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公務員こそ求められる「キャリア自律」
~変化の時代に、自ら学び、成長し続ける人材へ~

公務員こそ求められる「キャリア自律」 ~変化の時代に、自ら学び、成長し続ける人材へ~

社会全体が、AIやDXの急速な進展、少子高齢化、働き方改革など大きな変化を迎える中、公的機関にも、これまで以上に変革が求められています。行政サービスへのニーズは複雑化・多様化しており、従来の前例踏襲型の業務だけでは、対応することができない場面が増えています。
一方で、公務員は「安定した職業」といわれることが多く、終身雇用や年功的な評価制度、定期異動といった独特の人事制度の中で働いています。そのため、新しいことに挑戦しづらい、自分の成長が実感しにくい、といった不安や閉塞感を抱える若手・中堅職員は少なくありません。
こうした状況を打開するキーワードが、「キャリア自律(キャリア・オーナーシップ)」です。本コラムでは、私自身の公務経験を踏まえ、公務員にキャリア自律が求められる理由と、組織としてどのような支援が必要なのかについて解説します。

キャリアの停滞や前例踏襲の文化に悩んでいませんか?

  • 成長を実感できず不安
  • 前例踏襲の文化に閉塞感
  • 専門性が身に付かず不安
  • AI・DXへの対応が遅い
  • 自律的な部下を育てたい

本コラムでは、キャリア形成に悩む公務員の方へ、ポータブルスキルの習得やDX対応等の具体的な自律へのアプローチを解説します。組織として支援すべき研修の重要性も提示します。

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1. キャリア自律とは

キャリア自律は「キャリア・オーナーシップ」とも呼ばれ、組織任せではなく、自身のキャリアを自ら考え、学び、成長していこうとする姿勢を意味します。自分の強みをどこに置くのか、どのような能力を伸ばすのか、そして社会にどのような価値を提供したいのかについて、明確なキャリアビジョンを描き、主体的に考え、行動することを指します。

これは、現在所属している組織の中でキャリアを形成していく場合だけでなく、資格取得や転職・独立を視野に入れて行動する場合も含まれます。近年、民間企業では人的資本経営の考え方が広まり、キャリア自律を促進する取り組みが急速に進んでいます。

一方、公的機関では制度上の安定性が高い反面、「自らキャリアを考える機会」が相対的に少なくなっている点が課題となっています。

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自分の価値観や強みを棚卸しし、今後のキャリアプランを描きます。
公務員のキャリア自律と主体的な成長を促すための実践研修です。

2. 公務員がキャリア自律しにくい4つの要因

公務員という職業は、一般的に、民間企業のような「厳しい顧客獲得競争」や「倒産リスク」がなく、雇用と収入の安定性、働きやすい制度環境が大きな魅力です。しかしその反面、組織構造や評価制度の特性上、個人の成長意欲や挑戦心を維持するうえで特有の課題を抱えています。特に、キャリア自律を阻害し得る4つの要因について、以下で整理します。

2-1 評価が成果より年次になりやすい

近年、人事評価制度の改善は進んでいるものの、多くの組織では依然として、勤続年数や経験年数の影響が大きく残っています。年功序列的な評価制度は、生涯にわたって安定的に働けるという点で、魅力的ではあります。しかし一方で、成果を上げても評価が急激に変わることは少なく、「最低限やればよい」という受け身の働き方につながる危険があります。

2-2 前例踏襲文化が根強い

行政には公平性や説明責任が求められるため、「昨年と同じ方法」「他自治体でもやっている方法」を選択する場面が少なくありません。行政運営において慎重さは重要ですが、その一方で、業務改善やデジタル、AI活用などのチャレンジが起こりにくい土壌にもなっています。

公務では、失敗につながるリスクを極力排除する傾向が強く、組織を守るために、あえて非効率な古いやり方を続けているケースも多々あります。これが、職員の学びや挑戦のモチベーションを阻害する要因にもなっています。

2-3 数年ごとの異動で専門性を深めにくい

行政職では、2~4年程度で異動するケースが一般的です。幅広い行政経験を積めるメリットはあるものの、専門知識が十分身に付く前に異動となり、ようやく業務を理解した頃に部署が変わるということも珍しくありません。その結果、「自分には専門性がない」という不安を抱える職員も少なくありません。

