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不機嫌な職場が組織を壊す――怒りとハラスメント未満の問題に対処するアンガーマネジメント

不機嫌な職場が組織を壊す――怒りとハラスメント未満の問題に対処するアンガーマネジメント

「メンバーがピリピリしていて職場の雰囲気が悪い」
「特定の社員の機嫌次第でチームが萎縮する」
「叱責や皮肉が日常になっている」

このように、暴言や暴力といった明確なハラスメントとは断定しにくいものの、職場には確実にストレスと不満が蓄積し、生産性や心理的安全性を静かに蝕んでいく――いわば「ハラスメント未満」の問題を抱える職場が少なくありません。これらを放置すると、最終的には生産性の低下や若手の離職につながる恐れがあります。
では、「不機嫌な職場」を安心・安全な場に変えるためには、何が必要なのでしょうか。
本コラムでは、怒りや小さないじめ・嫌がらせがなぜ職場で発生するのかを整理し、組織としてどのように立て直していくべきかを考えていきます。

不機嫌な職場を安心・安全な場に変えませんか?

  • 職場の不機嫌な空気を変えたい
  • ハラスメント未満の問題に悩む
  • 感情的な指導を改善させたい
  • 心理的安全性の高め方を知る
  • 怒りの連鎖を止め組織を救う

本コラムでは、管理職や人事担当者へ、怒りの正体を理解しアンガーマネジメントを組織で活用することで、心理的安全性の高い職場を再構築するための具体的な指針を解説します。

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1.身近に起きている「ハラスメント未満」の困りごと

ハラスメントとまでは断定できないものの、その行為に気づいたり、実際に経験したりして、モヤモヤした気持ちになったことがある人は多いのではないでしょうか。特に、次のような言動が毎日のように長期間繰り返されているとしたら、その職場は非常に居心地の悪い環境になっている可能性があります。

  • 会議などで特定の社員だけを冷笑する
  • 機嫌が悪いと無視・ため息・強い口調になる
  • 指導の名目で人格否定に近い発言をする
  • 新人や若手に雑用を押しつける
  • 「あの人には関わるな」という暗黙のサインを出す

このような行動を取っている本人は、「指導しているだけ」「冗談のつもり」「昔から同じようにやってきた」と考えているかもしれません。しかし、周囲の社員はその空気に敏感に反応し、発言を控えたり、挑戦を避けたりするようになり、結果としてチームが停滞してしまいます。

問題は、これらが正式なハラスメントとして扱われにくいため、組織として見過ごされやすい点にあります。

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2.データが示すハラスメントと生産性の関係

厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査」(令和5年発行)によると、ハラスメントに対して改善対策を講じた企業と、そうでない企業の間では、生産性や働きやすさの指標に大きな差がみられます。具体的には、ハラスメントを減らす取り組みを行った企業では、従業員の30.1%が「生産性が改善した」と回答しています。一方、対策を行っていない企業では、従業員の20.3%が「生産性が悪化した」と回答しており、対策の有無が職場のパフォーマンスに影響していることが分かります。

また、働きやすさの面でも、同様の傾向が見られます。ハラスメント対策を行った企業では、32.5%が「働きやすくなった」と回答しているのに対し、対策を行っていない企業では、20.5%が「働きやすさが悪化した」と回答しています。

参考資料:厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査」(令和5年発行)31-32P

ハラスメントと断定されない場合でも、グレーな行為が横行している職場では、同様の悪影響が生じていると考えられます。心理的安全性が低く、居心地の悪い環境では、連帯感や団結力が育ちにくく、「頑張ろう」という意欲も失われていきます。その結果として、生産性の低下を招くことになります。

特に注意したいのが、「感情感染」(情動感染)と呼ばれる連鎖です。怒りや不機嫌などといったネガティブな感情ほど感染力を持つといわれます。一人の怒りっぽい社員がいるだけで、会話量が減る、報告が遅れ、ミスの隠蔽、意思決定の保守化など、悪影響が広がります。
つまり、問題は個人の性格にとどまらず、組織全体のパフォーマンスを脅かすリスクへとなるのです。

データが示すハラスメントと生産性の関係

3.なぜ職場で小さないじめや嫌がらせが起こるのか

職場で起きる小さないじめや嫌がらせは、必ずしも悪意から生まれるわけではありません。
多くの場合、出発点にあるのは、コントロールされていない「怒りの感情」です。

職場いじめをする人が抱える「怒り」とは?

