• 人事・労務
  • 公開日:

【社労士・行政書士・国家公務員OBが語る!】人手不足に打ち克つための人事労務対策の基本

【社労士・行政書士・国家公務員OBが語る!】人手不足に打ち克つための人事労務対策の基本

出生数の減少が止まらない状況で、経営者にとって人手不足は、これからも長く向き合っていかざるを得ない問題です。将来を睨んでどのような手を打っていくのか、覚悟が問われています。

おすすめの方
中堅企業や中小企業の経営者、経営幹部
各地の商工会議所、商工会の職員
建設、運送、医療、介護・福祉、サービス・飲食の業界団体の職員

先ずはお問い合わせください!

LEC東京リーガルマインドは貴社の人材育成を成功させるため、集合研修・eラーニング研修・試験対策研修・ブレンディング研修まで、様々なプランをご用意しております。詳細資料のご請求やお見積りのご依頼は、お気軽に法人事業本部まで。

1.はじめに

企業の人手不足感はバブル期に迫る水準となっており、こうした中、「人手不足倒産」が広がっていくのではないかと心配されています。 深刻な業種として 、建設では、「3K(きつい・危険・汚い)」という負のイメージが定着しています。医療では、特に夜勤は身体的負担が大きいです。サービス・飲食では、早朝・深夜、休日出勤など勤務が不規則になりがちです。 介護・福祉では、利用者の増加に対しケアする人材が追いついていません。運送では、インターネットショッピングにより宅配便が増加しました。
今後、人手不足の状況は厳しさを増すでしょう。2022年時点の国内における0歳児人口はおよそ「80万人」であり、20歳人口「120万人」の3分の2程度に過ぎないです。
社員を確保するためには、将来を睨みつつ、抜本的な対策を講じていく必要があります。ここでは、賃金、職場環境、人材(外国人)という三つの人事労務分野を取り上げます。

2.三つの基本対策

2-1.社員の給料をアップする(適切な価格転嫁)

労務費の価格転嫁については、これまで、社会意識がこれを阻む「壁」となってきました。政府の調査※では、「労務費の上昇分は受注者の生産性や効率性の向上を図ることで、吸収すべき問題であるという意識が発注者に根強くある」としています。 かつて、私も、中小企業の経営者から、「労務費の価格転嫁は、しないものという社会風土がある」との指摘を受けたことがあります。
こうした意識・風土のみなもとには、半世紀前の第二次石油危機を抜群の対応により乗り越え、世界屈指の先進国に上りつめた成功経験があるのではないでしょうか。 企業は価格引上げを抑制し、労働者も賃上げを我慢しました。これにより物価上昇が抑えられ、日本の安い製品が世界を駆け巡ることとなりました。
しかし、既に、人口は減少に転じています。安い賃金では経済が冷え込みます。「労務費の価格転嫁について、発注者と受注者がしっかり交渉することが重要だ」という社会風土への変容が求められています。

※参照:独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に係るコスト上昇分の価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査の結果について(公正取引委員会 2023年12月27日発行)
 

政府は、交渉を後押しすべく、発注者が次の1又は2のもとで取引価格を据え置いた場合、独占禁止法上の優越的地位の濫用や、下請法上の買いたたきとして問題となりうるとしました。

  1. 取引価格への反映の必要性について価格の交渉の場において明示的に協議しない。
  2. 受注者が取引価格の引上げを求めたにもかかわらず,価格転嫁をしない理由を書面,電子メール等で回答しない。

また、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」が策定され、受注者として採るべき行動/求められる行動として、次のことなどが示されています。

  1. 発注者から価格を提示されるのを待たずに希望する価格を提示すること。
  2. 根拠資料として、最低賃金の上昇率、春季労使交渉の妥結額やその上昇率などの公表資料を用いること。

