人事・労務

【社長対談】スペシャリストに聞く! 第2回
カスタマーハラスメントに負けない!人と組織づくり

【社長対談】スペシャリストに聞く!第2回 カスタマーハラスメントに負けない!人と組織づくり

ハラスメントに関する法改正により、企業の責任が今まで以上に問われています。企業の管理部門の方に向けて、ハラスメント対策に役立てていただきたい情報を、(株)東京リーガルマインド代表取締役 反町社長が、企業危機管理支援の(株)ジェイエスティー顧問 西岡敏成氏に2回にわけてお話を伺います。
今回は近年増えているカスタマーハラスメントについて、有効な対策・予防法を中心に伺います。

株式会社 ジェイエスティー 顧問 西岡敏成
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企業の危機管理をサポートする株式会社ジェイエスティーの顧問。
元兵庫県警警視長。警備・公安・刑事に従事。
2002年日韓W杯警備を指揮後、姫路警察署長、播磨方面本部長を歴任。元関西国際大学人間科学部教授。
株式会社 東京リーガルマインド 代表取締役社長 反町雄彦
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1998年、東京大学法学部在学中に司法試験合格。卒業後、株式会社東京リーガルマインド(LEC)入社。司法試験対策講座の講義を行い、初学者向けの入門講座から中上級向けの講座まで幅広く担当し、多くの短期合格者を輩出。2006年取締役を経て2014年LEC代表取締役社長に就任。LEC会計大学院学長兼務。

1.増えているカスタマーハラスメント

反町:前回は「職場におけるハラスメント」について企業がとるべき対策など、さまざまな観点からお話を伺いましたが、今回は、最近増えているカスタマーハラスメントについて、いろいろ教えていただきたいと思います。

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西岡:厚生労働省の令和2年度「職場のハラスメントに関する実態調査」で、過去3年間のハラスメント相談件数の比較で、カスタマーハラスメント、いわゆるカスハラが最も増加率が高くなっています。顧客等による悪質な嫌がらせ、暴言などの事案が増えてきています。
また、過去3年間に仕事でカスハラを受けた経験のある人は15%に上っています。これはパワハラ経験者30%の次に高い数値となっています。

反町:西岡さんから見て、カスハラが増加していると感じる業種、業界はありますか?

西岡:サービス業は全般的に増加傾向にあると思いますが、中でも、医療・介護関係、特に病院ですと、患者本人だけでなくその家族も一緒に理不尽な要求や嫌がらせをしてくるケースが多々あります。学校や塾などの教育の分野でも、親からの過度なクレームや過剰要求が増加し、いわゆるモンスターペアレンツ問題が根深くなっていると感じます。

深刻!カスハラが及ぼす影響

厚生労働省「カスタマーハラスメント対策 企業マニュアル」(令和3年度版)によると、厚生労働省が行った20〜60代の一般労働者8000人を対象にした労働者調査において、過去3年間にカスハラを受けたことがある労働者の割合は、全体の約15%となっています。カスハラの内容としては「長時間のクレームや同じ内容を繰り返すこと」52.0%、「侮辱、ひどい暴言、名誉棄損」46.9%が多くなっており、「著しく不当な要求(土下座の強要、金品の要求等)」(24.9%)も見られます。
カスハラを受けた後の従業員の行動に関する調査では、「会社の上司に相談した」が48.3%と、最も高く、約半数が上司に相談をしていることが分かります。しかしながら「何もしなかった」も24.3%となっており、カスハラを受けても、だれにも相談せず、対策もとらないまま働き続けている従業員が一定数いることがわかります。
また同調査で、顧客から著しい迷惑行為を受けた従業員の多くが、精神的な影響として、「怒りや不安・不満などを感じた」67.6%、「仕事に対する意欲が低下した」46.7%と回答しています。また、繰り返しカスハラを受けた人の回答では、「眠れなくなった」21.2%、「通院や服薬した」8.8%との回答もあり、カスハラが従業員の心身の健康に深刻な影響を及ぼしていることがうかがえます

2.カスハラするのはこんなタイプ

西岡:当社ではカスハラ対策のセミナーや研修事業を行っていますが、受講者から、カスハラをするのはどんな人なのか?という質問がよくあります。そこで過去の事例等いろいろ調べまして、カスハラ加害者を4つの性格タイプに分類し、タイプごとの性格特性を伝えています。

反町:それは興味深いですね。

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西岡:4つのタイプを順番に説明しますと、
第一は「こだわり・プライド型」で、妥協できない、完璧主義者に多いです。
第二は「自分正義型」で、常に、自分ではなく相手が間違っていると主張します。
第三は「被害妄想型」で、猜疑心が強く、相手の言葉を曲解する傾向があります。
第四は「自己主張型」で、とにかく長時間に渡り自己の正当性を主張します。
実際には、これらの要素が複合的に表れる場合も多いですが、現場でこのようなハラスメントを受けることは従業員にとっては大変な苦痛になると思います。

