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ITリテラシーを高めるには?重要性と進め方(DX推進企業担当者向け)
本コラムは、デジタル・トランスフォーメーション(DX)を これから推進しようとしている企業において、DX推進の責任者、担当者だけでなく、 全ての従業員が知っておくべき知識、基本的考え方について、その習得法、 研修導入の際の注意点、役立つ資格などを開設するものです。
- おすすめの方
- 社員のITリテラシー向上を実現したいと考えている人事担当者様、経営層者様
- 業務の効率化、IT活用を検討されている経営管理者・マネージャーの方
1.ITリテラシーとは?
ITリテラシーはコンピュータウイルスによって基幹システムが止まったり、従業員が不正な操作をして情報漏洩してしまったり、といった企業不祥事の場面において、「社員のITリテラシーの欠如」が原因である、と報じられることがあります。
しかし、一概に「ITリテラシー」と一括りにすることなく、大きく分けて以下3つに分類できます。
- ・情報基礎リテラシー
- ・コンピュータリテラシー
- ・ネットワークリテラシー
それぞれの必要性(欠けると、どのようなトラブルが起きるか)を理解でき、どの程度のコスト・手間をかけて社員教育をしていくべきか、判断できるようになります。
1-1 情報基礎リテラシー
リテラシーとは読解記述力を意味します。
最近は、中学校・高校でもメディアリテラシーに関する授業が行われます。
メディアリテラシーとは「テレビ、WEB、新聞・雑誌などから受け取る情報に対して、それぞれの特性を理解して、主体的・批判的に受け止め、使いこなす能力」と言われます。
ビジネスパーソンに要求されるITリテラシーも、最も基礎となるのは、WEB上に広がる様々な情報への向き合い方です。
これを①情報基礎リテラシーと呼びます。
1-2 コンピュータリテラシー
次に、日々の業務で用いるデジタル端末の使い方を知っておく必要があります。
デジタル・ネイティブと呼ばれる世代(1990年代以降に生まれ、物心がついた頃から、携帯電話、パソコン、インターネットが当たり前のように存在していた世代)は、スマホ操作には慣れています。
しかし、ビジネスの現場では、WORDやPowerPointで企画書を作成したり、EXCELで営業数字を分析したり、社内システムに細かく情報を入力したり、といったパソコン操作が基本となります。
ブラインドタッチの練習という90年代に流行った懐かしい研修が、若い世代だからこそ必要となる、という場面も出てきています。
また、チャットに慣れている世代にとっては、Eメールの操作も鬼門です。
複数人へ一斉送信する際に、BCCではなくCCでメールアドレスを入力してしまったために、情報漏洩事案として問題になる、というケースも若い世代にこそ起きています。
パソコンをはじめとするデジタル端末(クレジットカードの読み取り機や、物流・小売におけるバーコードリーダーなども含む)の操作について精通しておくことは業務効率の面はもちろん、セキュリティ面でも重要です。これを②コンピュータリテラシーと呼びます。
1-3 ネットワークリテラシー
最後に、個々の従業員が最も注意しなければならないのは、ネット特有の不祥事を起こさないようにすることです。
以前はバイトテロと呼ばれる、研修がそもそも行われていない店舗アルバイトによる非常識なSNS投稿が話題となっていましたが、
最近では、企業内で精査されたはずの広告動画や公式アカウント上での発言・キャンペーンが炎上して企業評価が著しく棄損される場面も増えています。
ジェンダー意識の高まりであったり、国際的な人権意識が国内でも少しずつ普及していたり、という要因もあり、こちらはコンプライアンス研修で対応する必要がありますが、
インターネットやSNSの特性を理解して、誰しもが守るべきモラル、さらには業界人として注意すべき勘所(一般人の発信としては許容されても、ある業界の企業人としては不適切、という境界)も知っておく必要があります。
これを②ネットワークリテラシーと呼びます。
2.社員のITリテラシーを向上させる必要性は?
