資格【不動産】

賃貸不動産経営管理士の役割と国家資格になった背景

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不動産業界ではフローからストックの時代を迎え、賃貸住宅の割合は住宅全体の3割程度を占め、国民の重要な住宅ストックになっています。それに伴い、管理業者の数も増え、市場は大きく活性化されています。
しかし、同時に多くの課題を抱えた業界でもあります。さらなる適正化・高度化のためにも専門的な知識を持ち、家主と入居者に対して公正中立な立場で職務を行い、新たなビジネスチャンスを生み出す役割としても「賃貸不動産経営管理士」への期待が高まっています。今回のコラムでは、この賃貸不動産経営管理士の役割と生まれた背景をメインに解説していきます。

1.なぜ賃貸住宅管理業法ができたのか?

賃貸不動産経営管理士は、賃貸住宅管理業法を基に作られた資格です。この業法は不動産業者による賃貸住宅の管理方法を適正化するために、2020年6月12日に可決成立した法律です。賃貸不動産経営管理士は、賃貸住宅の管理を専門とする唯一の資格です。賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律おける「業務管理者」の要件とされた法体系に基づく国家資格になります!
法律は様々な要因により成立したため、業法の説明文は多いのですが、今回注目していただきたいのは「サブリース業者(特定転貸事業者)が行うべき業務への関与」という一文です。このサブリースに関する背景を知ることで、賃貸管理業界および国家資格化に至る経緯と「必要とする知識」の理由がわかります。

1-1 サブリースとは

サブリースは不動産会社と物件のオーナー間で契約が結ばれ、オーナーが所有している物件を不動産会社が入居者希望者に貸し出す契約方式、つまり転貸(また貸し)です。

例えば
「自分が大家でアパートを持っているが、高齢になって大家業ができない。誰かにまとめて管理してほしい」
「親が持っていたアパートを相続で引き継いだが、遠く離れたところに住んでいるし、本業があるからアパートの管理なんてできない」というケースはよく聞く話です。

この時、サブリース契約をしているとオーナーには不動産会社から家賃保証額が支払われて、その他にも入居者の募集、選定、クレーム対応、修繕などを行います。

1-2 サブリースの問題点

主に問題となったのは

家賃保証額が満額とは限らない

→ 〇年一括借り上げとうたっていても、そうではない事が圧倒的に多いです。
理由は多々ありますが、人気のない物件であれば賃料を下げることで入居募集を行う事もあります。すると必然的に賃料減額に伴い保証額が変動します。

突然の契約キャンセルや解除

契約書面にはほとんどのケースで「事業者側からの中途解約が可能」と記載されています。一般的な賃貸借契約においてもまったく問題がないのですが、オーナー側からすると突然の契約キャンセルを裏切られたと思ってしまうことは致し方ありません。

更には上記に付随して「契約時の説明不足・認識不足・宅建業法の適用外」という理由から、トラブルが多発しました。

これらは10年ほど前から問題となり、2013年には国会で取り上げられるなど、世間に知られるようになってきました。また、国土交通省も解決に向け、2016年には各業界団体へ「サブリースに関するトラブルの防止に向けて」という通達を出しています。

1-3 かぼちゃの馬車事件

上記の説明は「すでにアパートなどの物件を持っている」という場合の話になりますが、別のパターンでは「不動産投資としてこれからアパートを建て、かつ物件管理を会社に依頼して、オーナーは悠々自適にも収入を得る」というものでした。

そこで起きたのが2018年に明るみとなり、世間を大きく騒がせた「かぼちゃの馬車事件」です。
当会社は、女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」というブランド名でサブリース事業を行っていました。

2016〜2017年頃に不動産投資家から大人気となった投資商品で、35年間の家賃保証を大々的に謳っていました。ここで「損のない投資」と考えた投資家たちは、金融機関からの融資を受けてアパートを建設、かぼちゃの馬車のサービスを利用しました。

ところが、2017年には支払われる賃料を減額通知、そして2018年には賃料の未払いが発生。家賃収入がなくなった投資家は金融機関の返済に困り、結果的に自己破産した方もいました。事件は某銀行の不正融資も絡み、国を巻き込んでの事件となったのは記憶に新しいかと思います。