反町:企業にとっては、従業員をいかにカスハラから守るか、という点が重要ですね。
アフターコロナで旅行や飲食業が活性化していますが、カスハラも増えそうですね。
特に観光は普段顔を合わせない相手との一時的なやりとりなので、後先を考えない観光客が店側に過剰な要求をすることもありそうですね。

3.カスハラにあってしまったら〜カスハラ撃退法

反町:カスタマーハラスメントは、どんなに気を付けていても防ぎようがない場合もありそうですが、もし起こってしまったら、どんなことが有効でしょうか。

西岡最も重要なことは法的な知識を持つことです。理不尽な要求が出た時に、そのまま相手の要求に従う、もしくは過剰に謝罪し続けるといった行為は、ますます相手をつけあがらせ、状況の悪化を招きます。ですから、そのような場合に備えて、前もって法的な知識や、対処法を身に着けておくことがとても重要です。

反町:具体的にはどのような知識になりますか?

西岡刑法的な見地でものを見る力ともいえますね。
例えば、店側が繰り返しお帰りくださいと伝えているのに長時間居座っている場合は、不退去罪に該当する場合があります。また、土下座しろなどど店側に要求する行為は、強要罪にあたる可能性があり実際に逮捕されるケースも出ていますね。殺すぞ!と凄んできたら、脅迫罪に該当する場合もあります。誠意を見せろなどど言い、具体的な金銭の要求があるような場合、それは恐喝罪に該当することもあり得ます。どの場合でも、加害者の行為を冷静に見て、場合によっては警察に通報するということも考えなければいけません。

反町:お客さんだから許されるということではなく、弁護士や警察の視点から見たら、明らかに犯罪行為であるというものがありますね。

西岡:法的な知識があると、何かを言われてもパニックにならず、ある程度心に余裕が生まれるので、毅然とした対応ができるようになります。逆に、法的な知識がある人が対応すると、加害者もそれを察して、強く出てこなくなる場合が多いです。もちろん知識を詰め込むだけではダメなので、それらをどう活用するか、実践的な対応方法を学んでいくことが大切なんですね。私たちはそういった課題をお持ちの企業に対して様々なコンサルティングやセミナー事業を展開しています。

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企業の取組が急務!

令和2年度 厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査 報告書」によると、20〜60代の一般労働者8000人へのアンケートの回答で、カスタマーハラスメントに関する取組として勤務先の企業が実施しているものとしては、「特にない」(57.3%)の割合が最も高く、次いで「相談体制の実施」(27.5%)が高くなっています。業種別にみると、「医療、福祉」、「金融業、保険業」、「宿泊業、飲食サービス業」、「生活関連サービス業、娯楽業」などでの取組割合が高い結果となっています。
同調査では、カスハラを受けた場合の勤務先の対応について、「あなたの要望を聞いたり、問題を解決するために相談にのってくれた」48.6%、「あなたに事実確認のためのヒアリングを行った」32.2%と続きますが、次に多いものとして、「特に何もしなかった」19.4%があり、約2割のケースで、企業がカスハラ問題に対応していないということがわかります
従業員の心身に深刻な影響を及ぼすカスタマーハラスメント。放置すれば、従業員のメンタル問題の深刻化や、休職・離職件数の増加につながっていくものと考えられます。取り組みができている企業の割合はまだ半数程度にとどまっているため、できるだけ早く、従業員をリスクから守るためのさまざまな対応が求められます

4.顧客対応の場で今すぐできるカスハラ予防

反町:接客の現場などでカスハラから身を守る、カスハラ予防の観点で、すぐにでもできることがあれば教えていただきたいのですが。

西岡:当社の調査で、カスハラ加害者から狙われやすい人の特徴として、声が小さく弱弱しい人、姿勢が悪く猫背の人、相手の目を見ないで話す人という3点があります。ハラスメントをする側にしたら、弱そうに見える相手の方がいいわけです。ですから、逆に、声、姿勢、視線の3つを注意して、堂々とした態度で、印象をよく接することでハラスメント予防も期待できるのではないかと思います。

反町:なるほど!

西岡:しかし残念ながらそれでもハラスメントが起こる場合があります。その場合は、一人で耐えたり戦ったりすることは絶対にやめてください。危険な場合もあるので、そのときは迷わず周りに助けを求めたり、その場を離れる、もしくは逃げる等対処してほしいと思います。そして迅速に警察や弁護士に相談することが大切です。

反町:企業の責任として、カスハラを現場の問題と切り離すことなく、組織として最優先で対応することが重要ですね。カスハラにあった従業員からの相談や心のケアについてもしっかりとした体制づくりが求められますね。

5.読者へのメッセージ

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反町:カスタマーハラスメント対策で、企業がすべきことの1つに研修があります。現場の従業員に法的な知識や、具体的な対応ノウハウを伝える研修をぜひ実践してください。
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社長対談 第1回は

「パワーハラスメント 企業がとるべき対策とは」です。こちらもぜひご覧ください。

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