- 経営・企画
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8つの経営資源を最大化して企業成長を実現するには
<中小企業・地方企業>

企業の成長を考えるとき、昨今のDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展や消費者ニーズの多様化により市場環境が大きく変化し、従来のビジネスモデルが通用しなくなっている点を課題にあげる方も多いでしょう。
特に、少子高齢化による労働力不足や大手企業との競争が難しい中小企業や地方企業では、その傾向がより顕著であるといわざるをえません。
このコラムでは、企業成長のために、今ある「経営資源」を見直し、それらをいかに最大化し、戦略的に企業を成長させていくためにどのようなアクションが必要なのかについて考察していきます。
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1.経営資源とは
ヒト・モノ・カネ・情報 4つの経営資源
経営資源とは、企業が事業活動を行うために必要な4つの基本要素を指します。これらは「ヒト・モノ・カネ・情報」と呼ばれて、 相互に補完し合う関係性で成り立っています。例えば、人材が優れていても資金がなければ成長できませんし、最新設備があっても使いこなす人材がいなければ効果を発揮しません。また、 業界により優先度が変わることがあります。
<4つの経営資源> | |
---|---|
ヒト (Human Resources:人材) |
企業で働く人々の能力、スキル、知識、経験 |
モノ (Physical Resources:設備・原材料) |
企業の活動に必要な物理的資産や設備 |
カネ (Financial Resources:資金) |
企業活動を支えるお金や資金力 |
情報 (Information Resources:情報・知識) |
事業に必要なデータ、ノウハウ、市場情報 |
拡張版 8つの経営資源とは
ここまでは基本的な4つの経営資源をお伝えしましたが、近年、少子高齢化による国内市場の構造変化や、グローバル化、IT化などの流れの中で、重要視されてきている、その他の経営資源についてもご案内します。今後は、これらを加えた 合計8つの「拡張版の経営資源」を強化することが、企業の競争優位を築く鍵になると考えられます。
<拡張版 8つの経営資源> | |
---|---|
ヒト(Human Resources:人材)
モノ(Physical Resources:設備・原材料) カネ(Financial Resources:資金) 情報(Information Resources:情報・知識) |
|
時間 (Time) |
経営活動やプロジェクトにかけられる時間、迅速な意思決定。 スピード対応。 |
知的財産 (Intellectual Property) |
企業が保有する特許、商標、著作権、ノウハウ |
ブランド (Brand) |
企業や製品に対する顧客の信頼やイメージ。 |
信頼 (Trust) |
顧客、取引先、従業員などステークホルダーとの信頼関係。 |
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2.経営資源の重要性と役割
企業が持続的に成長し、厳しい市場環境の中で生き残るためには、限られた経営資源をどのように活かすかが鍵となります。 経営資源は単なる手段ではなく、戦略そのものともいえる存在です。それぞれの資源が果たす役割を理解し、適切に組み合わせて活用することで、企業は独自の強みを築くことができます。 それでは、経営資源の重要性と具体的な事例について見ていきましょう。
なぜ経営資源が企業にとって重要なのか
企業にとって、持続的な成長と競争優位の確立のために、経営資源の有効活用は最重要課題であるといえるでしょう。経営資源には、「ヒト・モノ・カネ・情報」の4つに加え、「時間」「知的財産」「ブランド」「信頼」が含まれます。これらを適切に管理・活用することで、効率的な経営が可能となり、新たな事業展開や市場開拓にも対応できます。 特に、人的資源はイノベーションを生み、物的資源は生産性を支え、金銭的資源は資金繰りを安定させ、情報資源は迅速な意思決定をサポートします。また、ブランド力や信頼関係は顧客基盤を強化し、知的財産は独自性を高めます。 これらを相互的・戦略的に活用することで、企業は厳しい経営環境の中でも生き残り、発展し続けることができるといえます。
経営資源と競争優位性の関係(成功事例あり)
経営資源の有効活用で重要な点として、「競争優位性」の確率があります。これは、自社の経営資源を効果的に活用し、独自の商品やサービス、ブランドを作り上げたり、製造プロセスの改定や市場投入までのスピードを早めたりして、 他社には真似のできない当社独自の強みを醸成することにつながります。また、既存の経営資源を他の分野や市場に応用することで、新たな価値を創出することもあります。これらは、技術や情報、人材といった資源を柔軟に活用することが成功の鍵となっています。以下に事例を紹介します。