2.過去問から見る賃貸不動産経営管理士の資質

こうした事件を背景に賃貸住宅管理業の法整備が進み、「サブリース業者(特定転貸事業者)が行うべき業務への関与」の明記となったわけです。

実際、賃貸不動産経営管理士試験では下記のようにサブリース関連の問題、そして賃貸不動産経営管理士のコンプライアンスにかかわる問題が出題されています。

◆設問(2020年度試験にて出題:賃貸住宅管理業法)
賃貸人AがBに管理を委託しCに賃貸する管理受託方式と、AがBに賃貸し、BがAの承諾を得てCに転貸するサブリース方式の異同に関する次の記述のうち、誤っているものの組み合わせはどれか。

  • ア:BのCに対する立ち退き交渉は、管理受託方式もサブリース方式もいずれも弁護士法に抵触し違法となるおそれがある。
  • イ:Cno善管注意義務違反により賃貸物件が毀損したときは、管理受託方式の場合、BはAに対して損害賠償責任を負うが、サブリース方式の場合、BはAに損害賠償責任を負わない。
  • ウ:Cが賃借する契約が終了し、Cに対して建物明渡請求訴訟を提起する場合は、管理受託方式の場合はAが原告となり、サブリース方式の場合はBが原告となる
  • エ:AB間の契約について、管理受託方式の場合は借地借家法の定期用はなく、サブリース方式の場合は借地借家法の適用がある。

①ア、イ  ②ア、ウ  ③イ、ウ  ④ウ、エ

正解は(こちらをクリック)

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3.賃貸不動産経営管理士取得のメリット

賃貸不動産経営管理士の資格と知識は、自身の大きなメリットになります。

すでに不動産業界に勤められているのであれば、入居後のフォローや業務範囲の拡大に繋がります。最近では、宅建士だけではなく、賃貸不動産経営管理士の資格取得が昇進・昇格の要件になっているケースもあります。

また、ご自身が賃貸物件のオーナーとして独立されるのであれば、すべてにおいて知識が役に立ちます。
学生の方でも就職時や履歴書に記載できる大きな資格として注目されています。

4.賃貸不動産経営管理士の仕事内容

もう少し詳しく賃貸不動産経営管理士の業務内容を見てみましょう。

◆管理業務受託契約

・市場調査 ・管理業務受託契約の締結
・賃貸用建物の企画提案

◆入居前

・入居募集  ・鍵の引き渡し
・賃貸借契約締結(※) ・重要事項説明書(※)
 ※:宅建業に該当するもの

◆入居中

・建物維持管理と修繕 ・クレーム対応 ・法定点検 ・契約更新
・建物清掃 ・賃料改定 ・賃料などの収納業務

◆入居後

・退去立ち合い ・入居促進 ・原状回復工事
・空室維持管理 ・敷金の清算

一部では宅建士と被る部分はありますが、上記のように幅広い業務範囲をカバーするため、求められる知識は多いです。

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5.賃貸不動産経営管理士と宅建士の役割の違い

このように、国家資格として作られた背景を基にニーズが高まっている状況ですが、賃貸不動産経営管理士に興味を持つ方がよく疑問に思うことの一つとして「宅建士と何が違うの?」という問題です。

宅建士は独占業務もあり、不動産の総合資格と見られることが多いです。その上で「入居募集・賃貸借契約の締結」といった『入居前』が業務範囲と言えます。
賃貸不動産経営管理士は「クレーム対応・設備故障・賃料の収納・退去時の原状回復」等々、賃貸住居へ『入居後』の広い範囲が業務となります。

まとめ

どの資格でも、その背景を知ることで勉強の理解度も深まります。今回のコラムをきっかけに「賃貸不動産経営管理士」がどのような役割を目的として生まれたのか、興味を持っていただければ幸いです。また、LECでは賃貸不動産経営管理士の資格取得に向けて効率的な勉強法、対策研修などを行っております。ぜひとも下記ページもご覧ください。

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