職場いじめをしてしまう社員には、次のような行動が見られる場合が多いといわれます。本人は、それを「指導」「正論」「組織のため」と考えていても、その言い方や態度からは、相手に対する怒りに基づく攻撃的な行動として受け取られてしまいます。

  • 相手(特に部下や後輩)の発言を遮る
  • 新しい提案に否定的になる
  • 特定の社員に厳しく当たる
  • 些細なミスに過剰反応する
  • 冗談や皮肉で相手を下げる

ここで重要なのは、怒りそのものが問題なのではなく、「怒りの正体を理解できていないこと」にあります。

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怒りの感情をコントロールする方法を学ぶことで、いじめや嫌がらせにつながる言動を未然に防ぎます。

「怒り」の背景にある3つの感情とは?

心理学では、怒りは一次感情ではなく二次感情と定義されています。怒りは、背後にある別の感情が表に出たものであり、なぜ怒りが生まれるのかを理解するためには、その背景にある感情を見極める必要があります。ここでは、組織でよく見られる代表的な3例を紹介します。

①「理解できない」ことへの防衛反応からくる怒り

世代、価値観、働き方、キャリア観は急速に多様化しています。例えば、Z世代の価値観が理解できない、年上の女性上司になじめない、外国人社員との協働がうまくいかないなど、変化に直面したとき、人は無意識に「自分の常識が否定される」という感覚を抱きます。そして、理解できないものに対して、人はしばしば怒りという形で自己防衛を行います。「最近の若手は…」という言葉の裏には、不安や戸惑いが潜んでいることも少なくありません。

②嫉妬・比較される不安からの怒り

組織では、常に比較が発生します。自分より年下の社員が昇進したり、新しいスキルを持つ人材がチームに加わったりした時、「自分が脅かされている」という感覚が生じることがあります。

逆に、自分のほうが苦労しているのに処遇が同じだと不平等に感じる場合も同様で、こうした思いが嫉妬へと変換され、粗探しや過剰な指導、排除的な態度として表れることがあります。
いじめに見える行動の背景には、自己価値への不安が隠れているケースが非常に多いのです。

③「自分の居場所」を守る防衛行動からの怒り

組織変革やDX、人材の流動化が進むなかで、特にベテラン層に起きやすいのがこのタイプです。

自分の経験が通用しなくなるのではないか、リーダーとしての存在価値が下がるのではないかという無意識の恐れが生まれると、人は権威的になり、部下の意見を否定したり、情報を独占したりして、支配的なコミュニケーションを取るようになります。これは性格の問題ではなく、心理的安全性を失った人の防衛行動なのです。

【事例①】ベテラン女性に萎縮したチームの空気を変えた1on1

アパレル事業を展開する企業のベテラン女性営業Aさんは、売上目標もしっかり達成するやり手でした。しかし、後輩への指導ではきつい言葉が多く、些細なミスを厳しく責めたり、いつも不機嫌そうな態度を取ったりするため、周囲は委縮していました。Aさんが原因で退職した社員もいましたが、当時の会社は、「ハラスメントには該当しない」との判断をしていました。

数年後、新しい部長が就任し、営業部内の空気がよくないことに気づきます。主要因とみられたAさんと“1on1”を繰り返し、じっくり話を聞いたところ、Aさんは若手に自分のポジションを奪われることを過剰に心配し、「自分にしかできない仕事」を抱え込んでいたのでした。

Aさん自身もそれが良くないことであり、本当は若手にもっと活躍してほしいという気持ちがあることに気づきます。そこで部長は、次のタイミングで、Aさんを管理部門へ異動させました。新しい環境で一から業務を覚える中で、Aさんの態度は次第に軟化し、周囲からは「まるで別人のようだ」と驚きの声が上がりました。

「1on1で職場が変わる!実践ワークで身につける関係構築スキル研修」を学ぶ

事例①のように、1on1でじっくり話を聞くことが、部下の本音や不安を理解する第一歩になります。
実践的なワークを通じて、関係構築スキルを身につけます。

4.怒りの連鎖を止めるには

組織が陥りやすい誤解として、「怒らないように注意する」といった表面的な対応だけで終わってしまうと、根本解決にはならず、問題は水面下に潜り、かえって陰湿化してしまいます。

怒りの感情は、本人自身が自覚していないことも多く、行動だけ抑え込むと、別の形で噴出しやすく、さらに組織内で連鎖していきます。では、その負の連鎖を止めるにはどうしたらよいのでしょうか。

感情マネジメントを学ぶ

多くのビジネスパーソンは、専門スキルや業務知識について教育を受ける一方で、「感情の扱い方」を体系的に学ぶ機会はほとんどありません。怒りは二次感情と呼ばれ、本来は不安・焦り・無力感の裏返しです。しかし、本人がその根底にある感情を自覚できないまま、無意識に攻撃的なコミュニケーションへと変換してしまうことがあります。だからこそ、怒りをどう扱うかを学ぶ機会が必要なのです。

