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PDCAは古いのか?──“適材適所”の視点から考えるビジネスフレームワーク活用術

PDCAは古いのか?──“適材適所”の視点から考えるビジネスフレームワーク活用術

ビジネス書や研修の場面で長らく登場してきた「PDCAサイクル」。 近年、変化の早いビジネス環境にはそぐわないのでは、という声も聞かれますが、実は「適材適所」で活用すれば、今なお強力な手法として十分機能します。 最近では、PDCAの進化系ともいえる新たなビジネスフレームワークも登場しており、本コラムではそれらを紹介しながら、業界・業種ごとのフィット感に留意した活用のポイントを解説していきます。 さらに、活用の成果を最大限に引き出すために必要な組織力についても、具体的にお伝えしていきます。

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本コラムでは、こうした課題に向き合うヒントとして、PDCAサイクルの実践や、実際の研修導入に活かせる具体的な展開方法をご紹介します。

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PDCAサイクルとは

PDCAとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の頭文字をとった業務改善の基本的なサイクルです。 日本では、製造業の品質管理を中心に広く浸透し、効率化や標準化の手法として活用されてきました。その特徴は、一度きりの行動で終わらせず、「計画→実行→振り返り→改善」という流れを繰り返すことで、 業務の精度を高めていく点にあります。単なる管理手法ではなく、「小さな改善を積み重ねる文化」を支える考え方として、現在も多くの組織に根付いています。
一方で、ビジネス周期や環境変化が加速する中、仮説検証のサイクルを素早く回す必要が高まり、PDCAではスピード面で不利になるという見方も出てきました。

PDCAの進化系〜PDSA、OODA、アジャイルなど

ビジネス環境が変化する中で、PDCAサイクルを進化させた新たなメソッドが注目されてきています。以下に、主なフレームワークをお伝えします。

PDSAサイクル

Plan(計画)、Do(実行)、Study(学習)、Act(改善)の流れで進める業務改善手法です。PDCAとの違いは、「C(Check)」を「S(Study)」に置き換えている点にあり、 単なる結果確認にとどまらず、原因分析や学習を通じて得た知見を次の行動に活かすことを重視しています。この手法は、改善活動を科学的に検証しながら積み上げていく分野で活用されており、PDCAの進化版ともいえるアプローチです。 より深い学びを組織に定着させることができるのが特徴です。

OODA(ウーダ)ループ

観察・情報収集(Observe)、方向性判断(Orient)、意思決定(Decide)、行動(Act)の頭文字からとったもので、米軍の戦闘機パイロットが用いた意思決定モデルが起源です。 計画ありきではなく、まず「観察(現状把握)」から始めることで、状況を素早く認識し、方向性を定め、意思決定から行動へとつなげることができます。環境変化が激しく、計画的なビジネス運用が難しい状況でも、素早い意思決定を可能にします。

アジャイル開発

ソフトウェア開発から広がった手法で、大きな計画を立てずに、小さな単位で試行・修正を繰り返しながら、顧客やマーケットの反応を見ながら都度修正し、成果物の精度を高めていくビジネス開発のメソッドです。 顧客ニーズが変化しやすい場合などには、短いサイクル(スプリント)で実行と検証を繰り返し、成果物を段階的に進化させていきます。IT・システム開発に限らず、新規事業開発や商品企画、改善などにも広く応用でき、顧客の要望や市場の変化に柔軟に対応できる点が魅力です。 さらに、コストや工数を抑えられるというメリットもあります。

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PDCAがフィットする業界・業種とは

PDCAは、「安定した環境における継続的改善」を得意とする手法です。変数が比較的少なく、同じ業務を標準化・反復することが成果に直結するような場面で、特に力を発揮します。 では、どのような業種・業界にフィットするのか、以下で詳しくみていきましょう。

