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【令和5年度最新版】社員研修・DXリスキリングに使える助成金を人事・研修担当者向けにわかりやすく解説!
本コラムでは、企業が従業員様のスキルアップのために投資を行う場合に助成される「助成金」のお話をさせていただきます。
製品やサービスの品質を保持・向上させ、生産効率を高めるためには、従業員の皆様が持てる力を十全に発揮することが欠かせません。今後も活躍していく人材を育成するには、職務に必要なスキルや達成期限などを含む計画的な人材育成が重要です。
厚生労働省の助成金は、こうした人材育成に取り組む企業を支援しています。職業能力開発計画を通じて、自社の強みを伝えることや、従業員の成長を願う気持ちは、従業員や就職活動を行う方々にも確実に届くでしょう。
- おすすめの方
- 従業員の能力を伸ばし、生産性向上を目指す経営者・管理者の方
- スキル向上をアピールし採用ブランディングしたい人事担当の方
1.企業の研修状況と従業員の期待との乖離
企業の研修状況と従業員の期待には、現状では大きな乖離が存在していることが指摘されています。この乖離は、企業と労働者の意識の相違に起因し、生産性や競争力向上における課題となっています。
まず、企業の半数以上(50.5%)がOFF-JTまたは自己啓発支援に支出しているものの、事業内職業能力開発計画を作成していない企業が77.7%と非常に高い割合を占めています。これは、企業が従業員のスキルアップや人材育成の重要性を認識していないことが示唆されます。
また、能力開発や人材育成に関する問題点として、「指導する人材が不足している」(60.5%)と「人材育成を行う時間がない」(48.2%)という意見が多く見られます。これらの問題は、企業が十分な研修や教育を提供できていないことを示しています。
一方、労働者の期待に目を向けると、93.2%の労働者が向上させたいスキルがあると回答しており、自己研鑽に積極的な姿勢が伺えます。しかしながら、OFF-JTを受講した労働者全体の割合はわずか30.2%にとどまっています。この数字からも、企業の研修提供と労働者の期待の間に大きなギャップがあることがわかります。
企業と労働者の意識の乖離は、従業員のモチベーション低下や定着率の悪化につながる恐れがあります。また、企業の競争力や生産性が低下し、採用力やブランディングにも悪影響を及ぼす可能性があります。
この問題を解決するためには、企業が従業員のスキルアップや人材育成に重要性を認識し、事業内職業能力開発計画の策定や指導する人材の確保、研修時間の確保などについて取り組むことが求められます。これにより、企業と労働者の意識の乖離を縮めることができ、従業員のモチベーション向上や定着率の改善が期待できるでしょう。また、企業の競争力や生産性の向上、採用力やブランディングの強化にも寄与することが予想されます。
さらに、企業は労働者の意見やニーズを定期的に把握し、それに応じた研修や教育プログラムを設計・実施することが重要です。労働者のニーズに応える柔軟な研修体制を構築することで、労働者のスキルアップが促進され、働きがいのある職場環境を実現できるでしょう。
また、政府や業界団体の支援を活用し、企業の人材育成に対する取り組みを強化することも検討するべきです。助成金を利用することで、企業は人材育成に必要な負担を軽減し、より効果的な研修プログラムを提供できる可能性があります。
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2.助成金制度
2-1 人材開発支援助成金
2-1-1 人材開発支援助成金とは
人材開発支援助成金は、労働者のキャリア形成の全過程を段階的で組織的な職業能力開発により効果的に促す目的で設けられており、事業主が従業員に対して職務に関連する専門知識や技術の獲得を目指す職業研修等を計画通りに実施する際、研修費用や研修期間中の賃金の一部などを助成する制度です。
2-1-2 人材育成支援コース
2-1-2-1 経費助成率
①雇用保険者(有期契約労働者等を除く)への研修:45%助成
②有期契約労働者への研修:60%助成
③有期契約労働者へ研修実施後、正社員登用:70%助成
これらの条件に加えて、追加加算が適用されます。
追加加算の要件は、以下の2点のいずれかを満たすことです。
- 研修後、基本賃金が5%以上昇給すること
- 研修後、資格手当として基本賃金から計算して3%以上の手当を付与すること
特に、有期契約労働者への研修と正社員登用を組み合わせることで、助成金の割合が最大70%に上がり、さらに追加加算の30%が適用されることから、企業にとって大きなメリットがあります。
支給対象となる訓練 | 経費助成 | 賃金助成 (1人1時間当たり) |
|||
---|---|---|---|---|---|
賃金要件又は資格等手当要件を満たす場合 | 賃金要件又は資格等手当要件を満たす場合 | ||||
人材 育成 訓練 |
雇用保険被保険者(有期契約労働者等を除く)の場合 | 45% (30%) |
+15% (+15%) |
760円 (380円) |
+200円 (+100円) |