こうした政府の施策を活用して価格転嫁に取り組むことが効果的でしょう。上記a・bに関連して次のような好事例があります。※

  • 労務費について、以前は作業時間のみを見積り計上していたが、移動時間についても発注者に価格転嫁を要請したところ、受け入れてもらえた。
  • 当社負担が通例となっていた費用について、指針を示して発注者に負担してもらえないか交渉したところ、発注者も指針の内容を知っていたことから受け入れられた。
  • 同一労働同一賃金に対応するために労務費が上昇したこと等を発注者に示した。
※参照:「令和6年度価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査」の結果について(公正取引委員会 2024年12月16日)
労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針(内閣官房、公正取引委員会 2023年11月29日)

価格交渉

eラーニング「下請法の基礎知識を学ぶ」のスライド形式(音声無し)と動画形式(音声あり)の、どちらも一部を無料でお試しいただけます。

ダウンロードページへ

コンプライアンス・法務研修全体を見る

2-2.社員にとって働きやすい職場にする

私は労働相談の仕事をしていますが、次のような相談に接することがあります。

  1. 働いているのに労働時間として扱ってくれない。ただ働きだ。
  2. 労働時間が長く、休日もない。健康状態が思わしくない。
  3. 年次有給休暇を取得させてくれない。そのたびに「代わりの人がいない」と言われる。
  4. ハラスメントを受けている。相談したが解決してくれない。
  5. 同じ仕事をしているのに、なぜ待遇が違うのか。

法律に違反しているかどうかは、インターネットを使って簡単に見当をつけることができます。また、人材紹介により容易に転職することが可能となっています。そして、法律上、やむを得ない理由があるときは直ちに退職することができます。 労働基準法をはじめ法律を守ることができているのか、労働者の視点に立って速やかに点検する必要があります。
合わせて、違反の発生を防ぐための仕組みをつくっていくことが重要です。
会社側と、労働組合や社員(代表)との連携が大切です。まずは、上記の項目に関連して、労使協定や就業規則等が周知されているか、また、守られているのか、協力して確認してはどうでしょうか。これに関連して、「労働組合がなく現場の意見を吸い上げる体制がない」との課題について、以下の助言があります。

長時間労働の抑制及び年次有給休暇取得促進に関して、それらの課題について従業員代表など現場の社員と定期的な意見交換の場を設けて、取組推進の体制を構築する。 例としては、既存の安全衛生委員会におけるテーマのひとつとして議論する他、働き方・休み方に特化して協議する場として労働時間等設定改善委員会を設置するなど、今後の方針、改善を進めるフローの検討等、具体的な話し合いを労使で進める場を設ける。
引用:働き方・休み方改善ポータルサイト(厚生労働省)

ワークライフバランス

eラーニング「労働基準法の基礎知識」のスライド形式(音声無し)と動画形式(音声あり)の、どちらも一部を無料でお試しいただけます。

ダウンロードページへ

人事・労務研修全体を見る

2-3.10年後を意識して、外国人を採用し育成する

北東アジア地域では、日本のみならず、韓国、台湾、中国それぞれの人口も、2025年と比較して、概ね、20年後には1割、30年後には2割減少します。 人手不足が一層深刻化する中で、これらの間で、インドネシアなど域外からの外国人労働者の獲得に向けて競争が激化することが見込まれます。また、国内市場の伸びが期待できないことから、海外市場を取り込むことがより重要になると考えられます。 こうした見通しのもとで、企業は、当面の人手確保にとどまらず、将来の社員構成のなかで外国人をどのように位置づけるのか、ある意味、覚悟を問われているのではないでしょうか。
例えば、在留期間や活動内容に制限がない在留資格「永住者」については、その要件として、①素行が善良であること、②独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること、③その者の永住が日本国の利益に合すると認められること、 が定められています。このうち、③に関しては、要件の一つとして、「原則として引き続き10年以上本邦に在留していること」が挙げられています。本人の意向を節目節目で確認し、その上で、在留資格「永住者」の取得に向けて外国人労働者に伴走することについて、真剣に検討してもいいのではないでしょうか。

