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VUCAとは?VUCA時代に必要なるリーダーシップと人材育成
本コラムでは、VUCAについて分かりやすくご説明をしつつ、VUCA時代に特に必要となるビジネススキルやマネジメントスキルについてご紹介をしていきます。VUCAの時代をきちんと理解したい方、今の時代に必要な人材育成を行いたい方におすすめのコラムです。
- おすすめの方
- VUCA時代の意味や背景を理解したい方
- VUCA時代に必要なビジネススキルについて抑えておきたい方
- VUCA時代に必要とされるマネジメントスキルを社員に身に着けてほしい人事担当者の方
1.VUCAとは?何の略?
VUCAとは、環境が目まぐるしく変化し、将来の予測が困難な状況のことを言います。Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の4つの頭文字をとった造語です。もともと1990年代に、核兵器ありきだった冷戦が終結して戦略が不透明化した状況を指す軍事用語として発生した言葉ですが、2010年代になり、国際化やIT技術の発達などによって目まぐるしく変化するようになった状況を指すビジネス用語としても用いられるようになりました。
1-1 Volatility 変動性
Volatility(変動性)は、物事が急速に変わりやすい状況のことを言います。例えばIT技術の発展によるSNSの普及やマーケティング方法の変化、コロナウィルスの感染拡大によるリモートワークの広がりなど、今の時代は様々な状況が急速に変化していきます。このような状況の変わりやすさを表すのがVolatility(変動性)です。
1-2 Uncertainity 不確実性
Uncertainty(不確実性)は、政治、気候変動、自然災害など、何が起こるか不確実な状況を言います。例えば新型コロナウィルスのような未知のウィルスが突如蔓延したり、大規模な地震が突然起きたりなど、あらゆる問題が唐突に起こり、今の時代は将来の予測が非常に困難になっています。
1-3 Complexity 複雑性
Complexity(複雑性)とは、あらゆる要素が絡み合い、理解するのが困難な状況を言います。グローバル化が進む現代において海外とビジネスをする際も、日本で通用したビジネスのやり方が海外では通用しないこともありますし、法律や文化も各国によって異なります。また、国内だけでビジネスをする際には必要なかった輸出入の手続きも当然ながら必要になる上に、関係者も多様になってきます。このようにグローバルなビジネス環境では、国内のみならず海外の慣習、ルール、ニーズ、文化などあらゆる情報を収集し活かすことが必要となっており、ビジネスが複雑化しています。
1-4 Ambiguity 曖昧性
Ambiguity(曖昧性)とは、一つのものの捉え方が複数ある、理解が困難な状況を言います。例えば、以前は多くの家庭がテレビや新聞から情報を収集していたため、その媒体でのマーケティングが可能でしたが、今は消費者それぞれがSNSや動画共有サイト、口コミ情報サイトなどあらゆる媒体を選び情報を収集するようになっています。このように、消費者の価値観や行動が多様化し、従来使えていた成功手法が通用しない時代になってきています。
2.VUCAが注目されている背景
2-1 背景
先に述べたようにビジネスにおいてVUCAという言葉が注目されるようになったのは2010年頃からです。その背景として、企業を取り巻く環境が、不確実で変動性が高く、曖昧なものになってきたということがあげられます。ITの発展や国際化によるビジネスの複雑化と合わせ、東日本大震災や新型コロナウィルスの感染拡大など、2010年代になると、予測できなかった出来事が次々と起こるようになりました。そのため、この時代を今までと性質が異なる時代として認識する必要性が高まり、VUCAの時代という言葉が一般的なビジネス用語として用いられるようになりました。
2-2 代表的な事例
代表的な事例としては、スマートフォンやSNSの普及が挙げられます。2010年代にはスマートフォンが爆発的に増えました。そちらに伴い、どこにいてもインターネット上の情報にアクセスでき、自分の意見を共有できる時代になりました。その結果、今ではfacebookやTiktokなどのソーシャルメディアや、YouTubeなどの動画共有プラットフォームなどの利用が非常に増え、営業やマーケティングの手法にも変化が出ています。以前はAIDMA(「認知」、「関心」、「欲求」、「記憶」、「行動」)が主な購買行動モデルとして提唱されていましたが、今では消費者の購買行動が変化し、口コミを「検索」したり、実際に購買した後に自分の感想をSNSで「共有」するなど、新しい要素が次々と生まれています。
さらに、近年急拡大した「シェア経済」も、インターネットやスマートフォンの普及によって促進されたものです。個人がフリマアプリ上で物を売買したり、空いている別荘や自宅の部屋を旅行者に提供したり、空き時間に一般の人が自家用車で他の人を運ぶサービスなどもできています。スマートフォンの普及に加えて、人々の価値観が「所有」から「利用」にシフトしてきたことで、次々と新しいサービスが誕生しています。
3.VUCAの時代を生き抜くために必要なスキル・資質は?
