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ワークエンゲージメントとは?働きがいと生産性を高める手法解説

ワークエンゲージメントとは?働きがいと生産性を高める手法解説

近年、企業と従業員や顧客とのつながりを示す「エンゲージメント」という言葉が注目されています。それぞれ従業員エンゲージメント、顧客エンゲージメントと言います。
同様に、仕事と個人とのつながりを意味する「ワークエンゲージメント」という言葉が、働きがい、生産性向上、離職防止につながる個人の心理状態として注目されています。メンタルヘルス、健康経営の観点から厚生労働省もその重要性を強調しています。
本コラムでは、ワークエンゲージメントの定義、構成要素、測定方法、関連する心理モデル(JD-Rモデルなど)を整理し、ワークエンゲージメントを高めるための実践的なポイントをわかりやすく解説します。

こんな方におすすめ!

  • 人事・労務担当者の方
  • 管理職・マネジメント層の方
  • 従業員のモチベーションや定着率向上に課題を感じている経営者の方

社員が自ら熱意を持って動き出す組織へ

  • 社員の主体性を引き出したい
  • いきいきと働く文化を作りたい
  • 仕事への誇りや熱意を醸成したい
  • 組織全体の活力を高めたい
  • ポジティブな影響力を広げたい

本コラムでは、人事や管理職の方へ、個人のエネルギーを最大化し、活力・熱意・没頭に満ちた「選ばれる組織」へと変革するための実践的なアプローチを解説します。

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1. ワークエンゲージメントとは|バーンアウトを防ぐポジティブな心理状態

ワークエンゲージメントは、オランダの心理学者シャウリらが、バーンアウト(燃え尽き症候群)との対概念として提唱した概念です。
ワークエンゲージメントが高い状態とは、個人が仕事に対して「活力(Vigor)」「熱意(Dedication)」「没頭(Absorption)」を感じている持続的でポジティブな心理状態を指します。働きがい・生産性向上・メンタルヘルスの改善に寄与することから、人材戦略上、企業からの注目が集まっています。

ワークエンゲージメントとバーンアウト

2. ワークエンゲージメントが注目される背景

人手不足を背景に、バーンアウト、メンタルヘルス、離職等の事例が増加し、生産性向上、離職防止が多くの企業で経営課題として認識され、 健康経営、人的資本経営の考え方が浸透していることなどと相俟って、厚生労働省もメンタルヘルス対策の重要性を指摘(厚生労働省のストレスチェック制度など)しています。
その結果、バーンアウトの対概念として定義されたワークエンゲージメントや従業員エンゲージメントが経営課題のキーワードとして注目されるようになりました。

3. 日本の現状と課題|「熱意あふれる社員」わずか5%の衝撃

ワークエンゲージメントのスコアを国際的に比較しますと、日本は非常に低い結果になっています。また、従業員エンゲージメントも同様の傾向にあります。
米ギャラップ社の調査によりますと、日本の全就労人口の中で仕事や職場に対して熱意や愛着(エンゲージメント)を持って取り組んでいる「熱意あふれる社員」の割合はわずか5~6%です。
世界平均20%前後と比較して極端に低く、調査対象国の中で最下位クラスとなっています。日本の就労者の仕事に対する意識の主な特徴は以下の通りです。

  1. 熱意あふれる社員:5%~6%
  2. 熱意がなく、ただ言われたことをこなしている社員:約70%(大半を占める)
  3. 職場に対して強い不満を持ち、周囲に悪影響を及ぼしている社員:約24%

しかし、日本人の国民性、日本人の集団特性などが回答の仕方やスコアに影響している可能性もありますので、一概に、この調査結果のみで、日本人全般のワークエンゲージメントが低いという先入観を持たない方がよいでしょう。
とは言え、世界平均でもワークエンゲージメントが高い者の割合は20%前後と決して多くはありませんので、一般にワークエンゲージメントや従業員エンゲージメントなどポジティブなエネルギーを高めることが必要な状況だと言えます。
それでは、もう少し詳細にワークエンゲージメントについて見てみましょう。

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4. エンゲージメントとは|マーケティング概念から動機付け理論への拡張