ITリテラシー向上のメリット、逆に、ITリテラシーが欠如した社員が多いことの危険性について、
①情報基礎リテラシー、②コンピュータリテラシー、③ネットワークリテラシーの3つに分類して解説していきます。
2-1 ITリテラシーを高めるとどうなる?メリットは?
インターネットが発達したことにより、人々の情報収集のスピード、量は飛躍的に増大しました。 以前は図書館に通ったり調査会社へ依頼したり、といった情報収集がGoogle検索1つで可能となりました。 適切な検索ワードを知っているかことはITリテラシーの一種と言えます。 一般的には若い世代の方がネット経由で多くの情報を集めることが得意です。しかし、ネット検索で得られる情報は信頼性・中立性に問題があることもあります。Twitter(現X)で特定の人・団体が発信している情報・リンク先だけを使ったら、集まった情報はかなり偏ったものとなる恐れがあります。フェイクニュースやデマ情報の怖さは、新型コロナウイルス蔓延の結果、より鮮明になりました。
①情報基礎リテラシーを高めることは、企業内の意思決定の基礎となる情報の質を高めることに繋がります。
- 1人ひとりの社員が情報収集する際のスピード・量の向上と、質の担保を両立させます。全ての情報をネット検索で得ようとするのではなく、官庁や専門家へ直接問い合わせをすること、社内で先輩社員に訊くこと、時には消費者の声を直接ヒアリングする機会を作ること(最近ではネット調査が一般的ですが、昔ながらの対面式アンケート調査・面談方式も時には重要です)等が必要になるのだ、というネットとリアルのそれぞれの特性>を社員へ教育することを心がけましょう。
②コンピュータリテラシーを高めることはシンプルに業務効率の向上に直結します。
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WORD、EXCEL、PowerPointを使いこなせることを示す民間資格であるMOSは多くの会社で入社前研修や新入社員研修で行われています。以前は、見やすいグラフを作ったり、PowerPointで人目を惹くスライドを作ったり、という「見た目」が重視されていました。しかし、最近ではEXCEL上での分析、営業施策の効果測定が重要になっています。いわゆるビッグデータ活用です。
WEB広告からのコンバージョン、自社サイトでの閲覧履歴とECサイトでの購入実績との紐づけ等、マーケティング活用できるデータが日々、膨大に蓄積されていること、さらにはIoT活用によってリアル店舗においても顧客との接点を数値化できるようになってきていること、が影響しています。 業界によってどのような分析をするか、は異なってきますので、EXCEL操作について汎用的な研修と自社に合わせたカスタマイズの研修の組み合わせが有効です。コロナ禍で一般化したWEB会議の操作もコンピュータリテラシーの1つです。 スムーズな会議進行のためには、画面共有やホスト権限の振り分けなどWEB会議特有の操作にも精通する必要があります。
③ネットワークリテラシーが高くなると、企業内の機密情報、個人情報に対する感度が高くなり、企業不祥事の中でも致命的となる「大規模な情報漏洩」(サイバー攻撃だけでなく、従業員が悪意や重大な過失で情報を流出させるケースも多い)、「サイバー攻撃によるシステムダウン」を防ぐことに繋がります。
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マイナスを防ぐ、という効果だけでなく、様々なインターネット上のサービスを自社に導入する際の前提になるというプラス面もあります。
例えば、AWSに代表されるクラウドを活用して自社システムを運用する手法(これに対して、自社だけでデータセンターと契約してサーバを準備することをオンプレミスと呼びます)のメリット・デメリットを知っている社員は、クラウドを自社ビジネスにどう活用できるか、を考えることができます。
また、来店予約(Airリザーブ)やアンケート調査(Googleフォーム)、日程調整(調整さん)等、ネット上には様々なサービスが存在しています。セキュリティに配慮しつつ、これらのサービスを活用することが顧客サービスの向上につながります。
2-2 ITリテラシーが低いと、どうなる?危険は?
