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オンラインハラスメントとは?行為の実例や被害者・加害者にならないための予防策を紹介
本コラムではオンラインハラスメントの種類や事例、原因、対策などについてご紹介いたします。 オンラインハラスメントは決して他人ごとではなく、誰もが被害者・加害者になり得ます。リモートワークの導入により、これまでとは異なる環境、方法で働くことで、コミュニケーション不足や距離感がつかめない等の弊害も生まれますので、ハラスメント防止について解説いたします。
- おすすめの方
- パワハラ防止対策研修を実施・運営されるご担当者様
- 社内相談窓口を設置しているが、情報漏えいなどの懸念から心理的に利用しづらく利用者も少ないとお悩みの人事のご担当者様
- 社内にハラスメント対策のノウハウがなく発生時の適切な対応が分からない管理職様
1.オンラインハラスメントとは?
オンラインハラスメントとは「インターネット上における中傷や嫌がらせ」と言われているとおり、様々な種類のハラスメントが問題となっています。
スマートフォンの普及とともにSNSの利用者が増えたことで、これまでもこの問題は取り沙汰されておりましたが、近年、新型コロナウイルスの影響を含めたリモートワークの普及により、これまでと違ったタイプのハラスメントが増えています。
代表的なものとして「テレワークハラスメント」や「リモートハラスメント」があげられ、オンラインミーティングの場でこれらのハラスメントが生じています。ただし、実際には対面で起きているハラスメントと何ら変わりはなく、決して特別なことではないことが分かります。
2.オンラインハラスメントの実例
2-1 セクハラ行為にあたる例
リモートワークが普及したことに伴い、会議やミーティングもオンラインで行われる機会が増えました。
便利ではありますが、WEBカメラの使用によって、セクハラと捉えられる行為が誘発されるリスクが高まっています。
本人の姿だけではなく、部屋の様子も少なからず見えるため、プライベートな部分に関して、性的と捉えられるハラスメントが起きやすくなります。
ここではオンライン上で起こるセクハラ行為の事例を紹介します。
2-1-1 事例
- 室内の様子について執拗に言及する。
- 全身をWEBカメラに映すことを求める。
- テレワーク中の化粧の有無や、服装について言及する。
- 容姿や体型について言及される。
- 1対1でのオンライン飲み会に誘われる。
- SNSでの個別のつながりを求められる。
- 業務に関係がない二人きりでのWeb会議、通話、チャットを強要される。
- 業務上必要がないのに自宅の場所を聞き出したり、訪問しようとしたりする。
2-2 パワハラ行為にあたる例
リモートワークでは意図的に確認しなければ、相手の状況を知ることができず、状況確認や業務指示の連絡が増えがちになります。これが過剰になればハラスメントの要因ともなり得ます。
ここでは、オンライン上で起こるパワハラ行為の事例を紹介します。
2-2-1 事例
- 業務時間外のメールやチャットへの即返信を要求する。
- メールやチャット等に対してのレスポンスが少し遅れただけで、さぼっているのかと怒られる。
- 多数の従業員をCCに入れたうえで、部下に人格否定と捉えられる文言を加えたメールを送信するなど、不相当な態様でのメール指導。
- WEBカメラでテレワーク中の姿や部屋の中の撮影を強要する。
- リモート打ち合わせの場で、ほかの人もいるなか仕事について厳しく叱責する。
2-3 その他のハラスメントにあたる例
プライベートへの過度な介入がハラスメントに該当することがあります。
ここではセクハラ・パワハラ以外の事例を紹介します。
2-3-1 事例
- プライベートについて指摘・指導される。
- 同居者(子どもやペット当)の声や生活音などについて不快感を示される。
- 室内を映すよう求められ、部屋の様子について指摘するなど業務に関係のない発言がある。
- カメラに映りこんだ家族について、業務に関係のない発言がある。(紹介の強要等)
- 業務時間外のオンライン飲み会への参加をしつこく求められ、長時間続ける。
- WEBカメラやマイクの常時ON、WEB会議の常時ログインを要求される。
- 過剰な報連相を求められる。
3.日本国内の話ではない!? 国際的な検査結果