「許される空気」をつくらない

もう一つの要因は、組織側にあります。事例①でも触れたように、成績が良ければ多少の問題行動は黙認される、「あの人は昔からああだから」と放置される、という状態は、組織が暗黙のうちに、「感情的にふるまっても結果を出していればよい」と認めているようなものです。その結果、小さないじめが、組織文化として根付いてしまいます。

組織としては、どんなに小さなことであっても、いじめを容認しないという厳しい姿勢を示す必要があります。加えて、いじめを行う本人への対応についても、十分に検討することが求められます。

「アンガーマネジメント研修」で怒りの正体を理解する

怒りそのものではなく「怒りの正体を理解できていないこと」が問題です。研修を通じて、体系的に学びましょう。

【事例②】育休明けの社員を襲った小さないじめ

2,000人規模のメーカーに勤めるBさんは、1年間の育休から復帰し、人事採用部門へ配属になりました。そこでは、採用数の目標が設定されていましたが、人手不足と採用難により達成は厳しい状況でした。他のメンバーは残業して遅くまで働いていましたが、Bさんは時短勤務のため、できる業務には限りがありました。しばらくすると、隣の席の女性社員から無視されるようになりました。会議でも、Bさんの発表のときにはあからさまに不機嫌な態度をとられ、会話はメールのみとなりました。Bさんは、時短勤務で早く帰ることが原因ではないかと感じていました。さらに、他の女性社員3名もBさんを避けるようになり、職場で孤立するようになりました。食欲低下などのメンタル不調も現れ、つらい日々が続きました。

しかし、Bさんは一念発起し、社内FA制度を利用して別部門へ異動しました。結果として、職場いじめの環境から距離を置くことができました。

「メンタルヘルス・マネジメント®検定試験」でメンタル不調への理解を深める

事例②のように、孤立感や食欲低下などのメンタル不調は誰にでも起こり得ます。
組織としてメンタルヘルスの知識を深め、適切な対応ができる体制を整えましょう。

5.安全安心な職場づくりのために組織としてできること

ここまで、事例を交えながら職場いじめやハラスメント未満の問題における怒りの正体について考えてきましたが、安心・安全な職場環境をつくるためには、これらの困りごとを「個人の性格の問題」として片づけないことが重要です。

怒りっぽい社員を「困った人」で終わらせるのではなく、コミュニケーションスキルやアンガーマネジメント、リーダーシップなどを“能力”として扱い、本人とともに能力向上のためのプランを本人と検討していく必要があります。特に管理職やリーダー層であれば、怒りの感情を適切に扱うアンガーマネジメントを正しく身に付け活用することができれば、職場の空気は大きく改善されます。

また、多くの企業が誤解しているのは、「問題が起きた人だけを指導すればよい」という考え方です。
これまでも述べてきたように、職場いじめを助長するのは、問題に気付かない上司や、気付いても許してしまうチームの文化、更には組織の評価観などが複合的に作用しているためです。だからこそ、組織全体で、リーダーシップや組織文化の改革について考えていく必要があります。

さらに、事例②でも見られたように、怒りやいじめの背景には多くの場合「余裕のなさ」があります。他者理解のためのコミュニケーションの機会が損なわれないよう、管理職層は十分に配慮し、メンバーが余裕を持って働ける環境作りを意識することが求められます。

「アサーティブコミュニケーション研修」で対等な伝え方を学ぶ

感情に振り回されず、対等かつ誠実に自分の意見を伝える力を身につけることで、いじめや嫌がらせにつながる言動を防ぎます。

6.まとめ:職場の空気はコントロールできる

感情を扱うスキルが不足し、組織の無意識の許容が重なると、小さないじめや嫌がらせが蔓延する「不機嫌な職場」が生まれてしまいます。しかし、重要なことは、職場の雰囲気はマネジメントが可能だという点です。組織やメンバーが怒りを正しく理解し、そのコントロール方法を習得すれば、組織はより良い方向へと転換できます。

もし現在、イライラした空気が続き、チームがぎすぎすしていると感じているなら、それは個人の問題ではなく、組織が成長するためのサインかもしれません。感情をマネジメントできる組織こそ、これからの時代に強い組織です。

生産性と心理的安全性を高めるアンガーマネジメントの重要性

職場の「小さな違和感」を、組織変革の第一歩にしてみてはいかがでしょうか。

監修者情報

志野 こと葉(しの ことは)

プロフィール コンサルティング企業や大手教育系企業にて25年にわたり商品開発・マーケティング・広報業務などに携わる。 特にWeb開発やデジタルマーケティング領域の業務を数多く経験。マネジメント職を経験後、産業カウンセラー、ハラスメント相談員等の資格を取得。 その後、公務員に転向し、企業の雇用問題や採用、人材育成、働き方等におけるさまざまな課題解決に携わる。 働く人に向けた幅広いテーマでビジネスコラムの執筆を行っている。

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