人事・労務

新入社員研修はどう作る?目的設定から具体的な手順をご紹介

新入社員研修はどう作る?目的設定から具体的な手順をご紹介

本コラムは、新入社員研修の目的、教育手法の解説、カリキュラム作成の流れを解説するものです。「新入社員」と聞くと、3月に大学・大学院を卒業して4月から社会人となる新卒社員をイメージする方が多いと思いますが、最近は通年採用が増えて、夏以降に大卒者が入ってきたり、アルバイトから社員への昇格があったり、中途採用の方が人数的に多かったり、と様々な形で新入社員研修が必要となります。新卒社員の場合、企業によっては2、3カ月から(長い場合には)半年にもわたる研修期間が設けられることもありますが、本コラムでは、新卒に限定せず、他業界・同業他社からの転職者への研修も視野に入れた、比較的短期(1、2週間)の研修カリキュラムを想定しています。

おすすめの方
・人事部で社員の採用・研修を担当している方
・過去、自部署に新入社員が入ってきて、指導役・メンター役を勤めた経験がある方
・自身が新入社員として入社した後、成長が止まってしまっている、と感じている方

1.新入社員研修はなぜ必要?(目的)

新卒社員の場合、社会人としての責任・マナー(報連相、就業時間、服装、言葉遣い)などを身につけてもらい、会社で働くことに慣れてもらうことが主目的です。いわゆるマインドセット・意識変革です。そのために、あえて過酷な業務を行わせる場合もあります。

しかし、中途採用も含めて広く捉えると、一番の目的は変わってきます。一番行うべきは、自社の理念、事業内容、業界動向、商品・サービスの特徴を理解してもらうことです。部署に配属された後は、部分最適・短期的目標を追求する働き方になりがちです。その会社の色に染まっていない状況の新入社員である時こそ、創業の理念に始まり、その後の事業の広がり・変化(創業から現在までの沿革)、今後の方向性などを経営陣が直接、語りかけることが有効です。
業務遂行のために必要な能力は、部署によって異なっていることも多く、部署配属後のOJTで学ぶことが可能です。入社直後の研修は、自社の理念・方向性を理解してもらうことを第一の目的とすべきです。

2.新入社員研修ではなにを教えるべき?(内容)

カリキュラム作成の流れを解説する前に、新入社員研修に入れるべき要素を解説します。以下、大学・大学院からの新卒社員を前提に書いています。中途採用の場合には、基本的なビジネスマナーは身についていることを前提に、「自社・職場についての理解」「ハラスメント・コンプライアンスへの理解」の2つを重点的に行うべきです。

2-1 自社・職場についての理解を深める

最近、「パーパス経営」という言葉が流行っています。SDGsへの貢献を強くアピールしている企業も増えています。売上・利益を追求するだけでなく、日本社会全体、ひいては世界へ何らか付加価値を提供していく企業であることを社内外へアピールすることが重要になっています。

組織で多くの人が役割分担して働いている中では、部署間の対立であったり、業務の押し付け合い(顧客から見ると「たらい回し」)であったり、全体最適に反する意思決定であったり、非効率かつ顧客満足に反することがありがちです。新入社員だからこそ、会社全体がどのような業務を手掛けているか、バックヤードも含めてどのような組織構造になっているか、創業時の理念からどの部分は変わって、どの部分は維持し続けているか、といった全体像を理解して、それぞれの配属部署へ入っていくべきです。地方創生の文脈において、地域の活性化のためには「よそ者、若者、ばか者」が必要、という言葉があります。新入社員は(中途で年齢は高かったとしても)会社にとって、就業期間の短い「若者」であり、「よそ者」です。ちょっと変わった視点で、今までは当たり前とされてきた業務について疑問の声をあげ、改革に向けた問題提起を行っていく担い手としての活躍も期待されます。その際に大事なのは、会社の方向性、全体最適を踏まえた高い視座・視野です。