だからこそ、自ら専門分野を学び、深めていく姿勢が重要になります。

2-4 民間とのギャップ(情報、技術、スピード)

法改正や厳格な手続きが求められる公務では、意思決定のスピードが、民間企業に比べて遅くなりがちです。特に、生成AIやDXといった最新技術の導入や、効率的な業務プロセスの構築においては、民間から大きく遅れをとるケースが目立ちます。また、最新のビジネススキルに触れる機会が限られている点も、課題となっています。

3. 公務員こそキャリア自律が必要な理由とは

前章で述べたような労働環境では、上司からの指示に忠実に従い、前例に沿って業務を円滑に進めることはできても、急激な環境変化や不確実な未来への対応能力には限界があります。「公務員だから一生安泰」と考え、入職後に成長を止めてしまう人がいますが、どこへ行っても通用するポータブルスキル(持ち運び可能なビジネス基礎力・課題解決力)と専門性を磨いておくことこそが、真の意味での揺るぎない安定につながります。

また、人口減少や人手不足が進む中、限られた人員で高度化する行政サービスを提供し続けるためには、職員一人ひとりの生産性と創造性の向上が不可欠です。「指示待ち」ではなく、複数の業務を自律的にこなし、主体的にPDCAを回せる職員が増えることが、公的機関全体の組織力強化に直結します。

変化のスピードが益々加速化する現代社会において、個人の挑戦と成長を促すキャリア自律は、公務員にこそ求められている姿勢だといえるのではないでしょうか。

【事例】課題解決のはずが現場の混乱を招いた例

国家公務員のAさんは、国の出先機関で事務の仕事をしています。2年ほどで別部署に異動になるため、異動のたびに、各現場のやり方を覚えながら業務をこなしていました。

初めて主任として新しい現場に赴任した際に、Aさんは、これまでの配属先で最も効率的だった方法を採用しようと考え、業務マニュアルを一から作り変えてしまいました。しかし、これが問題を引き起こしました。現場メンバーとのすり合わせを行わないまま大幅に改訂した手順書を導入したことで、現場は大きく混乱し、チーム内の職員のモチベーションも低下してしまいました。

Aさんが、リーダーとして課題解決を進める際のノウハウや、チーム内コミュニケーションの取り方を十分に学んでいれば、せっかくの改善提案がより良い成果をもたらしたのではないかと思われる、残念な事例となってしまいました。

課題解決とチームコミュニケーションのイメージ

「問題解決力を高める」で本質的な課題設定と実行力を磨く

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4. 公務員のキャリア自律を加速させる「4つのアプローチ」

では、公務員がキャリア自律を進め、前例踏襲から脱却するためには、具体的にどのような取り組みが必要なのでしょうか。ここでは、対応策として有効な4つの主要アプローチを提案します。

アプローチ1 ポータブルスキルを鍛え続ける

公務員の業務は、文書作成や手続業務が中心になりがちですが、これからの時代に求められるのは、課題解決力や提案力、そして、それらを効率的に進めるための基礎的なビジネス思考力です。

例えば、問題解決力や課題設定能力を高めることで、「前年踏襲」の枠を超え、本質的な課題を見つけ出し、改善案を導くことが可能になります。ロジカルシンキング(論理的思考)は、根拠に基づいた施策立案や、説得力ある公文書・提案書の作成に役立ちます。

また、リーダーシップやプロジェクトマネジメントを学ぶことで、複数の関係部署や外部委託業者を巻き込み、スケジュールどおりに成果を出す推進力が身に付きます。そして、プレゼンスキルやファシリテーション力を高めれば、庁内の意思決定をスムーズに進めることもできます。

これらのポータブルスキルを意図的に鍛えることで、どの部署に異動しても素早く立ち上がり、成果を出せる基盤が整います。

アプローチ2 DX、AI活用、資格取得

行政DXは、今後更に加速していきます。生成AIの活用、業務自動化、データ活用などは、もはや一部の専門部署だけの話ではありません。AIを使いこなせる職員とそうでない職員では、生産性に大きな差が生まれる可能性があります。そのため、最新技術を「難しい」と避けるのではなく、小さく試しながら活用していく姿勢が求められます。