国際NGO「プラン・インターナショナル」が2020年に行った、オンラインハラスメントについて調査結果が公表されています。
今回、世界31カ国約1万4,000人の15〜25歳までの若年女性を対象に調査を行った結果、ネット上の深刻なハラスメント被害が明らかになりました。
回答者のうち、若年女性の58%がオンラインハラスメントを経験、そのうち24%が「身体的に安全でない」と感じ、42%が「自尊心または自信を失っている」、同じく42%が「精神的または感情的にストレスを感じている」との結果になっています。
被害を受けたSNS別では、Facebook 39%、インスタグラム23%の順で多く、「とても頻繁にハラスメントを受けている」との回答は19%に上り、ハラスメントを理由にSNSの利用をやめた若年女性もいました。
性的マイノリティであると回答した若年女性のうち42%は、セクシュアリティーを理由にハラスメントを受けていると答えました。
被害に遭った女性たちからは、「加害男性が自分についての詳しい情報をどうやって見つけたのか分からず、住所を探し出して家に来るのではないかと心配になった」「ハラスメントはエスカレートしており、やめさせることも、対処も難しい。精神的に追いつめられるので本当に憂鬱」といった訴えが上がっています。
3-1 オンラインハラスメントに対する日本の実情
日本で501人の15〜24歳までの若年女性を対象に行った調査結果では、「SNSで何らかの形でオンラインハラスメントを経験したことがある」と回答したのは25%で、世界の平均を大きく下回りました。「オンラインハラスメントという言葉を聞いたことが一度もない」と回答した若年女性が40%に上ることから、調査を行ったプラン・インターナショナル・ジャパンは「認識の低さが、被害の理解や報告の件数にも影響を与えているものと考えられる」と指摘しています。約半数が、自分または知り合いの若年女性が「とても頻繁に」あるいは「頻繁に」オンラインハラスメントを受けていると答えました。
自分自身が受けた、又は周囲で「受けた」と聞いたことがあるオンラインハラスメントの種類では、「罵り言葉及び侮辱的な言葉」、セクハラ、体型批判などの回答が目立ちました。性暴力をふるうといった脅迫行為もあったそうです。
SNS別の被害では、Twitter(現X)が16%で最多、次いでインスタグラムが7%との結果でした。
近年はSNSに関連して、実際に事件に巻き込まれたといったニュースを見聞きすることも増えましたが、特に匿名性の高いSNSの場合、危機感や認識の低さから、オンライン上だけではなく現実社会でもリスクが高くなるため注意が必要です。
- 参考:ハフポストNews
4.なぜオンラインハラスメントが起こるのか?
オンラインハラスメントが起こる原因としてはいくつかあげられます。
リモートでの管理に慣れていない
対面であれば、直接相手の反応やしぐさを感じとれる分、様子をみながら対応できますが、オンラインだと表情の変化や空気感が伝わりづらく距離感をつかめないためにコミュニケーション不足になりがちです。また、相手の行動や仕事の進捗状況を把握しづらく、「仕事をさぼっているのではないか?」と過剰に気にしてしまうことにより、結果的にハラスメント行為と捉えられてしまうことがあります。
公私混同になりやすい
それぞれが自宅などからアクセスしているため、仕事とプライベート空間の境界線が曖昧になってしまいます。そのため、距離感が近くなりがちですし、出社するときと比べ、オンとオフの境目も曖昧になりがちです。結果、相手に悪意や明確な意図がなくても、ついプライベートに踏み込みすぎてしまうなど、不快感を抱かせてしまうことがあります。
5.被害に遭わないために気をつけること
オンラインハラスメントの被害に遭わないためにハラスメントを誘発しないための対策を行うことが必要です。
たとえば、WEBカメラやマイクを利用する際に気を付けることや、オンラインならではのコミュニケーションの取り方など、普段から自分自身で対応できることはいくつもあります。
下記のポイントを参考に、身の回りや行動、周囲の状況に気を配るなど、被害に遭わないための環境をつくっていきましょう。
5-1 服装、音、カメラの場所に気を付ける
WEBカメラにプライベートな部分が必要以上に入り込まないように気を付けるだけで、オンラインハラスメントの多くを防ぐことができるでしょう。
- 服装や身だしなみを整え、外出するときと変わらない姿勢で過ごすよう心がける。(寝ぐせを整える、部屋着から着替える等)