◆製造業(特に品質管理・生産管理)
トヨタ生産方式など、日本の製造業はまさにPDCAの実践例です。製造ラインでは、一つの欠陥が大きな損失につながるため、標準化と改善が不可欠です。安定した環境の中で「ムダを減らす」「不良率を下げる」といった改善活動に、PDCAは最適です。
◆インフラ・設備管理
電力やガス、水道といった社会基盤は、安定運用が最優先です。計画的な点検・実行・検証・改善のサイクルが安全確保につながるため、PDCAとの親和性は非常に高いといえます。
◆医療・介護の運営改善
医療ミスの防止やケアの標準化には、「計画的な改善活動」が重要です。大規模病院の品質管理部門や介護施設の業務プロセス改善では、PDCAが根強く活用されています。
◆コールセンター・バックオフィス業務
応対マニュアルや事務処理手順を整備し、定期的に振り返ることは、品質の安定化に直結します。改善余地が見えやすい業務だからこそ、PDCAの効果が大きく発揮される分野です。
◆公共機関・行政サービス
年度ごとに計画を立て、進捗をチェックし、次年度の改善に生かすという仕組みは、まさにPDCAそのものです。民間に比べて変化のスピードが緩やかな分、PDCAがしっくり馴染みやすいといえます。

PDCAは古いのか?──“適材適所”の視点から考えるビジネスフレームワーク活用術

PDCAがフィットしにくい業界・業種とは

一方で、変化のスピードが早く、「計画を立ててから実行」では追いつけない分野では、PDCAの弱点が表れやすく、フィット感が弱まる可能性があります。

◆IT・Webサービス(特にB2C領域)
ユーザーの反応や競合の動きが、日単位で変わります。長い計画段階を踏むよりも、MVP(最小限の製品)を出して反応を即座に取り込む、リーンスタートアップやアジャイル開発の方が適しています。
◆ファッション・エンタメ業界
トレンドは一瞬で変化します。PDCAをじっくり回している間に、機会を逃してしまうこともあります。スピード感を重視するOODA的アプローチの方が向いているといえます。
◆デジタルマーケティング
広告効果やSNSのアルゴリズムは、日々変動します。リアルタイムで試し、データを分析して次の手を打つ迅速性が不可欠です。
◆スタートアップ
ビジネスモデル自体が不安定で頻繁に方向転換(ピボット)が必要な環境では、PDCAの「計画ありき」の発想が、かえって足かせになることもあります。失敗から学ぶサイクルを高速で回す文化の方が適しています。
※参考:厚生労働省「生衛業向けマニュアルPDCAサイクルとOODAループ」(2022)

PDCAは古いのか?──“適材適所”の視点から考えるビジネスフレームワーク活用術

日本でPDCAが根強く支持される理由

では、なぜ日本では、「古い」といわれながらもPDCAが広く浸透しているのでしょうか。そこには、いくつかの文化的、組織的な背景があります。

◆品質志向と改善文化
日本のものづくりは、「カイゼン」の思想とともに発展してきました。小さな改善を積み重ねて高品質な商品・サービスを構築し、グローバルマーケットとの差別化を図ってきたのです。継続的な改善を重視する姿勢が組織文化として根付いており、PDCAは、その思想と相性抜群です。
◆年次計画・中期計画への親和性
日本企業は、年度ごとの計画に基づく経営スタイルが主流です。計画重視の企業文化においては、PDCAの「P(計画)」が、特に重要視されやすい傾向にあります。
◆教育現場での浸透
学校教育や資格試験対策などでも、「計画を立てて実行・振り返る」というPDCAの考え方が取り入れられています。そのため、自然と馴染みのある思考法として広く浸透しています。

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PDCAなどのビジネスフレームワークをうまく活かすには

PDCAやPDSA、OODAといったフレームワークは、単に導入するだけで効果が出るわけではありません。組織として成果を上げるためには、いくつかの重要な要素と留意点が欠かせません。