また、資格取得は知識を体系化するだけでなく、業務改善や住民サービスの質の向上にも役立ちます。宅建士、行政書士、社会保険労務士、ITパスポート、簿記など、公務の実務(まちづくり、福祉、労務、財務等)に直結する資格に挑戦することは、そのプロセス自体が、「自ら学ぶ習慣」を形成します。

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AIの基礎知識や活用時のリスク・モラル、業務効率化につながる実践スキルを体系的に身につけます。
行政DXの推進・業務生産性の向上にぜひご活用ください。

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不動産取引や土地利用に関わる法規制を網羅的に学び、実務に直結する専門知識を習得します。
都市計画・建築行政・用地取得部門などのスキルアップに推奨されます。

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アプローチ3 民間交流で異文化に触れる

同じ公務員同士、同じ庁内の人間関係だけにとどまっていると、独自の「当たり前」に疑問を持たなくなることがあります。

民間企業との交流研修や、他自治体との合同研修、外部有識者やビジネスパーソンとの議論の場(ワークショップ)に参加することで、自庁の常識を相対化し、「スピード感」や「成果への執着度」を肌で知る機会を得られます。これは、視野を広げ、変革の必要性を実感するうえでとても有効です。

アプローチ4 キャリアデザイン研修の導入

自身のキャリアに不安を抱えている場合には、「自分はどのような公務員なりたいのか」「公務を通じて社会にどんな価値を提供したいのか」を問い直す、マインドセットの機会が必要です。

現状の不安を言語化し、これまでの経験や強みを丁寧に振り返った上で、今後のキャリアアクションプランを描く「キャリアデザイン研修」を実施することは、自発的な学習意欲に火をつける一歩となります。

ロジカルシンキングと論理的な業務設計のイメージ

「ロジカルシンキング」で根拠ある提案・業務改善を推進する

論理的な思考力と伝達力を鍛え、説得力のある公文書作成や施策立案、合意形成をスムーズに行うスキルを身につけます。

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5. 組織としてできること ~キャリア自律を個人任せにしない

民間企業と異なり、公務や行政は非常に幅広い領域を対象とするため、業務一つひとつが細かく、時に煩雑な事案も多いのが実情です。そのような環境では、個人がキャリア自律のための学びや成長の時間を確保することが難しく、職員が主体的に学び続けるためには、組織としての後押しが不可欠となります。また、なぜ学ぶ必要があるのかというマインドセットを共有し、組織としての変革のビジョンを示すことも重要です。

例えば、前述したAI・DX研修の提供やキャリアデザイン研修の実施、資格取得支援制度の整備などを行うことで、「学ぶことが当たり前」という組織文化を育むことができます。研修は知識を得るだけでなく、「自分はこれからどう成長していきたいか」を考えるきっかけにもなるからです。

行政を取り巻く環境は、今後も大きく変化していきます。だからこそ、公務員一人ひとりが主体的に学び、変化に対応できる力を身に付けることが重要です。キャリア自律は、個人のためだけではありません。

学び続ける職員が増えることは、組織全体の活性化につながり、住民サービスの向上や行政課題の解決にも結び付きます。

マインドセットと対話を通じた組織活性化のイメージ

「マインドセット研修」で組織変革と自律的な意識改革を促す

前例にとらわれない思考の転換を促し、職員一人ひとりが主体的に変革と学びへ向かうための基盤を整えます。
階層別研修や組織活性化の導入研修に最適です。

監修者情報

志野 こと葉(しの ことは)

プロフィール コンサルティング企業や大手教育系企業にて25年にわたり商品開発・マーケティング・広報業務などに携わる。 特にWeb開発やデジタルマーケティング領域の業務を数多く経験。マネジメント職を経験後、産業カウンセラー、ハラスメント相談員等の資格を取得。 その後、公務員に転向し、企業の雇用問題や採用、人材育成、働き方等におけるさまざまな課題解決に携わる。 働く人に向けた幅広いテーマでビジネスコラムの執筆を行っている。

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