在留資格「永住者」の取得要件
  • ①素行が善良であること
  • ②独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
  • ③その者の永住が日本国の利益に合すると認められること

外国人を雇用した会社の代表者の御意見として、特に次のものが印象に残りました。

外国人の雇用を考えているなら、すぐに始めた方が良いと思います。日本の労働人口が減っていく中で、外国人を雇うことは、今後、主流になる。でも人材を育てるには時間がかかります。当社もここまで来るのに10年かかりました。
有限会社新栄精器 島田秀樹 代表取締役

  面接で必ず聞くのは「来日目的」。本人が日本に来た目的から逸れないように雇用したいと考えています。「お金を稼ぎたい」なら「何年でいくら稼ぎたいのか」、期間限定で働きたいのか、それとも日本に定住しようと考えているのか。外国人も一人一人違います。
株式会社ヒロフードサービス 井上泰弘 代表取締役
引用:外国人材の受入れ・活躍事例をご紹介します(経済産業省近畿経済産業局)
 

外国人雇用管理主任者認定講座資料を無料でダウンロードいただけます。

ダウンロードページへ

外国人雇用管理主任者認定講習の動画一部が無料で視聴いただけます。

無料体験

外国人人材育成/グローバル人材育成研修全体を見る

3.おわりに

人口減少の姿がくっきりとしてくる中で、人件費の価格転嫁について潮目が変わりつつあります。従来の「まかりならない」という社会意識から、「しっかり交渉することが重要」というものへと変容が求められています。 この新しい潮流に乗って、法令遵守はもとより労働条件を良くするための原資を確保し、それによって、社員の流出を阻むとともに、新しい人材を獲得していく、こうした企業が今後生き残っていくのではないでしょうか。そこには、外国人雇用という将来への投資があります。
これらのためには、研修等を活用して、独占禁止法、下請法、労働基準法、入国管理法など、関連する政策や制度への総合的な理解を深めることが必要です。
また、専門家・有識者等の助言も得ながら、次の三つの関係をつくっていくことが欠かせません。一つ目は、発注者との間で、価格転嫁のことを含めて何でも相談しやすい関係を構築することです。二つ目は、労働組合や社員代表と、広く現場の声を活かしていくための協力関係を築くことです。三つ目は、外国人労働者と社内ルールを共有し、円滑に意思疎通ができる信頼関係をつくることです。

人手不足に打ち克つ、三つの関係構築
  • ①発注者との間で、価格転嫁のことを含めて何でも相談しやすい関係を構築する
  • ②労働組合や社員代表と、広く現場の声を活かしていくための協力関係を築く
  • ③外国人労働者と社内ルールを共有し、円滑に意思疎通ができる信頼関係をつくる

LEC東京リーガルマインドのおすすめ研修

法令遵守やコンプライアンスを見直したい方向け

働きやすい職場をつくりたい方向け

外国人雇用に取り組みたい方向け

研修のラインナップ

eラーニング人事・労務研修

こちらもおすすめ【コラム記事】

監修者情報

服部 高明(はっとり たかあき)

プロフィール 経済企画庁に入庁(経済職・上級)(1985年)。37年間、内閣府、内閣官房、大蔵省、総務省、消費者庁、金融庁、科学技術庁、公正取引委員会など13の中央省庁等において勤務。 また、退職前後において、社会保険労務士、行政書士の資格を取得。 TOEIC SCORE 920。
これらの経験・知見を活かして、3つの目(鳥の目、魚の目、虫の目)で取り組んでいきたい。

服部 高明 氏

先ずはお問い合わせください!

LEC東京リーガルマインドは貴社の人材育成を成功させるため、集合研修・eラーニング研修・試験対策研修・ブレンディング研修まで、様々なプランをご用意しております。詳細資料のご請求やお見積りのご依頼は、お気軽に法人事業本部まで。

PAGE TOP