有期契約労働者等の場合 | 60% | +15% | |||
有期契約労働者等を正規雇用労働者等へ転換した場合 | 70% | +30% | |||
認定実習併用職業訓練 | 45% (30%) |
+15% (+15%) |
|||
有期 実習型 訓練 |
有期契約労働者等の場合 | 60% | +15% | ||
有期契約労働者等を正規雇用労働者等へ転換等した場合 | 70% | +30% |
[厚生労働省資料より抜粋]
2-1-2-2 経費助成上限額
①10時間以上100時間未満の研修:15万円/名
②100時間以上200時間未満:30万円/名
③200時間以上:50万円/名
さらに1事業所が1年度に受給できる助成金額は1,000万円が上限になります。
2-1-2-3 賃金助成
研修を受けている間の賃金助成として1時間あたり760円の賃金助成が追加でされます。
2-1-2-4 対象経費
社内研修の場合
●部外の講師への謝金・手当
所得税控除前の金額(旅費・車代・食費等は含めない。)
※実訓練時間1時間当たり1万5千円が上限(消費税込み)。
※謝金以外の日当は社内の支出規定がある場合のみ1日当たり上限3千円まで計上可。
●部外の講師の旅費
勤務先又は自宅から訓練会場までに要した旅費(車代・食費等は含めない。)
※1訓練あたり、国内招へいの場合は5万円、海外からの招へいの場合は15万円が上限
※東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、京都府、大阪府及び兵庫県以外に所在する事業所が同道県外から招へいする講師に限る。
※鉄道賃(グリーン料金除く)、船賃(特1等除く)、航空賃、バス賃及び宿泊費とする。宿泊費は1日当たり上限1万5千円まで計上可。
●施設・設備の借上費
教室、実習室、ホテルの研修室等の会場使用料、マイク、OHP、ビデオ、スクリーン等訓練で使用する備品の借料で、助成対象コースのみに使用したことが確認できるもの
●学科や実技の訓練等を行う場合に必要な教科書・教材の購入費
※教科書については、頒布を目的としていて発行される出版物のみ
●訓練コースの開発費
学校教育法の大学、高等専門学校、専修学校又は各種学校に職業訓練の訓練コース等を委託して開発した場合に要した費用及び当該訓練コース等の受講に要した費用
社外研修の場合
受講に際して必要となる入学料・受講料・教科書代等、あらかじめ受講案内等で定め ているもの 国や都道府県から補助金を受けている施設が行う訓練の受講料※や受講生の旅費等は対象外 です。
※ 都道府県や(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構の職業能力開発施設が実施する訓練(高度職 業訓練及び生産性向上人材育成支援センターが実施する訓練を除く)、都道府県から認定訓練 助成事業費補助金(広域団体認定訓練助成金を除く)を受けている認定職業訓練、本助成金の 職業訓練実施計画届を提出している事業主団体等が実施する訓練の受講料、教科書代等。
2-1-2-5 活用イメージ
正社員5名と有期契約社員5名が研修を受講イメージ
研修費用は1名あたり10万円とした場合
・正社員5名:10万円×5 = 50万円
・有期契約社員5名:10万円×5 = 50万円
合計研修費用:100万円
研修期間賃金助成:
・研修時間:3時間×4日=12時間
・正社員5名:760円×12時間×5人 = 45,600円
・有期契約社員5名:760円×12時間×5人 = 45,600円
合計賃金助成:91,200円
研修費助成:
・正社員:50万円×45% = 22.5万円
・有期契約社員:50万円×70% = 35万円
資格取得手当助成:
・正社員2名:(10万円×15%)×2人 = 3万円
・有期契約社員2名:(10万円×30%)×2人 = 6万円
助成金合計:
研修費助成+資格取得手当助成+研修期間賃金助成 = 22.5万円+35万円+3万円+6万円+91,200円 = 67.41万円
手元に残る金額:
研修費用合計 - 助成金合計 = 100万円 - 67.41万円 = 32.59万円
100万円の研修を32.59万円で受講できるシュミレーションです。
2-1-3 事業展開等リスキリング支援コース
2-1-3-1 基本要件
■OFF−JTにより実施される訓練であること
■実訓練時間数が10時間以上※であること
■次の①または ②のいずれか に当てはまる訓練であること ただし、①の事業展開については、訓練開始日(定額制サービスによる訓練の場 合は契約期間の初日)から起算して、3年以内に実施される予定のもの又は6か月以内に実施したものであるものに限る。
①事業展開を行うにあたり、新たな分野で必要となる専門的な知識及び技能の習得をさせるための訓練
②事業展開は行わないが、事業主において企業内のデジタル・デジタルトランス フォーメーション(DX)化やグリーン・カーボンニュートラル化を進める場合に これに関連する業務に従事させる上で必要となる専門的な知識及び技能の習得をさせるための訓練
2-1-4 対象労働者
①助成金を受けようとする事業所が実施する訓練等を受講させる事業主の事業所において、被保険者 であること