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2-2 社会人としてのマインドセットを整える

社会人経験のある中途採用の場合には、あまり問題になりませんが、大学・大学院からの新卒社員の場合、いわゆる学生気分を払拭して、社会人としての責任感を持ってもらうための契機として新入社員研修が行われます。大学生の多くはアルバイト経験があり、顧客からの厳しい目にさらされて業務を行うことはそれなりに経験しています。しかし、アルバイトと社員とで大きく異なるのは、コミュニケーションの質・量です。社員になると、自分と年齢・社会状況が全く異なる顧客や上司・同僚との会話が必要になります。クレーム対応1つを考えても、その顧客特有の問題にすぎず、現場判断で解決できるとは限りません。商品・サービス全般の見直しが必要となるような問題(自動車でいえば、リコール案件)が現場で起きていることもあり得ます。新入社員も含めて、社員一人ひとりが状況を的確に把握して問題点を本部(関係部署)へ迅速に報告できるよう、社会人としての責任感を高める必要があります。

特に、新型コロナウイルス感染拡大後に大学生活・就職活動を経験してきた新卒世代(2021年・22年入社)は、直接の対話に苦手意識を持っていて避けがちだったり、言葉以外の身振り・視線などノン・バーバル表現への感度が鈍かったり、という課題があります。「社内は大半がテレワークで、社外の顧客との商談もWEB会議」という会社でない限り、学生時代よりもずっと濃密な、かつ、世代・考え方の異なる人たちとのコミュニケーションが求められるようになります。この点の注意喚起が重要となります。

2-3 基本的なビジネスマナー・ビジネススキルを習得する

ビジネスマナー、特に敬語の使い方、メールの書き方、ビジネス文書の作成法などは新卒社員特有の問題といえますが、ビジネススキルについては中途採用であっても、不十分であることが多いので、注意が必要です。職種によって必要となるスキルは異なってきますが、汎用的に必要なスキルとして、①PCスキル、②タイム・マネジメント、③ロジカルシンキング、④チームワーク、⑤ストレス・マネジメントなどが挙げられます。

③の要求度は会社の規模・組織構造によっても変わってきますが、社内業務・手続きが細かくルール化されている場合や、官公庁や自治体を顧客としている場合には、「なぜ、このルールがあるのか」「ここで例外が認められているのはなぜか」を論理的に考えて、目の前の事象から他の状況へ応用できる能力が求められます。理系出身で数学・物理が得意だから論理性が高い、というわけではありません。文系・理系問わず、学部成績が高い人は一般的にロジカルシンキングができる、と見てよいです。

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2-4 業務に必要な専門スキル・知識を習得する

業務に必要な専門スキル・知識は会社によって様々です。

製薬業界では、その会社が扱う薬はもちろん、競合他社が扱う薬、その背景となる化学知識などを修得する必要があるため、新入社員研修が何カ月にもわたって座学で行われることが一般的です。そこまで専門的でなくても、どの会社でも、社内でしか通用しない社内用語があります。上司・先輩社員とのコミュニケーションにおいて、共通言語ができているか否かは非常に大事です。座学で、ある程度の言葉(通常30個から40個はある)は事前に教えておきましょう。1個につき3分程度として、1時間半から2時間くらいは必要です。すぐに忘れてしまいますが、現場に出た後、指導役・メンター役の社員からのOJTの際に、当該専門用語が出てきたとき、「そういえば、研修の時、聞いたな」と思い出せる程度には、座学研修も意味があります。
なお、手法としては、ロールプレイが活用されることが多く、ここで初めて部署の先輩社員(指導役・メンター役)と顔合わせになるカリキュラムが多いです。

BtoCの会社では、新入社員がミステリーショッパーになって、自社と競合他社の顧客対応を覆面調査してくる、というプログラムも有効です。商品知識がほぼ皆無であるからこそ、普通の顧客目線で、対応の良し悪しを判断できるのです。

2-5 ハラスメント・コンプライアンスへの理解を深める

2022年4月から従業員300名以下の中小企業についても、パワーハラスメントを防止するための雇用管理上の措置を講じることが要求されるようになりました。なお、セクシャルハラスメントについては2007年4月の時点ですでに防止のための雇用管理上の措置の義務化が施行されています。防止措置の1つとして、社員向けの研修が必須です。新入社員研修でのコンプライアンスの徹底、ハラスメント防止は防止措置の第一歩、最低限と言えます。入社すぐの時期にしっかりと時間を確保して行わないと、現場に配属された後に受講させることは困難です。