- カメラの背景に私生活に関するものを映さない、もしくはバーチャル背景を利用する。
- 話題にして欲しくない事象はカメラに映りこまないようにする。(個人的な趣味に関する物や個人情報に関する物等)
- 発言時以外はミュートにして、なるべく生活音が入らないようにする。(子どもやペットの声等)
- 必要時以外はカメラをオフにする。
5-2 相手に随時業務の進行状況を報告する
上司がリモートで業務を行うことに慣れておらず、部下の管理方法や、コミュニケーションの取り方が分からないため、意図せずハラスメントが起こることも考えられます。
「きちんと業務を行っているのか?」といった上司の不安を取り除くことでハラスメント防止策につながる可能性があります。たとえば、定期的に「報告・連絡・相談」をおこなう、チャットやメールに対して素早く反応するなど、業務の進捗状況が上司に伝わるように工夫しましょう。
6.自分自身が加害者にならないために
オンラインハラスメントの怖いところは、被害者になる可能性だけではなく、誰でも意図せず加害者になり得ることです。たとえ自分自身に悪意がなかったとしても、自分の行動や言動により、相手が不快な思いをする可能性があります。相手がどう感じるか想像して行動するなど、相手への配慮が重要です。また、オンラインは対面と違い、相手の状況が分かりづらい、表情が読み取りにくい等、コミュニケーションが取りづらく距離感もつかみにくいため、普段より過干渉になってしまう等の可能性があります。ここでは加害者にならないために気を付けるべきことは何か、ポイントをご紹介します。
6-1 配慮ある言動を心がける
基本的に対面時の対応と注意すべき点は同じです。但し、リモートの場合対面時と比べて、相手の反応が分かりづらいために普段よりも強い口調になってしまうなど、相手に威圧感を与えてしまう可能性があります。また、業務に関わりのないことに触れていないか、指導や注意が過剰になっていないか、自分自身の言動について、発言前に考えることが大切です。
ただ、いくら気を付けても自分だけでは気づくことができないこともあり得ます。職場のメンバーに、自分の言動に問題があったときには指摘してもらえるよう協力をお願いするとよいかもしれません。
あくまでも仕事上の関係であることを意識し、相手のプライベートに踏み入るリスクを回避しましょう。
7.自社での発生を防ぐために企業ができること
2019年5月に「改正労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)」が国会で成立し、企業に対してハラスメント対策の強化が義務付けられました。この改正法は大企業で2020年6月、中小企業では2022年4月より施行されています。
パワハラ防止法とは?22年4月の中小企業対象化を踏まえた施策を見る
ハラスメントは対面時だけではなく、リモートワーク等、オンライン上でもすでに多く発生しており、決して他人ごとではありません。
近年多くの企業で導入されたリモートワークですが、実施するためのルールを整備するなど、ハラスメントの発生を防ぐための対応が必要不可欠です。どのような対策を行うのがよいか、いくつかご紹介します。
- 業務の進捗確認が過剰にならないよう、頻度をルール化する。
- カメラやマイク機能の使い方をルール化する。
- チャットやメールの返信を、緊急時以外は業務時間外に求めないようにする。
- 1対1の状況をなるべく作らないようにする。
- 相談窓口を用意する。
- 会社全体でオンラインハラスメントについて理解するための研修を受ける。
- 窓口担当者への研修を行う。(相談者のプライバシー保護等、情報の取扱に関すること)
7-1 リモートワークに関する就業規則を制定
新型コロナウイルスの影響で、在宅勤務(リモートワーク)を導入する企業が増えました。ただし、これまでの出社勤務時の対応と異なる部分が多く、導入する際のルール整備は必要不可欠です。就業規則は、多くの企業で出社を想定している部分も多いと思われることから、リモートワークにも対応できる就業規則を制定又は変更することが必要です。例えば、リモートワーク時のハラスメント防止の規定をし、しっかりと周知しましょう。規定することで、リモートワーク時のどのような行為がハラスメントに該当するかが明確になるため、加害・被害の抑制に役立ちます。規定内容の具体的な例としては、「相手の服装や身だしなみについて指摘しない」、「業務に関係のない言動は慎む」、「緊急時以外は業務時間外のチャットやメールの返信は不要とする」などが考えられます。なお、規定の方法として、現在の就業規則そのものを改定するか、リモートワーク規程等のように個別の規程を設けるといった手段が考えられます。