②訓練実施期間中において、被保険者であること
③訓練を受講した時間数が、実訓練時間数の8割以上であること
雇用保険加入者であれば、正社員ではなくても受給できる可能性がございます。
2-1-5 助成額・助成率
①経費助成:75%(大企業は65%)
②賃金助成(1人1時間あたり):960円
2-1-6 支給限度額
①10時間以上100時間未満の研修:30万円/名
②100時間以上200時間未満:40万円/名
③200時間以上:50万円/名
さらに1事業所が1年度に受給できる助成金額は1億円が上限になります。
2-1-7 賃金助成
研修を受けている間の賃金助成として1時間あたり960円の賃金助成が追加でされます。
2-1-8 対象経費
社内研修の場合
●部外の講師への謝金・手当
所得税控除前の金額(旅費・車代・食費等は含めない。)
※実訓練時間1時間当たり1万5千円が上限(消費税込み)。
※謝金以外の日当は社内の支出規定がある場合のみ1日当たり上限3千円まで計上可。
●部外の講師の旅費
勤務先又は自宅から訓練会場までに要した旅費(車代・食費等は含めない。)
※1訓練あたり、国内招へいの場合は5万円、海外からの招へいの場合は15万円が上限
※東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、京都府、大阪府及び兵庫県以外に所在する事業所が同道県外から招へいする講師に限る。
※鉄道賃(グリーン料金除く)、船賃(特1等除く)、航空賃、バス賃及び宿泊費とする。宿泊費は1日当たり上限1万5千円まで計上可。
●施設・設備の借上費
教室、実習室、ホテルの研修室等の会場使用料、マイク、OHP、ビデオ、スクリーン等訓練で使用する備品の借料で、助成対象コースのみに使用したことが確認できるもの
●学科や実技の訓練等を行う場合に必要な教科書・教材の購入費
※教科書については、頒布を目的としていて発行される出版物のみ
●訓練コースの開発費
学校教育法の大学、高等専門学校、専修学校又は各種学校に職業訓練の訓練コース等を委託して開発した場合に要した費用及び当該訓練コース等の受講に要した費用
社外研修の場合
受講に際して必要となる入学料・受講料・教科書代等、あらかじめ受講案内等で定め ているもの 国や都道府県から補助金を受けている施設が行う訓練の受講料※や受講生の旅費等は対象外 です。
※ 都道府県や(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構の職業能力開発施設が実施する訓練(高度職 業訓練及び生産性向上人材育成支援センターが実施する訓練を除く)、都道府県から認定訓練 助成事業費補助金(広域団体認定訓練助成金を除く)を受けている認定職業訓練、本助成金の 職業訓練実施計画届を提出している事業主団体等が実施する訓練の受講料、教科書代等。
2-1-9 活用イメージ
企業がDX研修10日間コース(OFF-JT)を社員5名が受講する場合
- 訓練内容:「DX研修集合研修」(OFF-JT)訓練期間10日間(1日8時間×10日=80時間)
- 訓練費用:入学金:1万円×5人=5万円
受講費用:12万円×5人=60万円
合計:65万円 - 助成金:訓練費用65万円×75%=48.75万円
訓練期間賃金80時間×960円×5人=38.4万円
合計 87.15万円の助成金を受給。
65万円の研修に対して87.15万円の助成金が受給できるので、22.15万円プラスで研修を受講いただけます。
3.キャリアアップ助成金との併給も可能
有期契約社員やパートタイム労働者などの非正規雇用者を研修を通じて正規雇用に登用する場合、人材育成助成金に加えて、キャリアアップ助成金の併給が可能です。
キャリアアップ助成金は、基本的な支援に加えて、研修に対する追加支援も含まれており、1人当たり最大68万円の助成を受けることができます。
4.まとめ
これからの時代、企業は従業員のスキルアップのために積極的な投資を行うことが求められます。その理由は以下のとおりです。
まず、市場ニーズが急速に変化する中、生産性の向上は企業が生き残るための鍵となります。そのためには従業員が常に新しい技術や知識を習得し、グローバル社会における競争力を身に着けることが必要です。
次に、年功序列、終身雇用制が崩れ、人材の流動化が始まる中、より優秀な人材を獲得するために従業員への投資は企業の魅力を高める上で必須といえるでしょう。
さらに、企業の人材育成は、ひいては日本の国際競争力向上や地域経済活性化の貢献に繋がり、結果として国内企業全体にプラスの効果をもたらします。
ようやく国が重い腰をあげて、人への投資に本気で動き出しました。人材育成を計画する会社に対してさまざまな助成を打ち出しています。企業はこれらの助成金を最大限活用し、コストを抑えて効果的な投資を行うチャンスです。
5.参照資料
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執筆者情報
鈴木真知子
東京事業所所長
助成金についてのより詳しいご案内はこちらから |
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