3-1 ビジョンを明確にし行動し続けるマネジメント層の育成
色々な物事が急速に変化し正解が見えないVUCAの時代では、従業員が迷わないように明確なビジョンを決めて、打ち出すことが必要です。変わり続ける環境の中でも、方向性がしっかりと見えていれば従業員は安心し、自分自身がその方向に進むためにできることを考え、自発的に行動をすることができます。そのためにマネジメント層には、ビジョンを決める決断力と、その方向に導く強いリーダーシップが求められています。
3-2 チャレンジし続ける組織風土の醸成
変化の激しい状況下では、過去と同じことを続けていたのでは通用しません。変化し続ける常識や価値観を受け入れ、日々正解がわからない中でもチャレンジを続けていくことが必要となります。そのためには、新しい目標ややり方を肯定的に捉える前向きな風土、失敗を恐れずチャレンジを後押しする風土の醸成が必要です。
3-3 OODA(ウーダ)ループを回せる組織作り
OODAループとは、変化の激しいVUCAの時代に仕事を前に進めていくための迅速な意思決定の手法です。OODAとは、 以下4つの単語の頭文字を取ったものです。
・Observe(観察する) :外部環境を観察し、「生のデータ」を収集する
・Orient(状況を判断する) :「生のデータ」を見て、何が起きているかを理解し、判断する
・Decide(決定する) :判断した状況をもとに、方針や計画、手段を決定する
・Act(動く) :決定した内容を行動に移す
似た言葉でPDCAサイクルがありますが、PDCAサイクルではまず計画を立てるところから始まるのに対し、OODAループでは、計画を立てる前にまず状況の観察と理解から始まります。VUCA時代は状況が複雑で変化が激しいため、まずは目の前の状況をしっかりと観察して判断をし、その上で方針や計画を決定します。なお、状況が変わったときは計画も柔軟に見直す必要があり、OODAループではこの初めの状況理解のフェーズを非常に重視します。
VUCAの時代には、このOODAループを組織全体で意識しながら、常に何が起きているかを注視して、柔軟かつ迅速に対応することが求められています。
4.VUCAの時代に理想的なリーダーシップ・マネジメントを実現するには?
VUCAの時代に理想的なリーダーシップ・マネジメントを実現するには、上述した通り、決断力と、強いリーダーシップが必要となります。さらに、マネジメント層でない人であっても、あらゆる情報を適切に収集・活用する情報処理能力や、複雑な状況下で最適な判断ができる論理的思考力や問題解決力などが求められます。これらのスキルは社内研修によって向上させることができますが、研修をより良いものとしていくために、研修実施後の振り返りと効果検証が大切です。
具体例として、まず理解度チェックテストを行うとよいでしょう。研修の前後で2回行うことで、研修によって理解度がどのくらい向上したのか、また、理解しづらかった点はどこかを把握することができます。また、研修直後だけではなく、研修の2〜3か月後にもテストを実施すると、理解が実際に定着しているかを確認することもできます。また、研修受講後にレポートを書いてもらったり、アンケートを取ることも効果的です。研修によりどのような学びが得られたか、あるいは、どの部分が分かりにくかったかなど率直な意見を確認でき、研修内容の改善に活かすことができます。ぜひ社内研修を効果的に実施いただき、VUCA時代にも活躍できる社員を育成しましょう。
5.まとめ
VUCAの時代は、環境の変化が激しく、次々に色々なことが起こる予測困難な時代です。そんな中、企業が激しい競争に打ち勝ち、成長を続けていくためには、VUCA時代に活躍できる社員を育成することが非常に重要です。組織の中でOODAループをしっかりと回しながら、社内研修を効果的に活用し、新しい挑戦を恐れずチャレンジを続けていけるリーダーと社員を育成していきましょう。
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監修者情報
増澤 祐子 ますざわ ゆうこ
保有資格等 | 経済産業大臣登録 中小企業診断士、TOEIC925点、中国語(ビジネスレベル)、日商簿記2級 | |
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講師領域 | 経営法務、ビジネスマナー研修、プレゼンテーション研修、レジリエンス研修、ビジネスディベート研修 | |
プロフィール | 京都大学大学院農学研究科を卒業後、外資系コンサルティングファームに入社し、大手企業に対する業務分析や改善提案など様々なプロジェクトに携わる。その後食品メーカーに転職。コールセンターのスーパーバイザー業務、商品企画、業務効率化を主導し、社長賞を受賞。その後、台湾支店に駐在し、業務全体の管理および現地スタッフのマネジメントを行う。帰国後は、本社経営企画室の課長として、他社の買収統合を含む新規事業の立ち上げを担当。様々な厳しい環境への適応力と、日本国内外でのマネージャー経験を強みとする。 |