自社理解や業務に必要なスキル・知識の修得は社内人材を講師として行うことが可能ですが、ハラスメント防止・コンプライアンス研修は社外の専門人材による研修をすべきです。社内講師は法律知識が不十分であることが多く、また、実際の現場では男尊女卑的な言動が多少なりとも残っていたり、営業現場で売上ノルマを上司が厳しい口調で部下へ指示していたり、といった事例もあるために、社内人材による研修では、曖昧な言い方になる恐れがあります。コンプライアンスは単に法律を守ればよい、というものではありません。法律の背後にある倫理をも理解して、日々の業務遂行において社会から批判を受けないよう、高いコンプラ意識が必要です。社外の研修会社へ、自社・業界固有の事例・危ない場面を情報提供して、自社用にカスタマイズした座学研修を2、3時間のまとまった時間行って、場合によってはケーススタディ(新入社員同士で、どのようにしたらコンプラ違反を防ぐことができたかを議論)まで、追加で1、2時間実施することがお勧めです。

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3.新入社員研修でよく採用されるやり方は?(方法)

新入社員研修

3-1 グループワーク

その名の通り、新入社員を3、4名のグループに分けて、何らかの課題に取り組んでもらうプログラムです。初めて会う人達でのグループなので、多くても4名まで、とすべきです。2人だと、意見が食い違ったときに結論が出せずに行き詰ってしまうので、3名以上は必要です。

全国で異なった地域で複数人、採用している会社であれば、現場に配属された後には接点を持つことが少ない、採用地域が異なる社員同士でグループとすることが有効です。現場配属後に、自分とは全く異なる考え方を持った顧客、上司・先輩社員と対話していく際の予行演習になるからです。

その上で、他のグループのプレゼンテーションを聞いた際に、自分たちのグループのやり方が良かったのか反省できるように、グループごとにほぼ共通する課題にしておくべきです。グループワークこそ、振り返りが大事になります。

3-2 レクリエーション

新卒社員の場合、学生から社会人になって初めての機会で、極度に緊張してしまい、研修に身が入らない、集中できない事態があります。声を出したり、体を動かしたりする、ゲーム的な要素を入れたプログラムがリクリエーションです。例えば、①社員2人をペアに組ませて、互いに自己紹介して、多くの共通点を見つけ出して発表するとか、②4、5人が輪になってそれぞれ指1本でフラフープを支えて、タイミングを合わせて、そのフラフープを下へ降ろしていくスピードを競うとか、様々なものがあります。「アイスブレイク 社員研修」で検索すると、色々な例が出てきますので、参考にしてみてください。

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3-3 ケーススタディ

実際に業務で直面する事例をもとに、どのように対応すべきか、解決法を考えるプログラムがケーススタディです。全く事前知識なしでは解決法を思いつくことができないので、事前に座学研修を行って、ある程度のマニュアルを知った上で行う必要があります。3、4名でグループを作ってグループ内で解決法を討議するグループワーク形式が有効です。できれば、グループ内の司会役(ファシリテーター)は新入社員ではなく、先輩社員が入って、様子を見ながらヒントを出したり、最後の発表に向けて議論のまとめを促したり、という進め方にします。

BtoCの会社では、新入社員自身に商品・サービスを試してもらって、顧客目線で改善案を提案してもらう、という試みもあります。現場の社員からは出てこないような突飛なアイディアが出てきます。多くは採算度外視だったり、技術的に実現不可能だったりではありますが、新入社員一人ひとりにプレゼンをしてもらうと、それぞれの性格を知ることができます。

3-4 ロールプレイ

顧客役と社員役に分けて、顧客対応や商談の現場を疑似体験してもらうプログラムがロールプレイです。敬語の使い方、クレーム対応の基礎などビジネスマナーを実践的に学ぶ場としても有効です。コロナ禍においては、対面での顧客対応だけでなく、電話対応やWEB会議での対話のロールプレイも必要です。電話では相手の顔・表情が全く分かりませんし、WEB会議では自分の表情が相手に伝わりづらいので、大げさにリアクションを取る必要があります。対面でも、マスク越しに、分かりやすい、滑舌の良い言葉遣いをする工夫が必要です。いずれにせよ、相手の感情を的確に読み取ることの重要性を実感できるのがロールプレイの利点です。