7-2 社内周知を徹底
ハラスメントが起こる職場は、従業員にとって決して働きやすい環境とはいえず、モチベーション低下の要因となってしまいます。また、企業のイメージが低下することにより、人材流出や人材が集まらない等、人手不足に陥る可能性があります。
そのような状況にならないよう、全従業員へハラスメントについて周知・啓発を行い、また、会社のハラスメントに対する姿勢を示すことで、従業員の定着へつながることが期待できます。
7-3 相談窓口を設置
パワハラ防止法の施行の施行により、企業に「パワハラ防止のための措置」を講じることが義務化されています。
これに伴い、厚労省が告示している「職場にけるハラスメント関係指針」の中で、ハラスメント相談窓口設置と労働者へ周知することが明記されました。また、相談窓口の担当者は、相談者に対し、相談内容や状況に応じ適切な対応ができるようにするため、研修を行うなどの措置を講じることが必要とされています。
8.オンラインハラスメント被害を感じた際の対処法
基本的には職場でパワハラやセクハラを受けた場合と同様の対処を行いますが、オンライン上で感じた場合は対面の時よりも細かい記録が必要になる場合もあります。
ここでは対処法についてご紹介いたします。
8-1 被害の証拠を揃える
ハラスメントと思われる行為をされた場合は、証拠の確保をしましょう。
いつ、どこで、誰(加害者)が、どのように(内容)行ったのか、なぜ行われたのかをできる限り詳細に記録しておきます。その際、会社や上司等の対応、その場に居合わせた人などについても残しておきましょう。
場合によっては、メモだけではなく、録音(ICレコーダーやスマートフォンのボイスメモ機能)や録画、写真(スクリーンショット)などにも撮っておきます。
8-2 相談する
まずは直接の上司等に相談すべきですが、対応してもらえない場合や、上司が加害者である場合は、加害者を監督する立場にある管理監督者や人事部門等に相談して改善を求めます。それでも加害者が一向に態度を改めず、会社として改善のための対応(加害者のハラスメント抑制や異動など)もない場合は相談窓口や、労働組合がある場合は組合へ相談しましょう。
上記の方法でも改善されない場合、行政機関(労働局の窓口等)に相談します。
9.従業員からオンラインハラスメント
従業員からオンラインハラスメント被害の申し出があった場合の対応として重要なポイントを紹介します。
- 相談者や関係者への印象や先入観を捨て、公正中立な姿勢で受け入れ、プライバシーを尊重し秘密を厳守する
- 相談者がどのような解決を望んでいるかを把握し、尊重する
- 相談者を責めるような言動はしない
- 対応が困難と思われる場合は専門家につなげる
まとめ
オンラインハラスメントの種類や事例、原因、対策などについてご紹介しました。
オンラインハラスメントは決して他人ごとではなく、誰もが被害者・加害者になり得ます。
リモートワークの導入により、これまでとは異なる環境、方法で働くことで、コミュニケーション不足や距離感がつかめない等の弊害も生まれます。
常に相手に対して配慮の気持ちを忘れずにコミュニケーションをとることが重要です。
ハラスメントの対策を行い、リモートでも働きやすい職場づくりを心がけましょう。
監修者情報
林 雄次
保有資格等 | 中小企業診断士、行政書士、システム監査技術者、ITストラテジスト等、250以上の資格を保有。 | |
---|---|---|
講師領域 | 基本情報技術者試験対策研修、宅地建物取引士研修、ビジネススキル研修、ハラスメント防止研修 | |
プロフィール | 大手IT企業でシステムエンジニアとして1,000社以上の中小企業の業務効率化・IT導入に従事。在職中に完全テレワークの社労士事務所を立ち上げ、2年の兼業の後に独立。 現在は開業社会保険労務士として大企業から中小企業まで幅広い顧問先を抱え、業務効率化やIT導入の支援の両輪で活躍。 週刊東洋経済やプレジデント、各種Webメディアに取材記事掲載。 著書『社労士事務所のDXマニュアル』 |
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