まず必要なのは、組織と個人の明確なビジョンと目標の整合性です。各部署や個人の取り組みが全体戦略と結びついていなければ、フレームワークは形だけのものになってしまいます。 次に重要なのは、データに基づく検証と透明性です。感覚や勘ではなく、数値や事実を共有する仕組みが「Check」「Study」の質を高めます。 できるだけ正確で公平、信頼できるデータをもとにすることが、意思決定の質にも直結します。さらに、改善を奨励する文化と心理的安全性が不可欠です。 失敗を隠したり、良い報告だけしか上がって来なかったりするような環境では、学びが得られず、フレームワークは機能しません。そして、経営層の実践とコミットメントも重要です。 トップが自ら実践し、評価制度や教育と結びつけることで、組織全体に浸透していきます。つまり、フレームワークはあくまで「道具」にすぎず、それを活かすには、組織に属する個人の姿勢と、学びや改善を支える環境づくりが非常に大切になってきます。

あなたの組織は大丈夫? PDCA活用力チェックリスト

PDCAなどのビジネスフレームワークをうまく活用するには、まずは組織としての活用力が十分かどうかを確認することが大切です。ここで、簡単な診断をしてみましょう。
<診断方法>
以下15個の各項目に対して、「はい=◎」「一部できている=△」「できていない=×」の3つの評価でチェックしてください。

① ビジョン・目標整合性
□ 組織のビジョンや中期方針が明文化されている
□ 部署・チームの目標が全体戦略とつながっている
□ 個人目標にも組織方針が落とし込まれている
② データ活用・検証
□ 成果指標(KPI)が数値やデータで設定されている
□ 定期的に進捗・成果がデータで共有されている
□ 検証の際に「感覚」ではなく「事実」で議論できている
③ 進捗管理とフィードバック
□ 定例の進捗確認(週次・月次)が仕組み化されている
□ 成果と課題を振り返る時間が意識的に確保されている
□ フィードバックが建設的で、次の行動につながっている
④ 改善文化と心理的安全性
□ 失敗や課題を報告しても不利益を受けない雰囲気がある
□ 改善提案を評価・奨励する仕組みがある
□ チーム内で自由に意見を出し合える環境がある
⑤ トップマネジメントの関与
□ 経営層がフレームワーク活用の意義を発信している
□ トップ自ら実践事例を示している
□ 評価制度や人材育成とフレームワーク活用が結びついている

<判定の目安>
◎が12個以上:フレームワークが成果につながる土壌ができています。
◎が7〜11個:基本はできているが、一部に改善余地があります。△や×が多かった項目を見直しましょう。
◎が0〜6個:フレームワークを実施しても形骸化してしまうリスクが高いです。まずは、目標整合性と進捗管理から強化しましょう。

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まとめ

ここまでで、PDCAをはじめとした様々なビジネスフレームワークやメソッドについて紹介してきました。大切なのは、ビジネス環境の変化や領域に応じて、柔軟に使い分けていくことです。 変化の激しい分野では、OODAやアジャイルのような、スピード重視の手法が有効です。一方、安定性が求められる領域では、PDCAのような継続的改善のフレームワークが力を発揮します。 こうしたフレームワークを適材適所で組み合わせる発想こそ、これからのビジネスパーソンに求められる視点ではないでしょうか。
そして、もう一つ重要なのが、様々なツールを活用して成果につなげるために、組織としてどうあるべきかを常に模索する姿勢が必要です。

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監修者情報

志野 こと葉(しの ことは)

プロフィール コンサルティング企業や大手教育系企業にて25年にわたり商品開発・マーケティング・広報業務などに携わる。 特にWeb開発やデジタルマーケティング領域の業務を数多く経験。マネジメント職を経験後、産業カウンセラー、ハラスメント相談員等の資格を取得。 その後、公務員に転向し、企業の雇用問題や採用、人材育成、働き方等におけるさまざまな課題解決に携わる。 働く人に向けた幅広いテーマでビジネスコラムの執筆を行っている。

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