エンゲージメントという言葉は、日本でWebマーケティングや職場の熱意あふれる社員が普及した2010年代前半にマーケティング用語として使われ始めました。コンテンツに対するデジタル上の関与をエンゲージメントと言います。指標としては「滞在時間」や「スクロール率」、SNSでは「いいね」「コメント」「シェア」などがコンテンツの質を測る指標となりました。

また、ほぼ同時期にサブスク型ビジネスモデルの普及などを背景に、企業にとっても「顧客との関係性の質」が経営的にも注目されるようになり、エンゲージメントが経営概念としても定着していきました。
そして2020年以降、人的資本経営、働き方改革、上場企業の人的資本開示の義務化などの流れの中で、社内の関係性にも拡張して使われるようになりました。

つまり、エンゲージメントという言葉が使われ始めたのは、マスマーケティングという不特定多数を対象としたコミュニケーションから、Webの発達により個別のコミュニケーションが可能になったOne to Oneマーケティングへと変化し、プロダクトアウト(企業がつくったモノを売る)の一方通行から、個別のコミュニケーションを通じた個客との関係性の質が経営に大きく影響する時代に転換したことを意味します。
また対顧客のみならず、社内における関係性の質についても経営的な意義が再認識されています。

現在は、〇〇エンゲージメントという言葉が多用されています。

  • ライフエンゲージメント:人生全体の充実度
  • セルフエンゲージメント:自分の価値観、強み、人生観との一致度、自己理解と自己成長
  • ワークエンゲージメント:仕事へのポジティブな心理状態の程度、仕事への誇りや熱意
  • ソーシャルエンゲージメント:社会や地域、他者への貢献目的を持った主体的な活動の程度
  • 従業員エンゲージメント:所属組織への愛着、貢献意欲の程度
エンゲージメントの重層構造

こうしてみますと、対象に対する関係性の質とは、何に対してポジティブなエネルギーを示すのかということでもあり、個人が何に動機づけられて行動するのか(行動の動機)、つまりマズロー等のモチベーション理論とも関連していると考えられます。

モチベーション(動機)理論の詳細な説明は別の機会にしますが、概略説明として図示します。マズローの欲求五段階説と、ワークエンゲージメントをはじめとする各概念が欲求五段階説のどの層の欲求と強く結びついているかは、おおよその見当をつけることができそうです。

マズローの欲求五段階説と各エンゲージメントの関連

◆マズローの欲求五段階説

  • 低次の欲求が満たされて、より高次の欲求へと向かう
  • 同時に複数の次元の欲求が生じても、中でも最も強く感じる欲求に強く影響される
  • 他者からは低次の欲求が満たされていないように見えても、高次の欲求で行動する例もある
    →自己実現より高次の「自己超越」状態など

①最下層の「生理的欲求」から中間の「帰属と愛情の欲求」は、不安、不満、不足などのネガティブな心理状態の解消を求め、
②中間の「帰属と愛情の欲求」から最上層「自己実現の欲求」は、成長、自信、充実感など、ポジティブな心理状態の向上あるいは強化を自ら求めていく、
という違いがあります。(「帰属と愛情の欲求」には、ネガティブな心理状態の解消とポジティブな心理状態の強化の双方があると考えられます)

一般的には、②「帰属と愛情の欲求」から「自己実現の欲求」のポジティブな欲求を高めるためには、①「生理的欲求」から「帰属と愛情の欲求」のネガティブな感情を予め解消しておかなければ、ポジティブな欲求に向かいにくいようです。

もし、そうであるならば、ワークエンゲージメントに限らず、ポジティブな欲求(エネルギー)を引き出そうとするならば、①「生理的欲求」から「帰属と愛情の欲求」のネガティブな不安、不満、不足を解消あるいは、和らげる組織的な環境づくりが優先すると考えられます。

個人のエネルギーは有限です。ネガティブな感情の解消へ多くのエネルギーが向けられていては、ポジティブなエネルギーを引き出せませんし、組織全体としても非生産的なことにエネルギーを割いていることになります。

例えば、下表に示したような状態は、生理的欲求~自我自尊の欲求の不安、不満、不足の状態を含んでいますので、ワークエンゲージメントなどのポジティブなエネルギーは引き出しにくい状態だとわかります。マネジメントに携わる方は、自組織の身の回りのメンバーそれぞれの心理状態や組織内の他者との関係性などをよく観察し、理解するように努めることが解決への第一歩です。