【事例①】スターバックス(人とブランドの有効活用)
- 経営資源の有効活用:
- スターバックスは、バリスタ(人材)の教育に力を入れ、高品質なサービスと製品を提供。さらに、店舗デザインやロゴ、店舗体験を通じて「スターバックスブランド」を確立しました。
- 競争優位性:
- 他のカフェチェーンとは異なる「高品質な接客」と「洗練されたブランドイメージ」を武器に、世界的に人気のブランドとなりました。
【事例②】富士フィルム:写真フィルム技術を化粧品へ応用
- 背景と経営資源の活用:
- 写真フィルム市場の縮小に直面した富士フィルムは、フィルム製造で培った微粒子技術やコーティング技術を活かし、化粧品事業に進出しました。
- 競争優位性:
- 既存の技術(知的財産)と研究開発力(人材)を新たな市場に転用することで、他社にはない高機能なスキンケア製品を提供し、化粧品市場での地位を確立しました。
3.中小企業の経営資源の現状
さて、ここまで、経営資源についての種類や基本概念、重要性等について述べてきましたが、この章では、特に中小企業の経営資源の状況について考察していきます。
一般的に、中小企業は大企業に比べて、8つの経営資源(人、物、金、情報、時間、知的財産、ブランド、信頼)の確保と活用において、不利な状況にある場合が多いといえます。
まず「人」の面で、大企業は給与や福利厚生、キャリアパスの面でより優れた条件を提示できるため、優秀な人材を確保しやすい一方、中小企業は人材採用が難しく、スキル不足に悩みがちです。 また、「金(資金)」においても、大企業は豊富な資金力や金融機関からの信頼を背景に、低金利での融資や大規模投資が可能ですが、中小企業は資金調達に苦労します。
さらに、「情報」も、大企業は最新の市場データや技術情報にアクセスしやすく、専任のマーケティングチームがある一方、 中小企業は情報収集にかけるリソースが限られます。その他、「ブランド」や「信頼」に関しても、 知名度の低さや信用力の不足から、顧客や取引先の信頼を獲得するまでに時間がかかります。これらの要因により、中小企業は、市場競争において劣勢に立たされがちであるといえます。
4.地方企業の経営資源の現状
同じように、地方企業についても、都市部の大企業に比べて8つの経営資源(人、物、金、情報、時間、知的財産、ブランド、信頼)において、不利な状況にあるといえます。
まず「人材」では、人口減少と若者の都市部流出により、地方企業は優秀な人材の確保が難しく、特に専門スキルを持つ人材が不足しがちです。また「物(設備)」でも、 都市部に比べて最新の設備や技術にアクセスしにくく、設備更新のためのコスト負担が大きくなります。
「資金(金融資源)」においても、地方企業は都市部の大企業に比べて金融機関からの融資条件が厳しく、 信用力の違いから資金調達が難しいことが多いです。さらに「情報」面では、都市部の企業がリアルタイムで市場動向や最新技術の情報を入手できるのに対し、 地方企業は情報収集に時間がかかり、競争のスピードに遅れがちです。
その他、「ブランド」や「信頼」の面でも、都市部の大企業はTVなどの媒体広告やSNSを活用し、短期間で認知度を高められますが、 地方企業は地域外での知名度が低く、新規顧客獲得が難しいです。これらの要因により、地方企業は都市部の大企業に比べて、競争上不利な立場に置かれることが少なくありません。
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5.経営資源を最大化して企業成長を促す8つのヒント
経営資源の獲得において不利な状況下にあっても、市場競争に打ち勝つためには、限られた経営資源を最大化させ、競争優位性を高めていく必要があります。 ここでは、中小企業や地域企業向けに、8つの経営資源を拡大させ、企業成長につなげていくヒントを探っていきます。
ヒント①人材の有効活用 (人材の最大化のヒント)
Keywords マルチスキル化/外部活用/採用の独自性/リモートワーク
組織は「少数精鋭」を目指し、従業員に複数の業務を担当させる教育を実施し、マルチスキルな従業員を増やしていきます。また、専門的な分野については、外部専門家の活用が有効です。 専門スキルが不足している分野は、フリーランスや業務委託で補っていくと良いでしょう。現在は副業も活発ですので、フリーランスサイトなどで適当な人材を探しやすくなっています。採用時には、 企業の独自性を強調した採用を行います。特定の業種・商品への愛着を訴求し、地域での働きがいや地元貢献をアピールし、地域愛のある人材を採用していきます。 リモートワークの導入で、地方でも、優秀な人材を全国から採用しやすくなります。
ヒント②モノの最大化
Keywords シェアリングエコノミ―/地域資源・特産物/SDGs
地元企業同士など、設備(機械や倉庫など)を共有(シェアリング)することで、コストを削減できることがあります。また、製造業であれば、 地元特産品や地域の資源を活かした商品開発で差別化を図ることもできます。 小ロット生産であれば、そのメリットを生かして、サイズが規格外の原料や廃材、未利用資材などを活用することも、SDGsを意識した観点として、消費者に受け入れられやすくなります。