商品・サービスについての知識が絶対的に不足している新入社員は、社員役を演じることは難しく、顧客役をシナリオ通りに演じてみても、あまり緊張感がない研修になってしまう、という課題があります。この点は、前述のように、新入社員が顧客役として覆面調査をしてもらい、自社と競合他社の違いについて発表してもらう手法であれば、一応解決可能です(BtoCの会社に限られますが)。

3-5 研修・eラーニング

コンプライアンス徹底やハラスメント防止など、一定のルール・専門知識を理解してもらうためには座学の研修が有効です。新卒社員にとっては、大学の授業と同じように受講できるので、一番緊張感なく受けられるプログラムと言えますが、その分、右から左に聞き流してしまう恐れがあります。知識確認のためのテストを実施したり、講師が時々受講生に質問をして答えさせたり、という研修カリキュラム内でのフォローアップが必要です。

コロナ禍では大人数を会議室等に集めることが難しく、eラーニングでの座学研修が増えています。eラーニングは、動画で講師が話しているものが一般的ですが、動画形式は受講者が理解不足のまま聞き流してしまう欠点があります。受講者自身がスライドをクリックして読み進めていく形式(紙芝居形式・スライド形式)は、自分のペースで読むことができ、さらに途中にある確認テストで正解しないと次に進めない、という点で、この課題が解決されます。

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3-6 OJT

ある程度の業務知識・スキルを身につけて、部署に配属された後に、日々の業務の中で新入社員向けに指導役の先輩社員が教えていくプログラムがOJT(On the Job Training)です。実践的な知識・スキルを身につけることができ、特別な費用が掛からない点がメリットです。営業手法がマニュアル化しづらく、顧客ごとにケース・バイ・ケースでの対応が必要となる業界では特に有効です。もっとも、教える社員の技量に左右されること、習熟度を客観的に測定しづらい、という難点もあります。現場が新入社員をお客さん扱いして、顧客の前に立たせず、事務仕事ばかりをさせて、モチベーションを下げさせたり、逆に、知識・スキルが不十分な状況で顧客対応をさせてクレームとなって本人が自信を失ったり、という事態もあり得ます。

マニュアル化・座学での事前研修と、OJTによる実践とのバランスは人材育成における永遠の課題ともいえますが、新卒社員については、社会人1年目であることを考慮して、メンター役が精神面のケアを務めて、厳しい指導に偏らないよう注意しましょう。

3-7 フォローアップ研修

新入社員の一連のカリキュラム終了直後に、全体の振り返りを行って、それぞれの社員が「自分は何を学んだか」を復習するとともに、「今から半年、1年間で達成したい目標設定」「そのために配属部署で実践すること」を具体的に宣言するプログラムがフォローアップとしては典型です。

新卒社員の場合、最初の2、3カ月は良い意味で緊張感をもって社会人としての責任を果たさなければ、と頑張っているものの、4か月目くらいから(悪い意味で)緊張感が抜けてしまって、手抜きを覚えたり、更なる改善を目指さず(かなり低いレベルの)現状維持で満足してしまったり、という問題も出てきます。もしくは、職場での人間関係に悩んだり、ちょっとしたミスを引きずったり、ストレスに悩む場合もあり得ます。メンター役の先輩社員を置きつつ、4か月目、半年経過後など、ある程度の区切りの時点で、今までの勤務を振り返る機会をフォローアップ研修として実施することも大事です。

4.新入社員研修の実施期間は?いつからいつまで?

業務で必要となる知識・スキルの量・深さによって、期間は様々です。中途採用の場合、長くても1カ月程度で、短ければ3日程度の最低限の研修で、現場に配属して、OJT中心で業務知識・スキルを修得してもらうことが一般的です

新卒社員の場合も、短ければ1週間程度の研修期間ですぐに現場を経験してもらう業界もBtoCを中心に多く見られます。製薬業界や金融・商社など、顧客対応に必要とされる専門知識が膨大で、ベテラン社員と新入社員との格差が大きい業界では、3カ月から半年の長期の研修期間が設けられます。

いずれの場合であっても、大学在学中の内定者段階で、週1程度でもアルバイトとして業務を経験してもらうことが有効です(特に、BtoCの業界)。前述のように、アルバイトと社員とでは責任の重さが違うので、内定者アルバイトをしているからといって、新入社員研修を受講する姿勢がいい加減で緊張感がないものになってしまっては本末転倒ですが、違いがあることが意識できていれば、内定者アルバイトの経験は必ず生きてきます。新卒社員の性格を研修前に深く知るためにも、内定者アルバイトとして来てもらうことは大事です。

5.新入社員研修はオンラインでも構わない?