情報基礎リテラシーが欠如していると、フェイクニュースやデマ情報に騙されやすくなります。
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最近も、新型コロナウイルスワクチンをめぐって、大手の不動産会社の社長が社内向けに、ワクチン接種が過剰に危険である旨のメッセージを発信して、話題になりました。幹部社員はもちろん、一般の従業員も1人ひとりが会社の顔です。SNSはもちろん、取引先・顧客とのちょっとした会話であっても、ネット上の怪しい情報を安易に発信してしまう社員がいることは、会社の評判を大きく落とす結果となります。
コンピュータリテラシーが低い結果、データ活用が進まず経営上の意思決定が遅れる、場合によっては全く筋違いの結論になってしまう、という危険性があります。
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コロナ禍ではWEB会議が一般的になっていますので、操作に不慣れな社員がいると、会議が途中で終了になってしまったり、得意先との商談で画面共有がうまくできずに信頼を失ったり、という社内外のコミュニケーション不全という問題も生じます。また、オフィス内で複数のパソコンをつないでいるルータのコードを勝手に引き抜いて別のところに差し込む、という単純ミスが原因でフロア全体のパソコンが不具合になる、という事案もあります。1人ひとりの知識レベルの維持・向上が必要であることが分かります。
ネットワークリテラシーが低いと、セキュリティに対する意識が低くなってしまい、怪しいメールを安易に開けてしまったり、業務中に変なページを閲覧してしまったり、とウイルス感染の危険性が高まります。
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また、自分のPCが感染源となったことを申告するのが遅れ、被害がより一層拡大することになります。ランサムウェア(身代金要求型ウイルス)が増えている現状を考えると、情報セキュリティ研修について、やり過ぎるということはありません。繰り返し、他社の甚大な被害を受けた事例を共有して、意識を高めることが重要です。
なお、SNS特有の炎上事案については、コンプライアンス意識を高めることが防止の第一歩です。
3.社員のITリテラシーを向上させるためには?
3-1 企業・法人研修サービスを利用する
最近では、DX、AI、RPA、IoTなどバズワードとも言える様々なテーマで企業・法人研修が行われています。
業界ごとにITで解決可能な課題は異なってきますので、どこまで最先端の事例、スキルを盛り込むか、は研修会社とよく打ち合わせて内容を詰めるべきです。
ITリテラシーについて言えば、それほど高度な内容ではありません。
例えば、MOS取得に向けてMicrosoftオフィスソフトの操作を学んだり、コンピュータやインターネットの技術的基礎を学ぶことでクラウドや様々なネット上のサービス活用について考えるきっかけとなったり、という風に「拡張性」があります。
したがって、以下に紹介する基本的な資格(国家資格ではなく、簿記のように民間の検定が大半)取得を従業員に推奨することでITリテラシー向上が実現できます。
3-2 資格取得を推奨する
まずはITパスポート試験がお勧めです。「テクノロジ系」として、基礎理論(アルゴリズムとプログラミング)、 コンピュータの仕組み(構成要素、ソフトウェアとハードウェア)、ヒューマンインタフェース、マルチメディア、データベース、ネットワーク、セキュリティなどが幅広く出題範囲になっています。 大学生が就活の際に取得する程度の内容ですので、全社員に取得を促す初歩的な検定と言えます。
その他、ITパスポートの試験実施団体であるIPA(独立行政法人情報処理推進機構が実施している、 基本情報技術者試験などもありますが、内容が少し専門的になっていくので、 幅広く全社員を対象とする場合にはまずはITパスポートからスタートが無難です。
4.研修サービスを導入する際に考えたい3個の観点
社員教育でポイントとなるのは、
①自社の課題解決に必要十分な知識量が網羅されているか、
②従業員自身が主体的に学ぼうと思える提供方法となっているか、
③業界ごと、企業ごとの特性に応じたITスキルの修得に直結するかというカスタマイズの余地があるか、
