、外国人の住民割合が増えてきているケースでは、よりきめ細かい広報体制が取られると思います。日本国政府が設けた外国人在留支援センター(FRESK)では、日本で暮らす外国人を対象に、在留を支援するための相談対応をしています。外国人を雇用したい企業の支援も同時に行っています。外国人とその支援者にとって有益な生活支援情報を配信するサービスも存在します。 出入国在留管理庁が提供する「外国人生活支援ポータルサイト」では、外国人が日本で安心して生活するために必要なことや大事なことを配信しています。 総合サイトに加え、「入国・在留」「市区町村の申請」「雇用・労働」「出産・子育て」「教育」「医療」「年金・福祉」「税金」「交通」「緊急・災害」「住居」「日常生活のルール」に分かれています。なお、このポータルサイトは、現在日本語のほかに15の言語対応がされています。英語、中国語、韓国語、ポルトガル語、ベトナム語、タイ語、クメール語、トルコ語、ネパール語、インドネシア語、ミャンマー語、タガログ語、モンゴル語に加えてウクライナ語です。
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まとめ
日本に長期的に留まり生活する外国人は確実に増えています。すでに永住者も80万人を超えるレベルになっており、帰化申請をして日本の国籍を得たいと考える外国人も急増しています。日本に関心を持つ外国人が増えるとともに、日本国内でも外国人の日本生活を支援する動きが広がっています。 日本国政府が打ち出した多文化共生社会を進めるための各種施策が採られて、サポート体制を具現化する場として東京には、外国人在留支援センター(FRESC)も設けられ、4省庁8機関がワンフロアで相談員を置いています。 日本で幼少期から生活してきた外国人に配慮した形で在留資格「定住者」も与えられています。小学校3年生ごろまでに来日し、日本の小学校、中学校、高等学校と卒業すれば、「定住者」の在留資格が与えられます。小学校高学年以降に来日した外国人でもN2以上の日本語能力があれば、「特定活動」の在留資格が与えられ、18歳で高等学校を卒業後は、日本国内で働くことができます。
監修者情報
佐藤 正巳(さとう まさみ)
プロフィール | 成城大学経済学部経営学科卒業後、大手精密機械メーカーの販売会社に入社し、営業を経験。その後、2年3か月間アメリカに留学し、経営学と比較文化論等を学ぶ。帰国後、出版社の編集者として2年間勤務し、その後、健康用品販売会社を立ち上げる。経営者として、2006年まで会社のマネジメントを行う。2008年に行政書士としての活動を始め、入管業務を中心として数多くの案件を手がける。その後、2016年に社会保険労務士としても活動をはじめ、就業規則の作成や外国人の雇用管理に関する業務を行う。2019年には、東京都社会保険労務士会に自主研究グループとして外国人雇用管理研究会を立ち上げ、毎月セミナーを開催。 |
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著書 |
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