新入社員研修は、全国から数十人の規模で集めて、相互に交流してもらって、同期としての仲間意識を持ってもらう場でした。研修が終わってそれぞれが異なる現場に配属された後も、同期がSNSで繋がって、悩みを共有したり、相談したり、という人間関係を作るためには、互いに顔を合わせて一つの会議室で受講したり、場合によっては飲み会へ一緒に行ったり、という機会の提供が通例でした。コロナ禍では、多くの人を集めることができずに、少人数が拠点ごとに分散してWEB会議で研修を受講したり、極端な場合には、社員が自宅からオンラインで受講したり、というケースもありました。

オンラインのメリットは、感染拡大期であっても、カリキュラムをスケジュール通りに進めることができる点です。WEB会議の機能を活用すれば、グループワークや資料を使ったプレゼンも比較的スムーズに行うことができます。チャット機能によって、それぞれの意見をより理解しやすくなる場合もあるでしょう。対面ではマスク越しになるところ、口元も見ることができる、というオンラインならではの利点もあります。座学研修はオンラインに向いており、場合によっては、講義を録画しておいて、オンデマンドで、受講生の都合の良い時間帯に受講してもらう手法もよいでしょう(ただし、理解度確認のためのテスト実施も必須)

もっとも、初めて会う人同士がオンラインだけで自由に意見を出し合うことは限界があります。オンラインではアイスブレイクも難しく、チャット中心の文字による議論は感情的に変な対立を生むこともあります。社内での勤務がオフィスへの出勤で行われているのであれば、多少の感染リスクは甘受して、対面での研修実施を主とすべきでしょう。特に、ロールプレイ(ビジネスマナー修得に有効)は対面実施でないと効果が半減します。

6.新入社員研修を成功させるポイント

新入社員研修を成功させるには、以下のようなポイントに注意してカリキュラム作成・実行すべきです。

なぜ、その業務が必要となるのか、趣旨・背景を具体的に教える
先輩や上司へ疑問点を気軽に質問できるよう心理的安全性を確保する
新入社員の性格を踏まえたコミュニケーションを配慮・工夫する

なぜ、その業務が必要となるのか、趣旨・背景を具体的に教える

複数の社員・部署が相互に協力して一定のプロセスを経ることで初めて、商品・サービスが顧客へ提供されます。顧客への価値提供が円滑に、正しく行われるように、企業内の組織が作られています。単に業務ルール・マニュアルやチェック項目を伝えるのではなく、一つひとつの業務が必要となっている理由を具体的に解説するように心がけましょう。

社内人材が講師でないとできない部分ですし、講師となる先輩社員自身の理解度によって、研修の質がバラバラになってしまう危険性もあります。もっとも、新入社員研修の講師として指名されたことで、普段は考えてこなかった、関連部署との情報のやり取りについて改めて意味を考えてみたり、現状の業務プロセスの改善点を思いついたり、という講師役自身の成長が起きる可能性もあります。

新入社員から「なぜ、この業務はこうなっているのですか?」と質問されても、的確に回答できるよう、講師役に十分な準備をしてもらいましょう。

先輩や上司へ疑問点を気軽に質問できるよう心理的安全性を確保する

業務の趣旨・背景を座学研修ですべてを伝えるのは限界があります。実際には、OJTのように新入社員が配属された後の現場での実践の中で、疑問点を持つことが普通でしょう。新入社員が疑問点を気軽に質問できるよう、先輩・上司が「聞く姿勢」を意識的に見せることが必要です。