ネガティブな状態と欲求段階の対応表

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5. ワークエンゲージメントの3要素|活力・熱意・没頭

本題に戻り、あらためてワークエンゲージメントの構成要素を確認します。

①活力(Vigor)
疲労感よりもエネルギーが勝り、仕事に前向きに取り組める状態。
②熱意(Dedication)
仕事に誇り・意義・挑戦心を感じている状態。
③没頭(Absorption)
時間を忘れるほど仕事に集中している状態。

この3つは単なる「やる気」ではなく、心理学的に定義された持続的でポジティブな心理状態です。
特に「没頭」はフロー体験に近く、仕事の質と満足度を高める重要な要素です。
但し、表面的には没頭しているように見えても、内的な強迫観念、義務感、不安感、焦燥感などに突き動かされている場合はワーカホリックであり、バーンアウトやうつ症状を発症する懸念もありますので、継続的にポジティブな心理状態であるワークエンゲージメントとは正反対の状態です。

6. ワークエンゲージメントの測定方法・尺度(UWES・MBI-GS)

ワークエンゲージメントの測定方法には、2つの方法があります。

1. UWES(Utrecht Work Engagement Scale)
活力・熱意・没頭の3因子を測定
2. MBI-GS(Maslach Burnout Inventory - General Survey)
バーンアウト傾向を測定

いずれも定められた質問で構成されたアンケートを用います。

UWESとMBI-GSの測定軸

また他に、企業独自に心理的安全性、職務満足、上司との関係、キャリア期待などを測定するため、エンゲージメントサーベイを実施するケースもあります。

7. ワークエンゲージメントを高める方法(JD-Rモデル)と取り組み事例

JD-Rモデルとは、就労者のストレス耐性、モチベーション、ワークエンゲージメントなどが、下記の3要因で決まるとする心理学、組織行動論における枠組み(フレームワーク)です。
JD-Rモデルは、ワークエンゲージメントなどのポジティブな心理状態を高めるための解決策を示唆してくれます。

①Job Demands(仕事の要求度)
仕事における肉体的、心理的な負担のこと。高いノルマ、過度な仕事量、時間的プレッシャー、複雑な人間関係など。
②Job Resources(仕事の資源)
仕事の要求に応えるため、または負担を軽減するために役立つ組織的な支援。上司や同僚からの支援、業務の裁量権、フィードバックや適切な評価など。
③Personal Resources(個人の資源)
個人のストレスに対処する能力や心理的資本。自己効力感、レジリエンス、楽観性など。

要約すれば、以下のように資源に応じた仕事の要求であれば、ポジティブなエネルギーを引き出しやすいとしています。

JD(仕事の要求度) ≤ R(環境資源×個人資源)

但し、R(資源)に対して、あまりにも過小なJD(仕事の要求度)であれば、成長の機会にはなりにくいという面もあるため、適度な調整が理想的です。

最近ジムに通う人も増えていますので筋トレに例えてみましょう。筋肉の発達は、①運動量、②継続期間、③栄養摂取量とバランス、④休息、睡眠の長さと質などの要因が複合的に影響した結果と考えられます。

③栄養摂取量とバランス、④休息、睡眠の長さと質については一般に言われていることに一定の信頼があるでしょう。
しかし、①運動量と②継続期間については、どのくらいにするか、本人自身の感情や判断が入りますので、ここが最も難しいポイントです。

例えば、殆ど未経験であるにもかかわらず、短期間で結果を出そうとして、最初から高負荷、高頻度で行うと長続きしませんし、下手をするとケガをしてしまいます。逆に、低負荷、低頻度では長期間継続しても、目に見える結果が確認できず、やはりモチベーションが続きません。実際ジムに通い始めた人の9割以上が1年未満でやめてしまうそうです。

どちらのケースも、トレーナーの適切な指導をあおぎ、多くの情報を参考にするなどで一定の効果は得られるでしょう。
しかし、最終的には自分自身で運動の量、方法、頻度など、自分にとっての最適解を決める必要があります。

これをJD-Rモデルで言えば、自分自身でR(環境資源×個人資源)を評価し、それに最適なJD(仕事の要求度)を決める、ということになります。

仕事についても同様に、仕事や個人の能力、心理についてよく理解している者の支援は非常に有効です。逆にあまり理解していない、あるいは理解しようとしない者の支援は逆効果にすらなります。