の3点です。
ここまで解説してきたように、ITリテラシーと一言で言っても、その中身は多岐にわたります。
全社員が身につけておくべき知識、外部発信が日常業務となっている社員が気をつけるべき考え方・知識・スキル、DX推進に各部署の担当者として関わる社員がシステムやWEBサービスについて知っておくべき知識、これらは全く異なります。
研修会社と打ち合わせをして、
①コンテンツ内容について取捨選択、カスタマイズが可能であるか、を確認しましょう。
営業スキルの研修や商品知識に関する社内教育は、自身の営業成績、給与・待遇に直結するために、従業員自身が積極的に学ぶことが多いのに対して、ITリテラシーは、特に中高年の社員の意識が弱く、嫌々ながら受講していたり、動画を流しっぱなしにしたり、という消極的態度が見られます。
②提供方法としては、ITパスポートの検定受検を義務付けたり、理解度確認テストが常備されているものを選んだり、という手法を検討しましょう。経営トップから全社員に対して、 本コラムで解説したようなITリテラシーの重要性(身につけていない場合の危険性)を強いメッセージとして伝えてもらうことも有効です。
③業界ごと、企業ごとの特性に応じたITスキルの修得に直結するかというカスタマイズの余地があるか、も重要です。
多くの会社で、社員のITリテラシーを高めるために、ITパスポート試験や基本・応用情報技術者試験の合格に報奨金を出す制度を取り入れています。しかし、試験合格が目的となってしまって、必ずしも、業務の効率化や課題解決には成果が出ていないケースも見られます。
型にはまったカリキュラムではなく、研修を受けた従業員が仕事に戻ったらすぐに使うことのできるPCスキル(典型はEXCELのマクロやショートカット)の修得だったり、
情報セキュリティへの意識づけを高めるようなワークショップだったり、データ分析を自身や専門部署で行う際に、より売上や利益につながりやすい分析結果を導き出せるような切り口を見つけるための他社事例だったり、
業界・企業の特性に合わせた研修コンテンツを提供してもらえるか、を事前にしっかりと打ち合わせしましょう。
5.資格業界歴42年!IT関連の研修サービスならばLECの研修サービスがおすすめ!
今回は人事担当者に向けて、社員のITリテラシー向上にはどうすればよいかを解説しました。DX時代の業務効率化を目指すためには、従業員のITリテラシー向上は必要な要素となります。
また、全従業員のITリテラシーが向上することにより、企業内の機密情報、個人情報に対する感度も高くなり、企業不祥事の中でも致命的となる「大規模な情報漏洩」「サイバー攻撃によるシステムダウン」を防ぐことになりますので、DXを推進の第一歩として取り組むのはいかがでしょうか。
監修者情報
反町 雄彦 そりまち かつひこ
株式会社東京リーガルマインド 代表取締役社長/弁護士
1976年 | 東京都生まれ | |
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1998年 | 11月 | 東京大学法学部在学中に司法試験合格。 |
1999年 | 3月 | 東京大学法学部卒業。 |
4月 | 株式会社東京リーガルマインド入社、以後5年間、司法試験対策講座の講義を行い、初学者向けの入門講座から中上級向けの講座まで幅広く担当し、多くの短期合格者を輩出した。 |
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2004年 | 3月 | 司法研修所入所。 |
2005年 | 10月 | 弁護士登録(東京弁護士会所属)。 |
2006年 | 6月 | 株式会社東京リーガルマインド取締役。 |
2008年 | LEC司法試験対策講座統括プロデューサーを務め、以後、現在に至るまで資格試験全般についてクオリティの高い教材開発に取り組んでいるほか、キャリアデザインの観点から、多くの講演会を実施している。 |
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2009年 | 2月 | 同専務取締役。 |
2011年 | 5月 | 同取締役。 |
2014年 | 4月 | 同代表取締役社長。 |
2019年 | 4月 | LEC会計大学院学長 |