「心理的安全性」という言葉も、組織論でバズワードのように流行っていますが、要は、風通し良く、自分の思ったことを自由に発言できる企業文化を保つことです。失敗を許す雰囲気、と表現されることもありますが、新入社員に対して「失敗していいよ」と安易に伝えることは、逆に、顧客に大きな迷惑をかける行動に発展する危険性もあるので、お勧めできません。この程度は大丈夫だろう、という挽回可能な失敗を見極める能力は、少なくとも、半年くらいはその会社で働いていないと無理でしょう。失敗を推奨するのではなく、疑問点を持つこと、質問することを推奨しましょう。昔であれば、就業後に一緒に飲みに行って、新入社員との距離感を縮めていたと思いますが、今はそういう飲みニケーションは敬遠されがちです。日々の業務の中で、意識的に対話の時間を確保したり、メンター役が1日の業務終了後に1対1で振り返りの時間を取ったり、という工夫をしましょう。

新入社員の性格を踏まえたコミュニケーション・スタイルを配慮・工夫する

人には、それぞれ得意とするコミュニケーションの形式があります。自分が何を言うべきか、一度、頭の中で考えてから慎重に発言する人もいれば、思ったまますぐに口に出す人もいます。聞く姿勢でも、自分の都合のいいところだけ受け取ってしまう人もいれば、逆に、自分が悪いという前提で、人からのアドバイスでどんどん自信を喪失してしまう人もいます。

遅刻の連絡はもちろん、退職の意思表示すらLINEで伝えてくるのが最近の若者、という偏見もあるかもしれませんが、メンター役となった先輩社員は、SNSもうまく活用して、新入社員(特に、新卒)との円滑な、意図が伝わるコミュニケーション・スタイルを模索するべきです。

長々と説教しても全く改善されない行動が、LINEのように、短い言葉でエッセンスを伝えることで初めて、意図が伝わって改善の方向へ進む、という場合もあります。一般的には、口頭で伝えるよりも、文章で伝えた方が正確な意味が通じますが、文字だけだと、(対面で話していれば伝わるはずの)ニュアンスが通じにくくなります。ミスを責めるだけでなく、「〇〇のようにすれば、△△となるから、問題がおきないよ」といった感じで改善点を伝えるべき、とよく言われますが、一方的に改善方法を伝えるのでは効果半減です。時間をとって対話をする機会を作れば、相手の言い分も聞くことができます。相手からの質問を受け付けることもできます。

7.新入社員研修は外注?それとも内製?(メリット・デメリット)

研修を実施するに当たり、社内講師による内製研修にするか研修会社に外注するかをまず検討する企業様が多いですが、 それぞれメリット・デメリットがあり、また研修をしたいテーマによっても異なってきます。

以下のようなポイントを考慮したうえでご検討ください。

研修を外注する場合 研修を内製化する場合
講師
メリット
専門知識を持ち、かつ教えるプロによる客観的な講義をおこなってくれるため参加者も研修内容を信頼して受講できる。
デメリット
社内の事情や社員の個性について十分に踏まえた講義を求めることは難しい。
メリット
社内の事情や社員の個性などを十分に踏まえた講義が可能で、誰を講師とするかを社内で自由に選定できる。
デメリット
専門性の高い内容や教える能力については講師よって効果に差が出る。また準備に際して業務への影響も考慮が必要。
教材
メリット
標準化された正しい内容の既製教材で、一般的なテーマであればすぐに研修を実施できる。
デメリット
その会社特有の事情で細かなカスタマイズを要望する場合は別途費用がかかることが多い。
メリット
会社の事情を踏まえて作成することが可能。
デメリット
内容の正確性を客観的に担保するのは難しいとともに、慣れない社員が作成すると相当の時間が必要となり業務への影響も懸念される。
運営
メリット
スケジュールさえ伝えておけば教材の印刷から研修当日の立会いによる受講者の出欠確認・アンケート集計まで依頼することが可能。
デメリット
別途費用がかかる可能性も高い。
メリット
人事部担当者が立ち会うことで受講者に緊張感が出る。
デメリット
終日や長期の研修では業務への影響が出たり、教材印刷については外注が必要な場合がある。
費用
メリット
社内人員・社内業務への負担を最小限にして実施できる。
デメリット
1日研修で30万円〜の費用がかかる。
メリット
外部業者への支払いはほとんど発生しない。
デメリット
思った以上の人件費がかかったり、本来業務における機会損失等の影響が出る可能性がある。