具体的な取組みとして幾つか挙げてみますと、例えば、

  • 上司・部下の1on1強化 (仕事の資源)
  • 裁量権・自律性の付与 (仕事の資源)
  • キャリア支援・スキル開発(仕事の資源、個人の資源)
  • 心理的安全性の高い職場づくり(仕事の資源)
  • 評価制度の透明化(仕事の要求度、仕事の資源)

などが考えられますが、仕事と人についてよく検討し、理解した上でそれぞれが実施されなければ、逆効果になることもあります。

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8. 活力あるポジティブな組織づくりに向けて

JD-Rモデルは、ワークエンゲージメントを高い状態にするための条件を示してくれました。エンゲージメントとは、関係性の質でした。
ワークエンゲージメントが高まるということは、その仕事がどれ程自分にとって有益なことであるかを知ることと言えます。ワークエンゲージメントが高まる個人の内的プロセスを考えてみますと、以下の三段階になると考えられます。

1. 自分にとっての仕事の有益性を認知的に理解
この段階で、取り敢えずその仕事に着手することはできますので、ある程度の活力を引き出すことができます。
2. 経験を通じて、その有益性を感情的に理解
しかし、認知的理解だけでは熱意や没頭には至りません。それには経験を通じた感情的な理解を要します。つまり、熱意や没頭の度合いは、その仕事を通じて徐々に高まっていくものと考えられます。
但し、経験の内容やその解釈により、ネガティブな感情が生じる可能性もあります。
3. ポジティブな認知的理解とポジティブな感情的理解が合致しポジティブな行動を表出
往々にして、認知的(理性的)理解と感情的理解が一致せず、不協和を生じることが少なくありません。これが個人の中で合致すると、エンゲージメントが高まると考えられます。
(場合により、①②は逆順(感情的理解が先行する)になることもあります)
ワークエンゲージメントが高まる内的プロセス

しかし、ワークエンゲージメントが高くあるためには、JD-Rモデルが示す通り、環境要因の影響が大いにありますので、組織内の関係性の質にも目を向け、それを高めていくことも必要です。
従って、個々人のワークエンゲージメントを高めるための解決策は、個人を対象にしたアプローチに加えて、組織全体に向けたアプローチも必要です。決して個々人だけの問題ではないのです。

ワークエンゲージメントを高めるためには、何よりもその仕事そのもの、あるいは、その仕事の目的や意義に対して、面白そうだ、興味深い、やってみたい、参加したい、などの前向きな姿勢を引き出す、認知的理解と感情的理解の両方を促進する説明が重要です。

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9. まとめ:中長期的な視点で取り組む組織変革

ワークエンゲージメントは、働きがい・生産性・離職防止を同時に高める重要な概念です。

活力・熱意・没頭の3要素や、ポジティブなエネルギー、ネガティブなエネルギーの実態を的確に把握し、JD-Rモデルや動機理論などの知見を応用して、着実にポジティブな組織づくりを推進することができます。

今回は、ワークエンゲージメントという切り口から、活力あるポジティブな組織づくりには、具体的で着実なアプローチの重要性を強調しました。

もちろん、簡単なことではありませんが、安易な解決策は状況を悪化させる懸念もあるため、客観的かつ的確な状況把握からスタートし、中長期的に地道に取組むことそのものが、状況を改善していきます。

成果が出るまでは不安を感じるかも知れませんが、誠実に対応していけば着実に共感者が増え、いずれは組織全体にまで拡がっていくと思います。このコラムから組織改革のヒントを一つでも見出していただけましたら幸いです。

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監修者情報

加藤 隆(かとう たかし)

役職・保有資格 人事教育コンサルティング educom(エデュコム)代表
ヒューマンリレーションズ・ファシリテーター、ビジネスコーチ、NLPプラクティショナー、マインドフルネスコーチ、JDLA G 2020
プロフィール 経営コンサルティング企業、人材教育企業において経営コンサルティング全般、研修講師(ファシリテーター)、研修プログラム開発等に従事し、人事教育コンサルティングを主業務として1997年に独立。
2026年現在、人事制度構築支援、新人事制度導入・運用支援、研修プログラム開発、社内講師養成支援、研修実施など、組織の人的側面を主な対象としてサービスを提供している。
研修企画・実施回数は1,000回を超え、延べ受講者数は3万名超にのぼる。
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