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ヒント③カネの最大化
Keywords クラウドファンディング/補助金・助成金活用
商品開発にまつわるエピソードなど、企業の持つストーリーを伝えて共感を集め、クラウドファンディングを活用することで、資金を調達していきます。 また、行政の実施している補助金・助成金に関しては、税務署などでこまめに情報を収集し、該当するものがあれば期限内に申請していきましょう。
■参考:中小企業庁「中小企業の経営資源の集約化に資する税制」(令和5年4月)人材育成・社員研修実施にあたり、適用条件を満たす場合は国や都からの費用助成を受けることが出来ます。 助成金の活用について、人材育成に精通したコンサルタントのご紹介も可能ですので、お気軽にご相談ください。
ヒント④情報の最大化
Keywords デジタルマーケティング/コミュニティへの参加
企業HPやECサイト、SNS、メール等を活用したデジタルマーケティングを行っていくことで、顧客とダイレクトにつながり、ニーズの収集・分析が可能になります。 地域密着型のLINE公式アカウントや、特定のテーマのオンラインコミュニティに参加することなども情報収集につながります。また、リアルな場として、地域イベントに出店するなどして、顧客と直接交流し、フィードバックを即時収集することも有効でしょう。 調査する場合は、無料のマーケットリサーチツール(Googleトレンド、SNS分析ツール)を活用し、コストを抑えていきましょう。
ヒント⑤時間を最大化
Keywords 自動化/繁忙期・閑散期の計画的活用
時間は一日24時間と固定されているため、物理的に増やすことができない唯一のリソースであると言われます。そこで、時間効率を上げることやタイミングを重視することが求められます。例えば、 ルーティン業務は自動化ツール(ChatGPT,RPA)で対応し、タスク管理ツールでアラート設定やミス防止につなげていきます。また、 繁忙期・閑散期の計画的活用という点で、思い切ったシーズンキャンペーンを打ったり、地元のライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を導入したりといったことも、有効な時間活用策となります。
ヒント⑥知的財産を最大化
Keywords 知財の保護と権利化/ノウハウ蓄積
伝統技術やオリジナル製法、地元に古くから残る技術や食品のレシピなど、商品化の際は出来る範囲で特許化し、 知的財産として保護していくことが求められます。オリジナルの商品名やブランド名・デザインなどの商標・ロゴも同様に権利化し、模倣・盗用がないように財産として保護していきます。さらに、社内マニュアルや動画で、 独自技術におけるノウハウを蓄積し、次世代に継承可能にしていく必要があります。
ヒント⑦ブランドを最大化
Keywords ストーリー/SNS活用
商品開発や地域活性化など、その背景にある「ストーリー」をコンセプトに反映し、事業を展開していくと、顧客の共感を得やすくなります。地域の歴史や文化などを扱うと、特定のファン層へのアプローチも可能になります。 顧客にSNSでのシェアを促し、認知度を拡大させつつ、インフルエンサーと連携し、プロモーションを展開していきます。地元イベントなどに協賛し、社会的信用を高めていきます。 「地域でしか手に入らない価値」や「その企業ならではのストーリー」を強調することが、大企業には真似できない強みとなります。
ヒント⑧信頼を最大化
Keywords 顧客に寄り添う/リピーター優遇/情報公開
できるだけ、顧客と顔の見える関係を築くことが重要なポイントです。リピーターを確保したら、そのリピーターを割引やポイント制等を活用して優遇する施策を実施し、ロイヤルカスタマー層を厚くしていきます。 万一クレームやトラブルがあっても、顧客の声に素早く応える姿勢と、正しく情報公開を行うことで、企業や商品への信頼が高まっていきます。
まとめ
限られた経営資源でも工夫次第で成長の可能性は広がります。紹介した8つのヒントをもとに、自社に合った方法で経営資源を見直し、組み合わせて活用していくことで、競争力の強化や新たな展開につながっていくはずです。
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監修者情報
志野 こと葉(しの ことは)
プロフィール | コンサルティング企業や大手教育系企業にて25年にわたり商品開発・マーケティング・広報業務などに携わる。 特にWeb開発やデジタルマーケティング領域の業務を数多く経験。マネジメント職を経験後、産業カウンセラー、ハラスメント相談員等の資格を取得。 その後、公務員に転向し、企業の雇用問題や採用、人材育成、働き方等におけるさまざまな課題解決に携わる。 働く人に向けた幅広いテーマでビジネスコラムの執筆を行っている。 |
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