これらを考慮して言えるのは、法律研修や会計研修など専門性が高い内容や、マネジメント研修やマーケティング研修など講師による受講者への説得力が必要な内容については外注の方が効果が高く、営業研修や社内ノウハウ・規則に関するものなどその会社特有の内容については内製の方が効果が高いといえます。

これ以外については、そもそも社内に講師としての適任者がいるか、外注にかかる費用と内製の際の業務への影響とのバランスを総合的に考慮して選定することが重要です。

最初の数年間を外注で実施した後、そのノウハウを学んで内製化するというのも一つの方法といえます

7-1 こんな場合は外注を検討しよう!

前述のように、コンプライアンス徹底・ハラスメント防止のための研修は外注すべきです。特に、業法と呼ばれる業界ごとの法律・規則、官公庁からの通達が詳細に定められている業界、業務遂行にあたって特別な資格が要求されている業界においては、社内人材だけの研修では不十分です

新入社員には、厳格すぎるくらいにルール徹底を呼び掛けるべきです。業界ごとの特殊性、自社の独自性は、具体的事例、過去に起きた違反事例などを研修会社(機密保持契約を締結します)へ提供することによって、内容のカスタマイズも可能です。弁護士、社会保険労務士など法律の専門家による研修を受講したことは、新入社員への意識づけとしても有効です。

万が一、配属された部署でコンプライアンス違反の事象があった場合、コンプラ意識が高い新入社員は内部告発してくれるかもしれません。自社内だけで通用している独自ルールや単なる慣行を発見できる貴重な機会ともいえるのです。

LEC東京リーガルマインドの新入社員研修で、経営戦略における組織を強化しましょう

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新入社員研修をつくるには?実施〜振り返りまでの手順

STEP1
対象者のレベル確認
ビジネススキルは必須であるとしても、新入社員によっては、コミュニケーション力の有無や、PCスキルなどレベルが異なるため、研修を始める前に確認する必要があります。
STEP2
研修の目的・ゴール確定
研修参加者のレベルに基づき、新入社員が身に付けるべきスキルを具体化し、研修の目的や具体的な目標を設定することが重要です。
STEP3
研修の目的・研修効果を洗い出す
研修の目的・研修効果の洗い出しを行います。
STEP4
研修期間確定
参加者のレベルにもよりますが、自社の事業部ごとの繁忙期や他の社内行事の日程との関係などを考慮し、どのくらいの期間の研修が可能かを検討し、確定します。
STEP5
カリキュラム確定
研修参加者のレベル把握の上に、新人研修で何に重点を置くかを定め、参加者のやる気を継続させるため、社員と外部講師が担当する時間を分けたり、座学とワークショップを混ぜるといった工夫も必要です。
STEP6
研修実施
研修を実施します。研修中の参加者の表情や姿勢については、人事部担当者がしっかりとご確認いただく必要がございます。
STEP7
研修の振り返り・感想発表
研修の最後に振り返りの時間を設け、参加者に感想とそれぞれの職場に戻って活かす内容を発表してもらうことで、現場での具体的な行動に繋がります。
STEP8
アンケート・フォローアップ
アンケート・フォローアップを行います。

監修者情報

反町 雄彦 そりまち かつひこ

株式会社東京リーガルマインド 代表取締役社長/弁護士

1976年 東京都生まれ
1998年 11月 東京大学法学部在学中に司法試験合格。
1999年 3月 東京大学法学部卒業。
4月

株式会社東京リーガルマインド入社、以後5年間、司法試験対策講座の講義を行い、初学者向けの入門講座から中上級向けの講座まで幅広く担当し、多くの短期合格者を輩出した。

2004年 3月 司法研修所入所。
2005年 10月 弁護士登録(東京弁護士会所属)。
2006年 6月 株式会社東京リーガルマインド取締役。
2008年

LEC司法試験対策講座統括プロデューサーを務め、以後、現在に至るまで資格試験全般についてクオリティの高い教材開発に取り組んでいるほか、キャリアデザインの観点から、多くの講演会を実施している。

2009年 2月 同専務取締役。
2011年 5月 同取締役。
2014年 4月 同代表取締役社長。
2019年 4月 LEC会計大学院学長

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